❲ 狐の義兄 10 ❳
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
好きを詰め込みました。ただ、自分の好きを置いた作品集です。
本文
そして、私の今のこの 「氷点下の塩対応」 という鉄壁のポーカーフェイスが完成したのは、完全にあの父親の不親切な心のサバイバル環境のせいである。
「あら、そう言うけれどね…」 とお母さんが、コンロの火を調節しながらクスクスと笑う。
「あの子、あなたに『いらない』って言われたのが廊下まで聞こえたみたいで、今、キッチンのドアの隙間から、もの凄く嬉しそうな顔でこっちを覗いているわよ?」
「えっ」 バッとドアの方を振り向くと、わずかに開いた隙間から、黄金色の瞳がキラキラと輝いているのが見えた。 お兄ちゃんはドアに両手をかけ、耳をペタンと寝かせて、限界まで蕩けたような顔で私を見つめている。
「………。」
(は?意味わかんない…)
「き、聞いたよ、妹ちゃん……! 『毛が飛んでご飯に入るから』だなんて……! つまり君は、俺のふさふさの被毛が料理に混入することによる衛生面の変化、ひいては俺の代謝の良さまで意識してくれているんだね……!? 」
「………。」(違う…って)
「ああ、なんて鋭い観察眼! なんて冷徹で論理的な拒絶……! お兄ちゃん、今すぐその言葉をノートに書き留めて家宝にしたい……っ!」
(そうじゃないって!ただの文句だってば!) 私の必死のツッコミは、もちろん心の声止まりだ。
視界に入ってきたお兄ちゃんの顔があまりにも整いすぎていて、やっぱり不覚にも心臓が跳ね上がる。
(意味わかんない………。)
私は慌ててお皿を胸に抱きしめ、お兄ちゃんから視線を逸らすと、一段と声を低くして言い放った。
「のぞかないで。……気味が悪い」
(耐えれないよ…)
作品統計
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