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🧸ぬいぐるみ・エンドレス・ワールド🌏

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/30 📚 シリーズ: 夏の日の、指輪物語。 📝 1,712文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

誓いの指輪……のはずが、指輪を巡る4つのショート狂想曲。 誓いの指輪――。 それは愛の証である。 夏の日に紡がれる、運命のリングを取り巻く、男女の愛おしい4つのアンソロジー。 (ショートショート4編) 【収録エピソード】 💍舌・アンダー・ザ・トレジャー⛏️ 🎋愛・ハート・オン・ファイア🔥 🧸ぬいぐるみ・エンドレス・ワールド🌏 🎆爆音・イン・ザ・ダーク🌊

本文

 夏祭りの熱気が、夜の境内に充満していた。

 ソースの焦げる香ばしい匂い。

 金魚すくいの水音。

 色とりどりの提灯が揺れる参道を、私は彼と並んで歩いていた。

「あ、射的だ。懐かしいな」

 彼が足を止めた。

 屋台の棚には、お菓子や小さな玩具がずらりと並んでいる。

「俺、昔から射的は得意なんだよ」

 自信満々に胸を張る彼を見て、私は少し可笑しくなって棚を指さした。

「じゃあ、あれが欲しい。あの小さいぬいぐるみ」

 棚の隅で、ちょこんと座っている手のひらサイズのペンギンのぬいぐるみ。

「もちろん。……じゃあ、取ったら結婚しよう」

「えっ……?」

 あまりの唐突さに私が目を丸くすると、彼はポケットから小さなパカッと開く箱を取り出した。

 中には、夜店の大衆的な光の中でも確かに主張するように輝く、本物のダイヤモンドの指輪。

「取れたら、この指輪をはめて欲しい」

「嬉しい……!」

 こんなところでプロポーズされるなんて思いもしなかったけれど――。

 このお祭りの浮かれた空気。

 彼の少し照れた笑顔が合わさって――。

 これはこれで一生の思い出になるかもしれない。

 私は胸を躍らせながら、彼が木製の銃を構える姿を見つめた。

 店主からコルク弾を受け取り、彼は真剣な眼差しでペンギンに照準を合わせる。

『―― さあ始まった運命の一戦! 彼女の愛と指輪を賭けた第一発! 狙うはあのペンギンだーっ!』

 バンッ!

『マトハズーレ!』

 バンッ!

『マトハズーレ!』

 バンッ!

『マトハズーレ!!』

「……おかしいな」

 彼は首を傾げ、銃をトントンと叩いた。

(……うん、まあ、最初の一発は調子悪かったのかな?)

 私は引きつった笑顔で見守る。

 バンッ!

『マトハズーレ!』

 バンッ!

『マトハズーレ!』

 バンッ!

『カスーる!』

『うごかーず!』

 バンッ!

『カスらーず!!』

 バンッ!

『マトハズーレ!!』

 バンッ!

『カスらーず!!』

 一向に当たる気配がない。

 ペンギンは微動だにせず、まるで「お前に我が撃てるか」とでも言いたげな顔でこちらを見つめている。

 ……嫌な予感がしてきた。

「もう一回! 店主、追加で!」

 彼は千円札を叩きつけた。目の色が明らかに変わり始めている。

 バンッ!

『マトハズーレ!』

 バンッ!

『アタール!』

 ……カツン。

『数ミリうごーく!』

 バンッ!

『カワラーズ!!』

 弾は確かに当たった。

 だが、ペンギンはその重厚な土台ゆえに、数ミリ揺れただけで平然と居座っている。

 彼の目が、本気だった。

 もう、そこにはプロポーズの余韻を楽しんでいた優しい彼の姿はない。

 目の前の敵を倒すことしか頭にない、戦士の目だ。

 彼はもう、私のいる世界にはいなかった。

 バンッ!

『マトハズーレ!』

 バンッ!

『アタール!』

 グラリ、とペンギンが傾く。

「行ったか!?」

 しかし次の瞬間、ねじり鉢巻きをした店主がサッと手を伸ばし、落ちかけていたペンギンを元の位置に綺麗にセットし直した。

『店主モドース!!』

「ああっ!? 今の落ちたでしょ!?」

「いやお客さん、完全に落ち切らなきゃダメよ」

 焦りと怒りで彼の手元が狂い始める。

 バンッ!

『マトハズーレ!』

 カスッ!

『ジャグール! コルク地面にオチーる!』

 焦るあまり、彼は銃にコルクを詰めるのが甘かった。

「くそっ!」

 バンッ!

『マトハズーレ! 』

「くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ!」

 ドンッ!

『未発射のコルクぶちマケーる!!』

 机を叩いた反動で、残りのコルク弾が虚空へ飛び散っていく。

 無惨な静寂が、射的屋の前に訪れた――。

 彼は肩で息をし、青ざめた顔で銃を握りしめたまま、微動だにしないペンギンを睨みつけている。

 手元にはもう弾はない。

 私は声をかけられなかった。

 指輪の箱は、彼のポケットの中で虚しく眠っている。

 すると、今まで憐れんだ目で見ていた店主が、黙って新しいコルクを目の前に補充する。

 そして、パカリ、と静かに、追加の新しいコルクの箱を開けた。

 無表情の店主の目が、暗闇の中で妖しく光る。

 彼は呼応するように、ポケットから札束を取り出した。

『まだまだ、今宵の一戦は続いていくようです!――』

 ―― 彼は、どこに行ってしまうのだろう。

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影灯レン

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