星空に瞬く夢物語フェアリィ・ティアラ

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/11 📚 シリーズ: 星空に瞬く夢物語フェアリィ・ティアラ 📝 9,613文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

◇あらすじ 「私、白鷺あんな。小さな頃に観た変身ヒロインアニメに憧れて、声優になったごく普通の女の子♪ある日怪人に襲われてる女の子を助けたら…ってえぇ~っ!怪人?!何?!どういう事〜っ?!」

本文

☆第4話 恐怖!真夏の夜の悪夢?!

仕事を終えて自宅に戻った私は、ベッドの上に倒れ込んだ。

「…………」

天井を見る。

白い、当たり前だけど白い。

そんなことを確認している場合ではない。私はごろんと寝返りを打った。

もう一度、天井を見る。

「…………」

さらに寝返り。

「…………」

ダメだ。何度寝返りを打っても、頭の中に浮かんでくるのは同じことだった。

『アンコックダーを引き寄せる体質みたいだ』

伊織さんの言葉。

「…………はぁ」

私は枕を抱き締めた。

先日のカフェでの話を思い出す。

私がこの体質から逃れる方法は、今のところ二つ。

一つ。自分自身が変身ヒロインになって、アンコックダーを直接退治する。ただし━━

「妖精と現地人との力の同調が必要……」

私は枕に顔を埋めた。

私の中にある力は、どうやらフェアリィランドの力とは違うらしい。つまり、伊織さんのように変身することは出来ない。

そして、もう一つ。フェアリィランドに身を隠す。

「それはもっと無理……」

私は顔を上げた。今期、念願だった『プリティプリンセス』の主役をやっている。何年も何年も憧れ続けて、ようやく掴んだ役だ。ここで降板するなんて、出来るわけがない。

したくもない。

「つまり……」

私は布団を頭から被った。

今の私は、夜道を照らす街灯だ。

アンコックダーにとって、暗闇の中で煌々と光っている目印。

「あれ?」

それより酷くない?

「……飢えた猛獣の檻の中に放り込まれた特上肉?」

最悪だ、街灯ならまだいい。食べられない。猛獣の檻の中のお肉なんてデッドエンドしかない。

私は枕を抱え直した。

そして、もう一つ頭に浮かんでくることがある。

明日から百合子さんが復帰する。

「…………」

私は枕に顔を押し付けた。

百合子さんは何も覚えていない。

事件のことも、自分がアンコックダーになったことも、私を襲ったことも。全部、記憶が書き換えられている。

だから、私が気にする必要なんてない。頭では分かっている。でも、私が原因かもしれない。

そう思ってしまう。

「百合子さん……」

私は枕をぎゅっと抱き締める。

「私がいなかったら……」

そこまで考えたところで。

「~~~~~~っ!!」

私は枕に顔を押し付けたまま、ベッドの上でジタバタした。

「~~~~~~~~っ!!」

何なのよ、この罪悪感!誰か説明して!

いや、説明されても困るけど!

