黒曜石の檻 [4]
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
<p> 「――これで、あなたは一生私を忘れられない。呪いとして、その胸に刻みなさい」</p><p>触れ合った唇から、彼の熱い体温が、私の凍てついた心を溶かすように流れ込んでくる。 ルベウスの大きな手が、驚きに震えながらも私の背中にゆっくりと回るのが分かった。</p><p>忘れたくても、もう遅いわ。 ルベウス, あなたの命も、魂も、呼吸さえもすべて私のものよ。</p>
本文
「――これで、あなたは一生私を忘れられない。呪いとして、その胸に刻みなさい」
触れ合った唇から、彼の熱い体温が、私の凍てついた心を溶かすように流れ込んでくる。 ルベウスの大きな手が、驚きに震えながらも私の背中にゆっくりと回るのが分かった。
忘れたくても、もう遅いわ。 ルベウス, あなたの命も、魂も、呼吸さえもすべて私のものよ。
私は重ねた唇をわずかに動かし、彼の薄い唇を、逃がさないようにそっと噛んだ。 ちくりとした小さな痛みが、彼の中に私を永遠に刻みつけるための楔。
そこから滲む鉄の匂いと、触れ合った熱が、私の凍てついた全身に甘く、狂おしく広がっていく。 ――もっと、あなたのすべてを奪ってしまいたい。
しかし、その至上の幸福は、驚くほど一瞬の出来事だった。 ルベウスが息を呑み、私の身体を激しく抱きすくめようとした瞬間には、私はもう後ろへと飛び退いていた。
彼の指先が、ただ虚しく夜の空気をかすめてすり抜けていく。 二度と触れることのかなわない私の姿を前にして、彼の端正な顔が絶望と悲痛に歪むのが見えた。
私なしでは生きていけないはずの彼を、この手で永遠に突き放さなければならない。 惹かれ合う痛みに胸の奥が千切れそうなほど締め付けられ、呼吸の仕方さえ忘れそうになる。
けれど私は、ただ美しく、冷酷な微笑みを崩さないまま彼を見つめ続けた。
「追ってこないで、ルベウス。 これ以上は、英雄のあなたを醜く汚してしまうわ」
遠ざかる私の背後で、大聖堂の瓦礫が音を立てて崩れ、二人の距離を無慈悲に隔てていく。
「さようなら、私のヒーロー。 最後の瞬間まで――私の愛に、呪われて生きていきなさい」
作品統計
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