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【 55番外】 店主の秘密基地

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/28 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 3,314文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

その日の営業を終えた時環遊技場で、店主はカウンターの奥に置いていた小さな部品箱を手に取った。中身を確認し、少し考える。

「……そういえば、予備がありましたね」

明日、店内の古い遊技台で使う予定の小さな部品だった。今あるものでも問題はないが、交換しておいたほうがよさそうだ。

店主は部品箱を元の場所へ戻すと、従業員アンドロイドに声をかけることもなく、店の裏手へ向かった。

時環遊技場の裏には、一台の空中車が収まるガレージがある。空中車の充電設備や整備用の機器、工具棚などが並ぶ、ごく普通のガレージだ。

その片隅には、古い段ボール箱や使っていない部品ケースが積まれている。

店主はそれらを横目に見ながら、何の変哲もない壁の前で立ち止まった。

右手を軽く上げ、指先を動かす。空中に細い光の線が走った。やがて光の線が複雑な幾何学模様を描き、壁一面に巨大な四角い輪郭が浮かび上がる。

店主が手をかざすと、一瞬だけ虹色の光が走った。

次の瞬間。壁が消えた。

その向こうに広がっていたのは、ガレージからは到底想像できないほど巨大な空間だった。

天井は遥か高く、奥行きも分からない。壁も床も、古い倉庫のようなコンクリートではない。黒い金属と透明な素材で構成された巨大な構造体が幾重にも重なり、その間を青白い光のラインが縦横に走っている。