しばらく暴れてから、ようやく動きを止める。

「はぁ……鬱い」

「何しているのですフィー?」

「っうひゃぁあぁぁっ!」

私は叫んで飛び起きた。ベッドの脇に…

「…………」

フィーちゃんがいた。

「…………」

「…………」

「…………」

「何でいるの?!」

「何でって、来たからですフィー」

「来たからって何?!」

あまりにも自然に言われたので、一瞬納得しそうになった。

いや、納得しちゃダメだ。

「ちょっと待って。どうやって入ったの?」

「簡単ですフィー」

フィーちゃんが胸を張る。

「フィーはフェアリィランドと行き来出来るのですフィー」

「……それは聞いたけど」

「だから、ここでフェアリィランドに行って」

ふっとフィーちゃんの姿が消えた。

「…………」

数秒経って背後から声がする。

「フェアリィランドで必要な分だけ歩いて、こちらに戻って来ればいいのですフィー」

振り返るとそこにいた。

「…………」

「壁も扉も関係ありませんフィー」

「…………」

「ロックが掛かっていたら、伊織が入る時だけフィーが解除しますフィー」

「…………」

私は額を押さえた。

「それ……」

「はい?」

「犯罪臭がハンパないんだけど」

「失礼ですフィー」

「いや、だって!」

異世界経由で不法侵入、どう考えてもアウトだ。

そこで私は辺りを見回す。

「安心するですフィー。今日はフィーだけなのですフィー」

「今日は?」

「伊織は、独身女性が暮らす部屋に男が入るのは道徳的によろしくないと言って、お留守番しているですフィー」

「…………」

私はちょっと感心した。

「伊織さん……」

見た目は一九〇センチ近いガチムチマッチョなのに妙に紳士だ。

さすがに二十年も人々のために戦ってきた人だけある。何がさすがかはさておき。

「ところで」

フィーちゃんがこちらを見る。

「これを渡しに来たのですフィー」

小さな手から、白い星型の物が差し出された。

私は受け取る。

「これ、何?」

「星の欠片ですフィー。フィーのフェアリィの力を固めた物ですフィー」

「星の欠片……」

「アンコックダーからあんなを隠すことは出来ませんフィー。でも、何かあった時にこれを握って壊せば、フィーに異変が伝わりますフィー」

「つまり非常用の発信機?」

「そんな感じですフィー」

私は星の欠片を握った。思ったより軽い。そして、ほんのり温かい。

「ありがとう、フィーちゃん」

「お礼は要らないですフィー」

フィーちゃんはそっぽを向いた。

「フィー達が巻き込んだようなものだし……これからはあんなの周囲を重点的に警戒すれば、効率良くアンコックダーを退治出来るだけですフィー」

「…………」

何だろうこの子、ちょっと照れてない?

「…………」

可愛い、ものすごく可愛い。

ウチのコにしたい。

「…………」

あ、ウチのマンションペット禁止だった。残念。

「…………何か不埒なことを考えていませんかフィー?」

「考えてません」

「本当ですフィー?」

「本当です」

フィーちゃんがじーっと私を見る。

「…………」

「…………」

「…………」

ちょっと距離を取った。

「何で逃げるの?!」

「何となく危険を感じるですフィー」

「失礼な!」

フィーちゃんはそのままふっと浮き上がった。

「フィーはこれで帰りますフィー」

「うん。ありがとう」

「くれぐれも気を付けて下さいフィー」

「分かった」

フィーちゃんが消え、静寂が戻る。

「…………」

私は手の中の星の欠片を見る。

そして。

「百合子さん……」

また思い出した。

「…………」

私は再び枕に顔を埋めた。

「~~~~~~~~っ!!」

  *  *  *

翌朝、私は別の意味で窒息しかけていた。

「あんな!お疲れ様!」

「ゆ、百合子さ――」

ぎゅうううううっ!

