第18.1話 スタレーニとスパルタ戦闘訓練
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あらすじ
ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜 - 第18.1話 スタレーニとスパルタ戦闘訓練
本文
アカシャの言った通り、わずか3日目でスタレーニの瑞々しい緑の芽が土を割って顔を出した。
「出た……! 出たよアカシャ! 見てみろよこの可愛い芽を!」
俺は畑の前にしゃがみ込み、目をキラキラと輝かせながら歓喜の声を上げた。
一度失敗しているから、喜びもひとしおだ。
俺は思わず、身を乗り出して土からひょっこりと覗く小さな双葉に向かって両手を広げた。
「よしよし、可愛いスタレーニちゃん〜。お水でちゅよ〜、たくさん飲んで大きくなってね〜」
「……マスター。重度の親バカ的バグが見られます。極めて不快です」
「うるさいやい! 初めて育てた野菜の芽が出たんだぞ!? これくらい可愛がって当然だろ!」
「マスターの精神安定および観察精度の向上に寄与する可能性があるため、容認しますが、赤ちゃん言葉の音圧は30デシベル以下に抑えることを推奨します」
「なんだよそれ」
アカシャの呆れたような、それでいてどこか淡々とした物言いに苦笑しつつも、俺は丁寧に水をやり続けた。
スタレーニが順調に育つまでの間、俺は畑の管理をゴーレムに任せ、アカシャの厳格な指導のもとで魔物討伐とスキルの検証に明け暮れた。
特に重点を置いたのは、新しく解放されたゴーレムマスターの派生スキルたちだ。
『スキル共有』
『スケーリング』
『インターセプト』
『アーマード』。
あまり使いこなせていない、これら4つのスキルをいかにシームレスに掛け合わせるか、実戦を繰り返しながら体に叩き込んでいった。
――そして今、俺の目の前に、これまでに見たことのない未知の魔物が立ちはだかっていた。
「……こいつ、初めて見るタイプだな」
「個体識別名:サラマンダー・エイプ。過去のログにデータは存在しません」
目の前にいるのは、燃えるような赤毛に覆われた大猿だった。
ぱっと見の体長は5m以上あり、見上げるほどの巨体だ。
名前からしてなんとなく火を使うのだろうということは容易に予想がつく。
目は爬虫類のように妖しく濁っており、本能的に「こいつとは絶対に分かり合えない」と思わせる邪悪な光を宿している。
「なぁアカシャ、こいつの弱点とか特効のある属性とかは? 」
「今回は名称のみの開示とします。」
「はぁ!? なんでだよ! 教えてくれたっていいじゃんか!」
「未知の敵に対し、限られた情報から推測し、自身の戦術を構築する訓練です。マスターの生存率向上のため、甘やかしは厳禁と判断しました」
「チェッ、相変わらずスパルタだなぁ……まあ、危険察知はそこまで強くないからいいけど…」
俺がブツブツと言っていると、サラマンダー・エイプが動きを見せた。
俺を見た瞬間、ニタニタと品性のない笑みを浮かべると、太い指先で鼻をほじり、そのゴミをこちらへ向かって弾いてみせた。
そして、顎をしゃくりながら、左手の指をクイクイと動かして「かかってこいよ」と挑発してきたのだ。
完全に俺を雑魚扱いしている。
手応えのない、いいおもちゃを見つけたといった感じだ。
こいつ…かなり知能が高いのかな。
魔物に煽られるのは初めてだ。
「……随分となめられたもんだな。じゃあ、お言葉に甘えて先制攻撃といきますか」
俺は不敵に笑い、『思考加速』を発動した。
引き延ばされた時間の中で、俺は『アーマード』と『スケーリング』を同時に選択し、大猿の目の前の空間に仕掛けを施した。
狙うは、局所的な「水蒸気爆発」だ。
原理は単純だ。
まずベースとなる『ウォーター・ゴーレム』を生成し、その周囲を包み込むように『アーマード』で『エア・ゴーレム(空気の人形)』を纏わせる。
そして、外殻となるエア・ゴーレムを『スケーリング』によって限界まで圧縮し、内部へ猛烈な圧力をかける。
密閉された空間内で圧力が上がれば、一瞬で水の温度は100℃を遥かに超えて数百℃に達する。
その状態で、外殻のエア・ゴーレムを一瞬で解放してやるのだ。
超高圧・超高温の水が一気に大気圧へと解放された瞬間、ウォーター・ゴーレムは爆発的に気化し、その体積は約1,700倍へと膨張する。
要はディーゼルエンジンの機構、断熱圧縮のそれだ。
俺はこれを、掌サイズのミニゴーレムで実行した。
大猿の鼻先に配置された極小の水分と空気の塊が、次の瞬間――。
――ボォン!!!!
膨大な熱量を含んだ白い水蒸気が、爆音と共にサラマンダー・エイプの顔面を直撃した。
「ギャアァァァッ!」
激しい水蒸気爆発の衝撃波に吹き飛ばされ、大猿は巨体を大きくのけぞらせる。
悲痛な叫び声を上げながら、両手で顔を覆った。
やがて手が離れたその顔面は、超高熱の水蒸気によって無残に焼けただれていた。
しかも、至近距離での爆発による衝撃波で脳を激しく揺らされたらしく、5mを超える巨体が足元からフラフラと千鳥足になっている。
粉塵爆発でも良かったんだけど、多分名前からして火炎耐性とか持ってそうだし。
今のは『ハイドロ・バースト』、言わば水属性の攻撃だから、さすがに効いたみたいだな。
「男前になったじゃないの」
ニヤつく俺の視線の先で、サラマンダー・エイプの目が完全に血走った。
「ゴルァァァァッ!!」
鼓膜が裂けんばかりの咆哮を上げ、激昂した大猿の体毛が一気に本物の激しい炎へと変化する。
周囲の空気が陽炎のように揺らぎ、口からも激しい火炎を吹き出しながら、怒り狂ってこちらへと突撃してきた。
ただ走っているだけだというのに、奴が踏みしめた地面の土が一瞬で赤黒い溶岩へと融解していく。
とんでもない熱量だ。
「うわっ! あんなの生身で喰らったら一瞬で溶けるぞ!」
迫り来る炎の壁に冷や汗が流れるが、頭は冷徹なまでに冴え渡っていた。
あれだけ熱いなら、逆に水を置いておけば勝手に突っ込んできて自滅するんじゃないか?
俺は即座に、突進してくるサラマンダー・エイプの進行線上に、数十体もの『ウォーター・ゴーレム』を生成した。
サラマンダー・エイプは一瞬ぎょっとした顔をしたが、すぐに『バカめ、そんな水、俺の炎で一瞬で蒸発させて踏み潰してやる!』とでも言いたげな邪悪な笑みを浮かべた。
そして、奴の放つ圧倒的な熱源と、俺の生成した大量の水が、真っ正面から衝突した。
――ズドガアァァァン!!!!
「あ、やっべ!」
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