❖✦✙ 濃密なる至福の果てにある、ほろ苦き深淵 Ⅳ ✙✦❖
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ウットリと潤んでいく瞳――。そこに恭しく捧げられていたのは、ただ一粒のショコラだった。ショコラティエ・アルベリックが『銀の一粒石の髪留め』の下で黒曜石の瞳を鋭く光らせ、結晶構造のすべてを完璧に制御して生み出した至高の一粒。
本文
ウットリと潤んでいく瞳――。
そこに恭しく捧げられていたのは、ただ一粒のショコラだった。
ショコラティエ・アルベリックが『銀の一粒石の髪留め』の下で黒曜石の瞳を鋭く光らせ、結晶構造のすべてを完璧に制御して生み出した至高の一粒。
それは揺らめく蝋燭の火を受け、妖しく、冷たく静まり返っている。
この世のすべての光を吸い込み、代わりに神秘的な艶を放つ完璧な漆黒の結晶は、純白の磁器の上であまりにも神聖に輝いていた。
「……どうぞ」 エレーヌの霧がかった氷のような瞳が、美しき結晶に狂っていく彼女を愛おしむように、無感情に、けれど陶酔を誘うほど綺麗に微笑んだ。
彼女は、もはや拒むことなどできなかった。逃げようとする意志など、とうに音の檻に溶かされている。
促されるまま、夢遊病者のように指先を震わせながらその漆黒の結晶を拾い上げ、吸い寄せられるように唇へと運んだ。
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