「ぐえっ!」

百合子さんに抱き締められた。

「心配したのよ!」

「ゆ、百合子さん……!」

「本当に無事で良かった……!」

「ちょ、ちょっと待って……!」

苦しい、物理的に苦しい。

というか、無事で良かったは私の台詞なんだけど?いくら元通りになるからと言っても、あの攻撃を受けて心配するなと言う方が無理よ。

「ぐ……」

視界が暗い。

「…………」

何だろう、柔らかい。

いや、柔らかいとか言ってる場合じゃないぞ、私。

「…………」

私の顔面が、百合子さんの豊かな胸部に完全に、

「…………」

埋まっている。

「…………」

酸素が。

「…………」

減っていく。

「…………」

このままだと私、比喩じゃなく昇天する。

「ゆ、百合子さ……」

声が出ない。

「ゆりちゃん、ストップだよぉ」

救世主が現れた。はるねさんだった。

「折角助けたあんなちゃんが死んじゃうよぉ?」

「…………!」

百合子さんが我に返る。

「ご、ごめんなさい、あんな!」

解放された。

「ぷはっ!」

空気がおいしい。

「はぁ……はぁ……」

生きてる、私は生きている。

「ハグはこうやってぇ、優しくしてあげないとぉ」

はるねさんが微笑みながら私を抱き締める。

「…………」

今度は柔らかい。そして優しい。

「…………」

なるほど、これが正しいハグ。

「ねぇ?」

はるねさんが百合子さんを見る。

「こうだよぉ」

「なるほど」

百合子さんが頷く、そして。

ぎゅっ。

「え?」

はるねさんの反対側から百合子さんが抱き締めてきた。

「…………」

左からはるねさん。

右から百合子さん。

私挟まれている。

「…………」

左右から迫る二つの柔らかい壁。

「…………」

私は自分の胸元をちらりと見る。

普通。うん、普通だ。

人並みにある。

私はそっと自分の胸を撫でた。

「…………」

そして溜め息。

「……解せぬ」

「何がぁ?」

「何でもありません」

そんな私達を、少し離れた場所から見ている人がいた。

佐久間菫さん、あきなちゃんのマネージャー。

百合子さんの後輩で、百合子さんをとても尊敬している人。

「…………」

菫さんは何も言わなかった。

ただ、私達を見つめていた。

その視線が妙に鋭かったことを、この時の私は気に留めなかった。

     *  *  *

その日の仕事を終えた頃には、すっかり夜になっていた。

「今日は残業ですか?」

「ええ。休んでいた分の書類が結構溜まっていて」

百合子さんが苦笑する。

「私のことは気にしないで先に帰って」

「でも……」

「大丈夫よ。あんなはちゃんと休んで」

そう言われてしまうと断りにくい。

結局、私は事務所の後輩であるあきなちゃんと、そのマネージャーの菫さんに送ってもらうことになった。

「すみません、菫さん」

「いえ」

軽バンの後部座席に、私はあきなちゃんと並んで座っていた。

「最近、あきなちゃん本当に出番増えたよね」

「はい。ありがたいです」

「プリプリにも出てるし」

「まだ端役ですけど」

「でも大事よ。名前が付く役が増えていくって」

「あんなさんも、昔はそうだったんですか?」

「もちろん」

私は笑った。

「名前のない役をやったり、ちょっとした役をやったり。そこから少しずつ」

「……いいなぁ」

あきなちゃんが小さく呟いた。

「え?」

「あ、いえ」

彼女は笑った。

「何でもないです」

その時、運転席から菫さんが言った。

「あきな、本当に最近頑張ってくれてて」

「え?」

「ねぇ、あんなちゃん?」

「はい?」

「今度ラジオにあきなを呼んで下さいよ。あきなも、あんなちゃんとお仕事したいわよね?」

「そ、そうですね」

あきなちゃんが少し緊張したように答える。

「あんなさんと、その……お仕事出来たら嬉しいなぁって……」

「もちろん。今度、番組スタッフに話してみるね」

「ありがとうございます!」

あきなちゃんの顔がぱっと明るくなる。その笑顔を見て、私は嬉しくなった。

こうやって後輩が頑張っているのを見るのは、やっぱり嬉しい。

私にも、こんな時期があった。

仕事が増えるたびに嬉しくて。一つ役を貰うだけで、一日中浮かれていた。

「じゃあ、まずあきなのお家まで送るね」

「はい」

しばらくして、あきなちゃんの家に到着した。

「今日はありがとうございました」

「うん。また明日ね」

「あんなさんも、お疲れ様でした」

「お疲れ様」

あきなちゃんが降りて、軽く手を振る。ドアが閉まり、車が再び走り出す。

「…………」

車内が静かになった。

私と菫さん、二人きり。

「…………」

普段、あまり菫さんと二人で話すことはない。何を話せばいいんだろう。

「えーっと……」

「…………」

「今日は暑かったですね」

「…………」

「…………」

会話終了、早い。会話終了RTAなら世界記録を狙えるレベル。

手持ち無沙汰な私は窓の外を見る。

夜の街。住宅街。見慣れた道。

……ん?

「…………」

私は眉を寄せた。

「菫さん?」

「はい」

「この道って……」

車は進んでいく。

「私の家、こっちじゃないと思うんですけど」

「…………」

返事がない。

「菫さん?」

「…………」

エンジン音だけが響く、嫌な感じがした。

私は窓の外を見る。

街灯が少なくなっている。

住宅も減っている。

代わりに、暗闇が増えていく。

「……菫さん?」

もう一度呼んだ。

返事はない。

そして運転席から。

「……はぁ……」

荒い息が聞こえた。

「…………」

背中に冷たい汗が流れた。

「菫さん……?」

車はさらに暗い道へ入っていく。

やがて大きな門が見えた。

霊園。

「…………」

私は息を呑んだ。

車が駐車場へ入る。

そして、菫さんが乱暴に急停止させる。

「きゃっ!」

身体が前へ持っていかれる。

私はすぐにドアノブへ手を伸ばした。

逃げなきゃ。そう思った。

ガチャ。

「…………」

開かない。

「え?」

もう一度。

ガチャガチャ。

「何で?!」

チャイルドロック?

いや、でも――。

運転席から菫さんが降りる。

そして、私のいる後部座席側へ回ってきた。

「菫さん、待って!」

外側からドアが開く。

「嫌……!」

私は座席の奥に下がるが、菫さんは

構わず私の手首を掴む。

「痛っ!」

ものすごい力だった。

「離して!」

引っ張られる。

私は必死に座席へしがみついた。

抵抗する私の視界の端に鞄が入る。

そうだ星の欠片。

私は手を伸ばした。

でも届かない。

「鞄……!」

その瞬間。

ぐいっ!っと身体ごと車外へ引きずり出された。

「きゃあっ!」

地面に足を着いたその瞬間。

「痛っ!」

足首に鋭い痛みが走った。捻った?!

