018、潮騒と朝日、越えた一日
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
時空のゆがみ:あらゆる人や物を取り出すことができる空間。ある世界との間の空間。 時空の裂け目:ゆがみを使い過ぎて裂け目になった空間。マナが不安定になり危険。修復師が縫い合わせてゆがみになる。ある世界との交わり。 修復師:マナを糸状に操り裂け目を修復する者。修復中は無防備になる。 縫界衛士:無防備な修復師を裂け目の悪意から守る者。修復師1人に対し2人いるのが基本。 この物語は、時空のゆがみと対峙する人々が織りなす群像劇。 そこで繰り広げられるヒューマンドラマをお楽しみください。
本文
夜明けは、音で来た。
最初は波の音が少し変わっただけだった。
低く、重かった響きが、柔らかくほどけていく。
次に、空の色が変わる。
闇は黒から藍へ、藍から灰へ。
世界の輪郭がゆっくり戻ってくる。
敬三は、ずっと起きていた。
火は小さくなっている。
だが消えてはいない。
灰の中に赤が残っているのを確認し、小枝を足す。
炎が、また生まれる。
それを見て、敬三は初めて息を吐いた。
「……越えたな」
小さな声。
その言葉で、萬月が目を開ける。
神楽一番も起き上がる。
花子が寝返りを打ち、目を細める。
「朝……?」
誰かが言う。
その一言で、全員が空を見る。
雲の端が金色に染まり、海の水平線から、光が溢れ出す。
太陽。
昨日と同じはずなのに、まるで違って見える。
生きて、見る太陽。
丑三が、ぽつりと笑う。
「腹減ったな……」
小さな笑いが、火の周りを回る。
恐怖が消えたわけじゃない。
不安も、状況も、何も解決していない。
それでも。
十二人は夜を越えた。
それは事実だった。
君島一重が立ち上がり、海を見る。
「……昨日より、近く感じるな」
誰も意味を聞かない。
でも全員わかっていた。
世界は変わっていない。
変わったのは、自分たちのほうだ。
敬三は立ち上がる。
体は重い。
だが足は前に出る。
「今日も動くぞ」
昨日と同じ言葉。
でも重さが違う。
それは命令ではない。
“生き延びた者の言葉”だった。
波が光を跳ね返し、浜を照らす。
火の跡、足跡、集めた流木。
そこに、証拠があった。
ここで、人は一晩、生きた。
文明二日目の朝が、始まる。
後書き
流れ着いた世界での順応。まだ一日目ではあるが、たしかにこの地で一夜を明かした。
次なるステップへ向けて動き出す。