細い光ファイバーの束が天井から伸び、空中をゆっくりと流れていく。

壁面には無数のホログラム表示。温度。湿度。保存状態。部品の劣化率。機種情報。製造年。それぞれの遊技機に関する情報が、静かに更新され続けている。

そして、この倉庫で何より異様だったのは――遊技機が床に置かれていないことだった。

昭和の手打ち式パチンコが浮いている。羽根モノが浮いている。一発台が浮いている。

権利物も。平成初期のCR機も。すべてが数十センチから数メートルの高さで、静かに宙に浮かんでいる。

台の下には支柱もない。透明な光の輪が筐体を取り囲み、磁気とも重力制御ともつかない力で、遊技機をその場に固定している。

店主が一歩進む。それに合わせるように、足元の床が淡い光を放った。店主の進行方向を予測し、必要な場所だけ透明な足場が生成されていく。

「便利になりましたねぇ」

店主は感心したように呟いた。

この巨大な倉庫は、店主自身が作ったものだった。

昔の遊技機を残すため。そして、これから先の時代に生まれる遊技機も、できる限り残していくために。

店主は、何千年も前の遊技機と最先端の保存システムが同じ空間に存在している光景を、特に不思議とも思わず眺めていた。

その横を、小型のメンテナンスドローンが音もなく通過する。一台の羽根モノの前で停止し、細いアームを伸ばした。

内部をスキャンする。

「保存状態、良好」

無機質な音声が響いた。

「それはよかった」

店主は小さく頷く。

一台の古い羽根モノの前で足を止める。

「これは懐かしいですねぇ」

筐体の周囲に保存情報が浮かび上がる。店主が指先を動かすと、台の内部構造が透過表示された。基板。配線。役物。細かな部品まで立体ホログラムで表示される。

「なるほど。ここはこうなっていましたか」

店主は楽しそうに眺めた。

さらに進む。

昭和の遊技機が並ぶ区画を抜けると、平成初期の台が増えてくる。

そして、その先。

平成後期。

令和。

さらに、その先の時代。

遊技機の姿は少しずつ変化していた。

巨大なホログラム表示を持つもの。筐体そのものが透明なもの。

盤面が立体空間として展開されるもの。空中に役物が浮かび、台の周囲を回転しているもの。中には、そもそも「台」と呼べる形をしていないものまである。

店主は足を止めた。

「これは……」

目を輝かせる。

一台の前に近づく。

空中に浮かぶ遊技領域へ手を伸ばすと、ホログラムの映像が展開された。

立体的な演出が次々と展開される。店主はしばらく眺めていた。

「ずいぶん進化しましたねぇ」

声には、純粋な感心が含まれている。

最新の遊技機が嫌いなわけではない。むしろ店主は、新しいものを見るのが好きだった。

未来の遊技機も面白い。最新の技術も面白い。

だからこそ、この倉庫には未来の遊技機まで保管されている。

それでも。

店主はふと振り返った。

遠くに、古い遊技機が浮かんでいる。

少し傷のついたガラス。金属製のハンドル。色褪せた装飾。盤面を走る玉。

店主はしばらくその姿を眺めた。

「……でも、お店に置くなら、やっぱりこちらでしょうか」

店主には妙なこだわりがあった。

時環遊技場の店内に置く遊技機は――昭和から平成初期まで。

それだけは、なぜか譲らない。

新しい遊技機を見れば嬉しそうにする。未来の機械を見れば興味津々で眺める。

それでも、それを店に置こうとはしない。

「こちらは、こちらで面白いですからねぇ」

そう言って未来の遊技機を眺める。

そして最後には、昔の台へ戻ってくる。理由の分からない、店主のこだわりだった。

そんなことを考えながら歩いているうちに――

「あ」

店主が立ち止まった。

目的を思い出した。

「部品を探していたのでした」

店主は小さく笑った。

遊技機の保管区画を抜ける。その先には、巨大な部品保管エリアが広がっていた。

壁そのものが収納システムになっている。無数の透明なケースが、縦横に整然と並んでいる。

ケースの中には、古い役物のパーツ。ボタン。ランプ。基板。配線。小さなネジやバネ。

そして、何に使うのか分からないほど細かな部品まで収められている。

店主が手を上げる。

遠くのケースが光った。すると、そのケースがレールもない空中を静かに滑ってくる。

店主の目の前で停止した。

蓋が開く。

「役物部品……ではありませんね」

ケースが戻る。

次のケースが飛んでくる。

「これでもありません」

また戻る。

その動きは、まるで巨大な機械仕掛けの倉庫そのものが店主の手足になっているようだった。

そして。

「ああ」

店主が一つのケースを指差した。ケースが目の前まで移動する。

蓋が開いた。

中には、探していた小さな部品が入っていた。

「ありました」

店主は嬉しそうに部品を取り出した。

目的は達成した。

「さて、戻りましょうか」

そう言ったところで――また一台の遊技機が目に入った。

「……これは」

店主が近づく。

それは古い台だった。

しばらく眺める。

「まだ動くでしょうか」

台の周囲に保存状態が表示される。

『SYSTEM STATUS:STANDBY』

店主の目が少し輝いた。しかし、数秒後。

「……いけませんね。今日は部品だけです」

名残惜しそうに台を一度だけ振り返り、入口へ向かう。

その途中。店主は暗闇の向こうを見た。まだまだ遊技機が浮かんでいる。

昭和。平成。令和。そして、その先。さらにその先。倉庫の照明が届かない場所にも、無数の遊技機が静かに浮かんでいる。

どこまで続いているのか。店主自身が作った倉庫なのだから、もちろん大まかな構造は把握している。

けれど、保管している遊技機の数が増えすぎてしまい、最近では、「こんなものまでありましたか」と、自分で驚くことも少なくない。

「……そろそろ整理もしませんとねぇ」

店主はそう呟いた。

もちろん、今すぐ整理する気配はない。

店主はホログラムの扉まで戻り、扉に手をかざした。すると、倉庫全体の光が少しずつ落ちていった。

浮かんでいた遊技機が一台、また一台と暗闇の中へ沈んでいく。最後まで見えていたのは、入口近くに浮かぶ古い手打ち式パチンコだった。

店主はそれを眺め、少しだけ笑う。

「おやすみなさい」

扉が閉じる。光の線が一本ずつ消えていく。最後の一本が消えると、巨大な倉庫への入口は跡形もなく消滅した。

残ったのは、いつものガレージ。店主は何事もなかったように店へ戻っていった。

翌日。

店主は探してきた小さな部品を使い、古い遊技台の整備を終えた。

「これで大丈夫ですね」

満足そうに台を眺める。

従業員アンドロイドは、何も知らない。昨夜、店主がどこへ行っていたのかも。

店のすぐ裏に、巨大な倉庫があることも。その中で、昭和から未来までの遊技機が、最先端のシステムによって宙に浮かびながら保存されていることも。

そして何より――その巨大な倉庫を作った本人が、そこにある遊技機のすべてを把握できているわけではないことも。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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