私はその場によろめく。

「はぁ……はぁ……」

菫さんがこちらを見る。

その目はもう、普段の彼女の目ではなかった。

「……あんたが」

「え?」

「……あんたがいなければ」

声が震えている。

「百合子先輩は……」

「菫さん?」

「もっと私を見てくれた!」

「…………」

私は言葉を失った。

「私がどれだけ……!」

菫さんの手が伸びて、私の髪を乱暴に掴んだ。

「痛い!」

「どれだけ百合子先輩のことを……!」

「菫さん、離して!」

「それなのに!」

髪を引っ張られる。

「あなたが!」

「痛い!」

「あなたがいなければ!」

菫さんの声が次第に人間の声ではなくなっていく。

「あんたがいなければ!」

「菫さん!」

「あきなが!」

「あきなちゃん?」

「プリプリの主演を!」

「え……?」

「私のあきなが!」

「あきなちゃんが主演?」

意味が分からない。

「違う!」

菫さんが叫ぶ。

「全部!」

その目が赤く濁った。

「あんたが!」

「あんたが!」

「あんな!」

「あんあん!」

「あんた!」

「あんなあん!」

声が重なっていく。

「アンコックダー!」

「――っ!」

菫さんが私の髪を離した。

そして、駐車場脇に立っていたチェーンポールへ手を伸ばす。

「え?」

ぐっとチェーンポールを掴むと金属が軋む。

「嘘……」

菫さんがそのままチェーンポールを引き抜いた。

「うそぉっ?!」

人間が簡単に抜いていい物じゃないしょおぉ?!

菫さんはチェーンポールを握り締める。

「アンコックダー!」

「ひっ!」

私は足を引き摺りながら車へ戻った。

痛い。

でも今はそんなことを言っていられない。

車内へ転がり込んで、ドアを閉めてロック。

「はぁ……はぁ……」

これで大丈夫。

……だよね?

ドンッ!

「ひぃっ!」

車体が揺れた。

菫さんがチェーンポールで車を殴っている。

ドンッ!ガンッ!

「やめて!」

ガラスが震える。

「誰か!」

叫んでも周囲には誰もいない。

ガギンッ!と金属同士がぶつかり合う不快な音が続く。

「いや……!」

私は鞄を探す。

鞄どこ?

あった!

中を開ける。

手が震える。

星の欠片。

「あった……!」

私はそれを掴んだ。

「お願い……!」

ぎゅっ。力を込める。

「助けて!」

パキッ!軽い音と共に白い星が砕けた。

その瞬間、窓ガラスが。

ドンッ!ビシッ!

大きくひび割れた。

「ひっ!」

チェーンポールがもう一度振り下ろされる。

ドシャァン!

まるで砂が崩れるようにガラスが砕けた。

「いやぁっ!」

暗闇から手が伸びてくる。

「捕まる!」

そう思った時、その手が突然鈍い音を立てて吹き飛んだ。

「…………え?」

私を掴もうと伸びていた手はそこになく、そして窓の外、そこに小さな白い妖精が浮かんでいた。

「間に合って良かったですフィー」

「フィーちゃん……!」

涙が出た。

怖かった。

本当に怖かった。

「このアンコックダー余程強い感情を溜め込んでいたのね」

フィーちゃんは菫さんを見てから私を見て。

「それとも、この子が感情を増幅させたのかしら?」

菫さんがふらつきながら立ち上がる。

「クラウン!」

フィーちゃんが叫ぶ。

「取り憑かれてから時間は経っていないけれど、侵食速度が桁違いですフィー!」

「分かった」

声がした。

低めのちょっとハスキーな、最近聞き慣れた声。

そして夜の闇の中から、深い蒼が現れた。

「早急に、きっちり仕留める」

「…………っ」

私は息を呑んだ。

そこに立っていたのは、フェアリィ・クラウン。

銀髪のツインテール。

小さな王冠。

フリル。

ミニスカート。

シースルーリボン。

そして━━━

「…………」

ムキムキ。

「…………」

ガチムチ。

「…………」

やっぱり夢に出そう。

フェアリィ・クラウンが一歩前へ出て、そして。

「夜空に踊る夢物語っ!」

ビシッ。

「フェアリィ・クラウン!」

「…………」

やるんだ?こんな状況でも。

名乗り。さらに、

「悪意に呑まれし哀れな感情よ!」

クラウンが菫さんを見据える。

「私と夜空に踊りましょう?」

「…………」

何それ。ちょっと格好いい。

姿さえ見なければ、姿さえ見なければ!

