【49番外】 パチンコ相談室
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。
本文
午後の時環遊技場。
店内には、玉の転がる音と、遊技台から流れる小さな電子音が響いていた。
店主は羽根モノコーナーをゆっくり見て回っている。
いつものように台の様子を確認し、釘の状態を眺め、時々小さく頷く。
そのときだった。
「店主さん」
突然、台から声がした。
店主が足を止める。
「はい?」
「最近、玉が思うように来てくれません」
店主は台を見上げた。
「……そうですか」
「はい。来てくれたと思ったら、風車に弾かれてしまったり、釘にぶつかって違う方向へ行ってしまったり」
「まあ、玉というものは、そういうものですからね」
「そうなんですけど……」
台は少し間を置いた。
「これでいいんでしょうか」
店主はしばらく黙って台を眺めた。
「難しいご相談ですねえ」
その会話を、近くで遊技していた常連が聞いていた。
「パチンコも人生相談する時代になったのか」
常連が笑う。
すると台が答えた。
「パチンコは人生に似ている、と聞いたことがあります」
「まあ、確かによく言うよな」
「玉は真っ直ぐ進みません」
「そうだな」
「思い通りにもなりません」
「そうだな」
「それでも、打ち出されれば進むしかありません」
常連は少し考えた。
「……なんか、俺より立派なこと言ってないか?」
店主が小さく笑った。
「では、人生の先輩として何か助言をしてあげてはいかがですか?」
「俺が?」
常連は台を見た。
「そうだなあ……」
少し考えてから、口を開く。
「まあ、思い通りにならないのが普通だよ」
「はい」
「たまに、とんでもないところへ飛んでいくこともある」
「はい」
「でも、そういう玉が意外なところに入ったりするんだよ」
台が静かになった。
「……なるほど」
「だから、まあ、あんまり気にするな」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
店主は二人のやり取りを聞きながら、微笑んでいた。
ところが、その直後。
「では、あなたはどうですか?」
「俺?」
「思い通りになっていますか?」
「…………」
常連は黙った。
「いや、それは……」
今度は常連が腕を組んだ。
「実はな」
台が待つ。
「俺も最近、ちょっと思うようにいかないことがあってさ」
「そうなんですか?」
「うん」
「でしたら、私でよければお話を聞きます」
「お前に?」
「はい」
常連は台を見つめた。
そして、少しだけ笑った。
「じゃあ……聞いてくれるか」
「もちろんです」
店主は二人を見て、思わず吹き出しそうになった。
「ずいぶん仲良くなりましたねえ」
すると、隣の一発台から声がした。
「私も相談があります」
「あなたもですか」
「私は、一度特定の穴に入れば、その後は打ち止めまで玉が出続けます」
常連が振り返る。
「そりゃ一発台だからな」
「はい。ですが、その一発が、なかなか入ってくれません」
「まあ、そういうもんだよな」
「あなたも同じでは?」
「……まあ、そうだな」
二人は妙に納得した。
さらにその隣のCR機まで表示を変えた。
『演出が長いと言われます』
常連が吹き出す。
「俺も話が長いってよく言われるよ」
『お互い様ですね』
「お前もか!」
店内に笑い声が広がった。
気がつけば、台と常連たちの間で、あちこちに人生相談が始まっていた。
「最近、どうも流れが悪くてな」
「私も最近、スタートに入ってくれません」
「一度くらい大きなチャンスが欲しいんだよ」
「私も大当たりが欲しいです」
「お前はそれが仕事だろ!」
そんな声が、店内のあちこちから聞こえてくる。店主はカウンターに戻り、楽しそうにその様子を眺めていた。
すると、一人の常連が店主に声をかけた。
「そういや店主さんは?」
「はい?」
「店主さんは、悩みとかないの?」
店主は少し考えた。
「私ですか」
すると、店内の台が一斉に静かになった。
店主は困ったように笑う。
「そうですねえ……」
しばらく考えてから、いつもの穏やかな声で言った。
「毎日、こうして皆さんと楽しく過ごせていますからね。今のところは、特にありません」
その瞬間。店内の何台かの液晶に、小さく文字が浮かんだ。
『解決しました』
「早いな!」
常連が笑う。
店主も笑った。
そして、羽根モノの台がぽつりと言った。
「……でも、店主さん」
「はい?」
「私たちも、皆さんも、思い通りにならないことがあるんですね」
「そうですねえ」
店主は店内を見渡した。
玉は今日も、釘に弾かれ、風車に揺られ、思いもよらない方向へ転がっている。
それでも、どの玉も止まることなく、盤面の中を進んでいく。
「人も台も、いろいろありますから」
店主がそう言うと、どこかの台から小さく表示が出た。
『お互い様です』
それを見た常連が笑った。
「まったく、その通りだな」
今日も時環遊技場では、人と台が互いの悩みを聞きながら、白銀の玉を転がしている。
人生も、パチンコも。
どう転がるかは、最後まで分からない。