第17.1話 畑作り、アゲイン
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜 - 第17.1話 畑作り、アゲイン
本文
解析鑑定のスキルが『アカシャ』に進化してから、1週間ほどが経った。
俺はといえば、今だに用もないのにアカシャに話しかけている。
「なぁアカシャ、今日の俺の髪型、昨日よりちょっとイケメン度上がってない?」
「マスターの毛髪量および配置に統計的な変化は見られません。イケメン度上昇率−50%」
「減ってる!辛辣!」
こんな冷たい答えが返ってこようが、こんな森で2ヶ月以上も孤独だったんだ。
話し相手がいるだけで天国だ。
ん?そういえば
「アカシャには進化する前の記憶とかってあるの?」
「いえ、個体としての記憶はありません。ただし、進化前に使用された時のログ情報は完全に残されています」
「そうなんだ。」
…まさか、ゴーレムマスターの初めての起動記録とかないだろうな!?
「…あのさ、アカシャ、俺が初めてゴーレムマスターを使った時の…」
『世界を創りし大地を紡ぐ理よ! 万物の神が織りなす衣を脱ぎ捨て、我が覇道の盾となれ! 今ここに顕現せよ、ロック・ゴーレム!』
「うわああああああ!」
俺は恥ずか死んだ。
そんな雑談をしながら、テントの前の広場を歩く。
ふとアカシャが
「マスター、なぜこの辺り一帯の土はこれほどフカフカしているのですか?」
「あ、これね。スキル検証を行うためにこの範囲の土を使って、一気に2,800体ものゴーレムを作ったんだ。大穴が空いた部分を元に戻したら、耕されたみたいになったんだよね。」
「なるほど」
「その後にスタレーニの畑も作ったんだけど、見事に失敗しちゃってさ」
「…今なら畑を作れると思いますが、どうしますか?」
「えっ、本当に!?」
「はい。」
思わぬ提案に、俺は飛び上がって喜んだ。
さっそくアカシャの指示を受けながら、畑作りを再開するためのマッド・ゴーレムを3体生み出した。
「これより私が命令の構築と、リアルタイムの挙動調整を行います」
「おお、頼むよ。」
ゴーレムへの命令のプログラミングは、すべてアカシャが裏で組んでくれる。
俺の精神的負担を考慮しつつ、状況に合わせてリアルタイムで動きを最適化してくれるので、めちゃくちゃ楽だ。
ちなみに、今朝俺にコーヒーを入れてくれたバリスタ風のゴーレムも、アカシャのおかげで誕生したものだ。
うん、やっぱりあの時、魔力を捨ててでもアカシャをアップグレードさせて大正解だったな!
俺は心底、自分の選択に満足していた。
ゴーレムたちは無駄のない動きで、あっという間に綺麗な畝を作り上げていく。
「よし、それじゃあ、スタレーニの葉を使って株分けだ!」
意気揚々とインベントリを開いたが、すぐに手が止まった。
「あ、あれ……? スタレーニが無い。もしかして、朝食のサラダで最後だった?」
「はい。マスターのインベントリ内のスタレーニ残数は0です」
「マジかぁ……。じゃあ、スタレーニを探しに行くとするかぁ」
俺は気合を入れ直し、探索用のゴーレムを作り出そうとした。
最近はゴーレムの造形作成もアカシャに手伝ってもらえるようになったため、マッド・ゴーレムでかなり格好良いものが作れるのだ。
「よし、今日は西洋の甲冑みたいな、リビングアーマーチックなゴーレムにしてっと……」
「マスター、ご本人で行くことを強く推奨します」
アカシャの突然のストップに、思わずピクっと手を止める。
確かに、アカシャにアップグレードしてからというもの、身の回りのことはすべてゴーレムにやらせてばかり。
俺自身が外に出て動くことは、ほぼ無くなっていた。
アップグレードによって解放された恩恵の一つに、アカシャとゴーレムマスターの『スキル共有』がある。
早い話、アカシャ自体がゴーレムマスターの力を行使できるのだ。
最終的な権限は俺にあるので、俺の許可を求めないと発動はできない仕様らしいが、そのおかげで『自律制御』のスキルを存分に生かした自動化生活が実現していた。
その分、俺の精神力もそこそこ持っていかれるけれど、レベルも上がっているし苦じゃない。
そんなわけだから、今の俺は、全ての作業をゴーレム――いや、アカシャに丸投げした引きこもり生活を送っている。
そもそも、俺が異世界で目指した理想のぐうたら生活が、今まさに手に入っていると言っても過言ではないのに!
「なん、だと!?」
「マスターの健康維持のため、そして万が一、何らかの要因でスキルが使用不能になる状況に陥った際でも、生存できるようにマスター自身の身体能力と戦闘技術を向上させるためです」
うあ、ド正論。
「ひどい…あなた無しでは生活できない身体にしておいて、そんな事いうの!?」
俺がわざとふざけて口を尖らせながらいい返すと、アカシャは淡々とした声で恐ろしいことを告げてきた。
「これ以上拒否される場合、私が命令を組み込んだバリスタ・ゴーレムに対し、毎朝マスターのコーヒーをただの焦げた豆汁にするよう設定を変更します」
「喜んで行かせて頂きます!」
美味しいコーヒーの権利を奪われるのだけは勘弁だ!
俺は勢いよく席を立ち、ビシッと敬礼を決めてテントを飛び出した。
スタレーニが採取できるポイントまでは、大岩の、ある面を背に下に行った方角、徒歩で1時間ほどかかる。
大岩から半径5kmの範囲であれば今の所魔物は対処できるので、一人で歩いていても特に問題なく進むことができた。
「お、これ使えそうだな」
歩いている道中、目についた謎の草を適当に採取していく。
ちなみに採取する際は念の為、マッド・ゴーレムで行うので、直接毒草には触れる心配はない。これ大事。
もっとも、採取した草を歩きながらアカシャに鑑定してもらうと――。
「マスター、おめでとうございます。今回採取した草も、漏れなく毒草です」
「だと思ったよ。この森、まともな植物少なすぎない?」
「ちなみに、現在インベントリにある毒草の量を計算すると、適切に抽出すれば、大国を3回滅ぼせます」
「あ、そう、なんだ…」
「いくら暇だからって、採り過ぎです。」
「うーん、そんな危険物がそこら中に自生しているこの森って、一体どうなってんだ……」
自分がいる森が恐ろしい魔境であることを再認識する。
ちなみに俺のインベントリの容量は、今や61,000m3にまで膨れ上がっているらしい。
どうやら俺のレベル分だけ、空間が乗算で広がっているようだ。
これなら国を3回滅ぼす毒草だろうが何だろうが、いくらでも収納できてしまう。
うん、珍しいからって採るのもうよそう…。
そんな事を考えているうちに、目的の場所近くにきた。
地面にはミニゴーレムがその方向に顔を向けている。
「あそこを曲がれば、もうすぐ目的地かな」
そう呟いた瞬間、俺の『危険察知』が反応した。
間髪入れず、頭の中にアカシャのアナウンスが響く。
「マスターから見て3時の方向、距離約80m。過去の戦闘データから、バイオレットホーン・ラビットと推測されます」
「了解」
俺は即座に『気配隠蔽』と『認識阻害』を同時発動した。
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