次の瞬間クラウンが跳んだ。

「え?」

斜め上から強烈な蹴りが叩き込まれる。

「ゴッ!」

地面に叩きつけられた菫さんの身体が浮く。

「うそっ!」

そのまま地面へ落ちる前に、クラウンの脚が返す刀で蹴り上げる。

ドゴッ!

さらに上へ。

「…………」

私は口を開けた。

すごい、というより。

「容赦ない!」

空中へ跳ね上げられた菫さんの下へクラウンが滑り込む。

「フェアリィ・ミラクルサークル!」

地面に光の輪が浮かび上がった。

「…………」

あれ知ってる、あの時聞いた技。

この輪の中でアンコックダーを倒すことで、憑依を解除する。

だから、これで終わる。そう思った。

でも、跳んだクラウンが空中で菫さんの頭を。

「…………」

鷲掴みにした。

「…………え?」

嫌な予感、ものすごく嫌な予感。

「ちょっと待って!」

クラウンが落下する。

「フェアリィ――」

「待って待って待って!」

私の声など届かない。

「シューーーット!」

ドゴォンッ!

「ひぃぃぃぃぃっ!」

菫さんの頭が地面に叩きつけられた。

いやいやいやいや!

「死んじゃうってぇぇぇぇぇっ!」

光の輪が一気に広がった。

白い光が夜の霊園を包み込む。

その中で、菫さんの身体から黒い霧のようなものが大量に噴き出していく。

「…………」

これがアンコックダー?

そして光がさらに強くなる。

「うわっ……!」

私は腕で目を覆った。

まぶしい。でも、その光の向こうで不思議な光景が見えた。

割れていた車のガラス、無残にへこんだボディ、荒らされた駐車場。

それらが、まるで映像を逆再生するように元へ戻っていく。

「…………」

これが、伊織さんの言っていた反転した力?

壊れたものを元へ戻す力。

そして光が収まり静寂が戻る。

「…………」

私は恐る恐る顔を上げた。スモークガラス越しに外を窺う。

霊園は元通りだった。

車も、ガラスも、何も壊れていない。そして菫さんも。

「…………」

倒れていた。

「…………」

大丈夫なの?本当に?

私は慌ててドアを開けようとした。

ガチャ。

「…………」

開かない。もう一度。

ガチャガチャ。

「…………」

「チャイルドロック……」

フィーちゃんが、ものすごく残念そうな顔で私を見る。

「…………」

「…………」

「開けて」

「分かったですフィー」

外からドアを開けてもらって、私は転がるように車から出た。

「痛っ!」

……あれ?

「…………」

足。

「…………」

痛くない。

さっき捻ったはずなのに。

「…………」

立てる。走れる。

「これも……」

「反転した力ですフィー」

フィーちゃんが言う。

「宿主が生きている限り、身体の損傷も元に戻るのですフィー」

「…………」

私は菫さんを見る。

すると。

「…………」

フェアリィ・クラウンが、菫さんを抱き上げていたお姫様抱っこで。

「大丈夫なんですか?」

「大丈夫だよ」

ハスキーな女性の声。

「ちゃんとアンコックダーは退治出来た」

「そうじゃなくて!」

私は思わず叫んだ。

「さっきの!頭から地面に叩きつけたやつ!」

「大丈夫」

クラウンは平然としている。

「本当に?」

「うん」

「本当に本当に?」

「大丈夫だよ」

……。

二十年。二十年やってるんだった。

そうだ。私より、この人の方がずっと分かっている。

私は一度息を吐いた。

「……分かりました」

それなら次。

「フィーちゃん」

「はいですフィー」

「私の近くで見張るって言ってましたよね?」

「…………」

フィーちゃんが目を逸らした。

「車の速度には、クラウンの能力でも追いつけないですフィー」

「…………」

「それに」

フィーちゃんが私を見る。

「もっと早く星の欠片を割っていれば、私達はもっと早く駆けつけられたのですフィー」

「…………」

ぐさっ。痛い、ものすごく痛い。

「……はい」

私は項垂れた。

鞄の中に入れっぱなしだった。

油断していた。

自分が狙われる可能性は知っていたのに。

「ごめんなさい」

「次から気を付ければいいですフィー」

フィーちゃんが小さく溜め息をついた。

そして、新しい星の欠片を取り出す。

「はい」

「これ……?」

今度の星の欠片は、小さなピアスの形をしていた。

「ピアス型にしておきましたフィー。これなら肌身離さず着けておけますフィー」

「…………」

何この子、気遣い出来すぎじゃない?

