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【51番外】パチンコ・グラビディ

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/23 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 2,551文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

その日は、時環遊技場の定休日だった。

向かいにあるレトロゲームセンターは、今日も営業している。

古いアーケードゲームの電子音に、十円ゲームの小さな機械音。エレメカのモーターが回る音も混じって、店内には昔のゲームセンターらしい賑やかさが広がっていた。

その一角には、昔の遊技場をそのまま残したようなパチンコ島がある。

今日は、その島の前にいつもより人が多かった。

「これ、本当にあるのかよ……」

「写真で見たやつだ!」

「現存してたんだな……」

客たちの視線の先にあるのは、一台の羽根モノだった。

盤面には、古びた文字で『太陽系』と書かれている。

中央には透明なオレンジ色のカプセル。その周囲を、穴の開いた三重の円盤が囲んでいる。それぞれの円盤は違う速度で回転していた。

玉が羽根に拾われると、ころころと盤面を進み、外側の円盤の穴を抜けて、その内側へと入っていく。

さらに、その内側へ。玉が進むたびに、まるで小さな惑星が軌道を変えていくように見えた。

「すごいな、これ」

「こんな台、まだ残ってたのか」

「相当珍しいぞ」

写真を撮る者もいれば、盤面に顔を近づけて仕組みを眺める者もいる。

その様子を、少し離れたカウンターから店主が嬉しそうに見ていた。

この台を見つけた時、店主自身も驚いた。保存状態も悪くなかった。必要なところはきちんと修理し、昔の雰囲気を壊さないように手を入れた。そして、どうしてもこのゲームセンターに置きたくなった。

「いい台ですねえ」

店主が満足そうに呟く。

隣にいた従業員アンドロイドが、客たちの様子を確認しながら答えた。

「店主。こちらの台について、かなり問い合わせが来ています」

「そうですか」

「『実際に打てるのか』という質問が多いようです」

「もちろん打てますよ」

店主は笑った。

「せっかくですから、遊んでいただきましょう」

さっそく、一人の客が台の前に座った。玉を借り、ハンドルを握る。そして、最初の玉が盤面へ飛び出した。羽根に拾われた玉が、三重の円盤へ向かって転がっていく。

「おお……!」

周囲から声が上がった。玉は外側の円盤の穴を抜け、次の円盤へ入る。さらに、その内側へ。

「本当に惑星みたいだな」

「よくこんな仕組みにしたな」

「これ、見てるだけでも面白いぞ」

店主もカウンターの向こうから眺めていた。

その時だった。

床に落ちた玉が、ころ……と転がった。

「……?」

客が足元を見る。

玉の動きが、妙に遅い。ころころと転がったあと、ほんの少し跳ねる。そして、そのままふわりと浮いた。

「……あれ?」

客が立ち上がる。

その身体も、ふわっと浮いた。

「うわっ!」

店内にいた客たちが、一斉に振り返った。

「なんだ!?」

「ちょっと待て!」

誰かが試しに軽くジャンプする。いつもならすぐに着地するはずの身体が、ゆっくりと落ちてくる。

「うわ、長い!」

それを見た別の客が笑いながら飛び跳ねる。

今度は、別の場所でも同じことが起きた。

新聞を読んでいた客の手から紙がふわりと浮き、椅子の脚が床からわずかに離れる。

ゲームセンター全体の重力が、ほんの少しだけ軽くなっていた。

店主は目を丸くした。

「これは……」

従業員アンドロイドがすぐに計測を始める。

「重力加速度を測定します」

しばらくして、測定結果が表示された。

「……通常値の約六分の一です」

「六分の一?」

店主が聞き返す。

「はい」

近くにいた常連が天井を見上げた。

「……月と一緒じゃん」

一瞬、店内が静かになった。

そして、次の瞬間。

「なんでゲームセンターが月の重力になるんだよ!」

「しかもパチンコ打ってる最中だぞ!」

「『太陽系』だからか?」

「そんなわけあるか!」

あちこちから笑い声が起こった。

当の『太陽系』はというと、むしろ絶好調だった。玉がゆっくりと落ちる。三重の円盤を抜ける速度も変わり、外側から内側へと進む玉の姿が、普段よりずっと長く楽しめる。ころころと進み、円盤の穴を抜け、また次の円盤へ。

「……こっちのほうが太陽系らしいな」

誰かが呟いた。

「確かに」

店主も楽しそうに笑った。

「これは面白いですねぇ」

従業員アンドロイドが、まだ計測を続けている。

「店主、原因は分かりますか?」

「いえ」

店主はあっさり答えた。

「分かりません」

「ですよね」

原因が分からないまま、遊技は続いた。

月と同じくらいの重力になったゲームセンターで、客たちは妙に楽しそうにパチンコを打っている。普段なら床に落ちる玉が、ゆっくりと跳ねる。椅子に座る動作さえ、いつもより少しだけ大げさになる。そして『太陽系』の三重の円盤は、そんな環境をまるで気にする様子もなく回り続けていた。

やがて、遊技台から電子音が鳴る。規定数に達したことを知らせる表示が点灯した。

店主は、それを確認するとマイクを手に取った。

店内に、いつもの明るい声が響く。

『…番台羽根モノコーナーより「太陽系」予定数終了、お疲れ様でした!』

客たちが振り返る。

店主がガラス面に終了札を刺した、その瞬間だった。

ふわふわと浮いていた玉が、ジャラッ!と一斉に落ちた。椅子が、どすんと床へ戻る。浮いていた新聞が、ばさっと落ちる。さっきまでゆっくりと着地していた客も、「うわっ!」と声を上げながら、ようやく床に足をつけた。

店内が一瞬、静かになる。

従業員アンドロイドが計測結果を確認した。

「……重力、正常値に戻りました」

客たちは顔を見合わせる。

「……戻ったぞ」

「打ち止めした瞬間に?」

「本当に?」

店主はマイクを持ったまま、『太陽系』を眺めていた。

しばらく考えたあと、穏やかな笑みを浮かべる。

「なるほど……」

常連が聞いた。

「何か分かった?」

店主は少し考え、それから『太陽系』を見ながら言った。

「この台、打ち止めになると重力まで戻るんですねえ」

「そこは違うと思います、店主」

また店内に笑い声が起こった。

その後、『太陽系』は何事もなかったように、三つの円盤を回し始めた。毎回ではない。いつ起こるのかも分からない。何が条件なのかも分からない。ただ、一つだけ分かっていることがある。

『太陽系』を打っている時、稀にゲームセンターが月の重力と同じになる。

そして、打ち止めになると元に戻る。

次の日も誰かが台の前に座り、玉を借りてハンドルを握る。三重の円盤が回り始める。

「今日は月の重力になるかな」

そんな声が、店内のどこかから聞こえた。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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