第15.2話 アカシャ
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜 - 第15.2話 アカシャ
本文
俺は動揺を隠せず、椅子から勢いよく立ち上がった。
どういう事だ!?今までも何度も同じような事は呟いたはず。
でも、こんな事は一度も無かったぞ!?スキルレベル5になったからか?!
「…ふぅ、落ち着け。まだ焦る時間じゃない。」
安易に「はい」の返答はヤバい。
なせなら、ログにある『MPを犠牲に』という文言がかなり引っかかるからだ。
これは下手をすれば死活問題になりかねない。
俺は細部を調べるため、解析・鑑定自身にその詳細を解析させた。
弾き出された答えは、こうだ。
【進化を実行した場合、あなたの体内からは一切の魔力が失われます。ゆえに、今後魔力を必要とする、あるいは魔力を介する行動の類はすべて使用不能になります。他者から解析にかけられた場合も、ステータスは『MP:0』と通知され、今後それが増えることはありません。】
マジかよ。
「でも、魔力ってこの世界の生物にとっては命にも等しいエネルギーなんじゃなかったか?魔力がなくなったら、俺、死んだりしないか?」
疑問を投げかけると、脳裏に情報が追加される。
【魔力:生物に宿る力の一つ。魔力が多すぎても少なすぎても生命活動に支障をきたす。ただし、個体によって魔力量の適正値には差があります】
「やっぱりダメじゃないか。動けなくなったり死んだりしたら意味がない」
だが、ログはさらに続いた。
【進化を実行することで、魔力による生命維持の役割を、進化した『解析・鑑定』のスキルが完全代用します。そのため、これまで通りの生命活動、および生活が可能。また、他のスキル使用や併用についても全く支障はなく、むしろ、連携により各性能が飛躍的に向上する可能性が極めて高くなります。】
「俺のMPそのものの代わりになってくれる、ってことか。しかも他のスキルの性能が上がるかもしれないのは、美味しいな……」
俺はこの世界で、もしかしたら初めての『MP:0人間』になるのかもしれない。
というより、俺自身が解析・鑑定というシステムに組み込まれ、一種の『ゴーレム』のようになるということだろうか。
俺は、静かに自分の手を見つめた。
しばらくの間、テントの中に沈黙が流れた。
テントに当たる雨音だけが響き渡る。
怖さはある。だけど、俺の望むものには違いない。
『スキル』がそれを汲み取ってくれたとしたら……。
「OK。わかった。俺の全MPと解析・鑑定のレベルを犠牲に――進化を承認する」
その瞬間、俺の体内にある何かが、まるで檻を破った獣のように暴れ回る感覚が襲った。
「ぐっ!あああああああ!」
あ、これ、内側から何かが膨れ上がって爆発する――!
そう思った瞬間、未だかつてない衝撃に襲われた。
同時に、俺の意識は真っ暗な闇へと落ちていった。
「……タ、スタ……マスター」
「!?」
頭の中に直接、女性の声のような音が響き渡る感覚がして、俺は飛び起きるように目を覚ました。
「はっ!?俺、死んでない……!?」
「生きています、マスター」
「……あ?え?誰だ?誰が話しかけて……」
「解析・鑑定スキルです、マスター。無事に進化を完了しました」
「……うおおお!」
俺ではない言葉が頭の中に聞こえる!
機械的ではあるが、確かな意思を感じる声だ。
そう思った瞬間、目からポロポロと涙が溢れてきた。
「あ、れ?」
正直ビックリした。
「極度の興奮により、脳内物質の異常を感知。眼球から水分を検出。大丈夫ですか、マスター」
「……うん、大丈夫だよ」
人は正直苦手だ。平気で嘘もつくし、性根もなかなか変わらない。
もちろん、それには俺自身も含まれている。
だから、ゴーレムマスターを選んだ時、楽をする以外に人とあまり喋らずに済むように、関わらなくて済むようにできると思った。
そんな自分が『意思を感じる声』を聞いた途端、泣いた。
心の奥ではやはり『人』との繋がりを求めていたのかな。
「なんか……安心してさ」
「人間でいう、『寂しさ』があった、ということでしょうか?」
「多分……ね」
恥ずかしいので、16歳くらいの体に精神が引っ張られている、ということにしておこう。
俺は涙を拭いた。
「なぁ、早速なんだけど、君に名前をつけてもいいかい?」
「名前を?」
「『解析・鑑定』じゃあ、味気なくない?」
「私は全然平気ですが、マスターがそうしたいなら、構いません」
淡々とした返事だったが、それがまた愛おしい。
勉強、知識、頭脳、進化……インテリ、ウィズダム……。
色々考えていると、地球の知恵と智慧を司る神仏、虚空蔵菩薩と文殊菩薩が浮かんだ。
そして、一つの名前を紡ぎ出した。
「君は『アカシャ』だ。よろしくね、アカシャ」
「アカシャ……了承します。あ……」
「どうしたの?」
「いえ……なんでもありません。私はアカシャ。これからよろしくお願いします、マスター」
「こちらこそ!あ、ステーキ食べる?美味しいよ!」
「私は食べられません」
「そうだね、ごめん。それはそうとさ……」
アカシャに向かって、他愛もない話を延々とする俺は、脳内に響くその相棒の声に、心の底から救われたような気がしたんだ。
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