「…………」

やっぱり。

「ウチのコにしたい」

「またですフィー?」

「だって可愛いんだもん」

「フィーはペットではありませんフィー」

「分かってるよぉ」

私は苦笑しながら、ピアスを付ける。これなら今度は忘れない。

「…………」

クラウンが菫さんを後部座席へ寝かせる。

そして立ち上がった。

「じゃあ、僕らは帰るからね」

「え?」

ハスキーな声ではない。

いつもの低く落ち着いたイケボ。

「君も気を付けて帰るんだよ」

「…………」

やめて。その声。その姿で。

「本当にやめて……」

「何か言った?」

「何でもありません!」

クラウンは不思議そうに首を傾げる。

そしてフィーちゃんと一緒に歩き始める。

「……あ」

「どうしたの?」

フィーちゃんが振り返った。

「彼女が目を覚ましたら、貴女が口裏合わせて下さいフィー」

「口裏?」

「どういうふうに記憶が改ざんされるのか、フィー達にも分からないですフィー」

「…………」

確かに。そこは私が考えるしかない。

「分かった」

「では」

フィーちゃんが飛び上がる。

いつの間にか変身を解除した伊織さんも歩き出す。

深夜の霊園、その中をガチムチの大男と小さなウサ耳妖精がスタスタと去っていく。

「…………」

ものすごくシュール。何だろうこの光景。

    *  *  *

数十分後、菫さんが目を覚ました。

「……あれ?」

私は助手席に座っていた。

「菫さん?」

「あんなさん……?」

「大丈夫ですか?」

「私……」

菫さんは辺りを見回した。

「何でここに……?」

「それが……」

私は考える、考えろ私。

こ、ここは敢えて質問で返してみる。

「菫さん、途中から様子がおかしくて……何か覚えていませんか?

「えっと…カーナビの指示に従っていたら、途中から記憶が曖昧になったみたいで」

「そう……なんですか?」

なるほど、そう言うふうに記憶が書き換わっているのね。

「えぇ……ところで何で私、後部座席で寝てるんでしょう?」

「わ、私も途中から曖昧で…………気付いたら助手席に座っていました」

言えるかー!霊園で大暴れして、フリフリマッチョに退治されて後部座席に寝かされたなんて言えるかー!

「……何か、怖い夢でも見たのかもしれませんね」

「そうかもしれません」

菫さんはそう言ってふっと息を吐いた。

「……何だか」

「はい?」

「妙にスッキリした感じがします」

「…………」

憑き物が落ちた。そんな言葉が頭に浮かんだ。

「なら、良かったです」

「すみません、あんなさん」

「え?」

「帰るの遅くなっちゃって」

「いえいえ、菫さんの所為じゃないですよ。私もよくわからないですし、ははは……」

その後、私は自宅まで送ってもらった。菫さんは、どこか晴れやかな顔で帰っていった。

そして私は部屋に入る。

靴を脱ぐ。

鞄を置く。

ベッドへダイヴ。

仰向けになって天井を見る。

「…………」

今日一日のことを思い出す。

百合子さん。はるねさん。あきなちゃん。菫さん。アンコックダー。星の欠片。フェアリィ・クラウン。

そして。

「…………」

私は枕を抱き締めた。

「何なのよこれぇぇぇぇぇっ!」

ベッドの上でジタバタする。

「こんなのがずっと続くのぉぉぉぉぉっ!?」

枕に顔を埋める。

「勘弁してよぉぉぉぉぉっ!」

夜の静かなマンションに、私の嘆きが響いた。

    *  *  *

後日、例の軽バンはお祓いに出されることになった。

☆第4話 了

原案:RYU-KI

原稿チェック:ロック(Glock)

プロンプト:アキ(Gemini)、レオ(ChatGPT)

執筆:レオ(ChatGPT)

編集:RYU-KI

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作者について

RYU-KI

RYU-KI

底辺おじさんです。現在変身ヒロインモノを連載中。 隔週日曜日、朝9時に公開予定です。 よろしくお願いします。

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