第18.2話 スタレーニとスパルタ戦闘訓練の表紙画像

第18.2話 スタレーニとスパルタ戦闘訓練

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

あらすじ

ゴーレムの正しい作り方 〜俺のゴーレム、絶対おかしいと言われるんですが、なにか?〜 - 第18.2話 スタレーニとスパルタ戦闘訓練

本文

その瞬間、先ほどとは比較にならない規模の超巨大水蒸気爆発が発生した。

辺り一面が真っ白な水蒸気と、猛烈な衝撃波によって完全に視界を奪われる。

ドミノ倒しのように、周囲の鋼鉄のように硬い巨木たちが根こそぎ吹き飛ばされ、激しい地響きが鼓膜を震わせた。

やがて、もうもうと立ち込める土埃と蒸気がゆっくりと晴れていく。

その中心には、頑強な一体の『マッド・ゴーレム』が佇んでいた。

爆発が起きた瞬間、ゴーレムマスターのスキル使用許可を得たアカシャが即座に動いていたのだ。

衝撃波のエネルギーを分散して耐えるため、マッド・ゴーレムを何重もの列として緊急展開。

さらに保険として、俺の身体の表面にも直接マッド・ゴーレムを『アーマード』として纏わせ、衝撃を完全に遮断していた。

もちろん『インターセプト』でもう一体、カチカチのマッド・ゴーレムも目の前にいた。

「ふぅ……助かった! サンキュー、アカシャ」

「無事で何よりです、マスター」

ひどい有り様になった周囲を見渡す。

緑豊かだった森の一部が、完全にクレーターのようになって吹き飛んでいた。

我ながら、ちょっとした環境破壊をしてしまったと小さな罪悪感が胸をよぎる。

爆発の爆心地から視線を巡らせると、およそ50mほど離れた地面に、ズタボロになって吹き飛んでいるサラマンダー・エイプの姿が見つかった。

赤毛は焼け焦げ、ただれた皮膚のあちこちから血を流しているが、その胸はまだ微かに上下している。

「……信じられないタフさだな。まだ息があるのか」

俺はゆっくりと歩み寄り、大猿の前に立った。

息も絶え絶えにこちらを睨みつける魔物を見下ろし、俺の心の中に迷いが生じた。

『ナイトロ・ゴーレム』を使って一瞬で窒息死させる時は、なぜかそこまで罪悪感を感じない。

しかし、こうして目の前で今にも死にそうに苦しんでいる相手に対して、自らの手で直接とどめを刺すとなると、どうしても胸の奥がチクリと痛む…。

矛盾しているとは思うが、前世の平和な日本人だった頃の倫理観が顔を出す。

「マスター、その偽善に近い優しさは、この弱肉強食の世界においては最大の弱点となり得ます。速やかにとどめを刺してください」

思索を見透かしたように、アカシャの冷徹な声が響いた。

「…」

「このまま放置し、苦痛を引き延ばすことこそが残酷だと愚考します。マスターが手を下さずとも、この個体は間もなく死亡します。ならば…」

「……そうだな。分かってるよ」

アカシャの合理的な言葉に納得し、俺は小さく息を吐いた。

苦しませないのがせめてもの情け。

聞いた事の有る言葉だが、実際は「自分にも情けをかける」為なんだと身にしみてわかった。

「罪悪感を和らげる行為、か」

俺は大猿の顔の近くに『ナイトロ・ゴーレム』を生成し、一瞬で酸素を奪い去った。

サラマンダー・エイプは暴れることもなく、静かに意識を失い、そのまま絶命した。

その瞬間、身体の中にすうっと心地よい浮遊感が染み渡る。

レベルアップのサインだ。

少しだけ、やるせない気分になった。

その後、拠点へと続く帰路の途中、アカシャの脳内反省会が始まった。

「今回の戦闘に対する私の評価は、30点です」

「えぇーっ!? 低すぎない!? あんなデカいの無傷で倒したんだぞ?」

「『ハイドロ・バースト』の着眼点自体は本当に素晴らしいものでした。しかし、マイナス点が多すぎます」

アカシャの声は容赦なく俺の落ち度を列挙していく。

「第一に、相手と同レベルの挑発に乗り、わざわざ試すような行動をとったこと。第二に、後半の大規模な水蒸気爆発において、その威力の予測と自身への影響を正確に判断できていなかったこと。私が介入しなければ、マスター自身も衝撃波で負傷していた可能性があります。」

一呼吸の間を置いて

「そして第三に、最後にとどめを刺す際に生じた無意味な躊躇。これらは実戦において致命傷になり得ます」

「う……分かってはいるんだけどさ。でも、理解するのと納得するというのは別っていうか……」

アカシャがすべて俺の生存のために言ってくれていることは痛いほど分かっていた。

「…うん。次は気をつけるよ」

だから俺はそれ以上反論しなかった。

拠点の大岩に帰り着くと、どっと一気に疲労が押し寄せてきた。

テントの前に置いた椅子に深く腰掛けると、あらかじめ待機していた料理用ゴーレムが、淹れたての温かいコーヒーを差し出してくれた。

「ふぅ……美味い。生き返るわ」

コクのある苦味が五臓六腑に染み渡る。

そんな至福の時間を楽しんでいると、アカシャが不意にステータス画面を脳内に展開した。

「マスター、先ほどの戦闘によるレベルアップに伴い、ゴーレムマスターのスキルレベルが上昇し、新たな派生スキルが発現しました。ステータスを確認してください」

【対象】:篝永灯かがりえいと

【精神年齢】:50歳

【レベル】:73

【職業】:ゴーレム使い

【状態】:正常

◆◇繧ィ繝ゥ繝シ◇◆によって転生させて貰った転生者。

【スキル】

アカシャ:レベル1

インベントリ:レベル4

ゴーレムマスター:レベル6

【ステータス】

HP:795

MP:0

【派生スキル】

危険察知

気配隠蔽

認識阻害

並列思考

思考加速

自律制御

ゴーレム強化

憑依転身

感覚共有

スキル共有

スケーリング

インターセプト

アーマード

シフトチェンジ(新)

オートインテリジェンス(新)

【加護】

◆◇繧ィ繝ゥ繝シ◇◆の加護

「おおっ! 本当だ!レベルも順調に上がってる! それに、新しいスキルが2つも生えてるじゃないか!」

俺はコーヒーカップを片手に、身を乗り出した。

新しいおもちゃを手に入れた子供のように心が躍る。

「アカシャ、この『シフトチェンジ』と『オートインテリジェンス』の詳細を教えてくれ!」

「承知しました。まず『シフトチェンジ』は、配置したゴーレム同士、あるいはゴーレムと指定した対象(マスター自身を含む)の位置を一瞬で入れ替える空間転移系スキルです。ただし、入れ替えられるゴーレムは一体だけ。大きさも今は3mくらいまでです」

なるほど、制限はあるが実質的な瞬間移動か!

「身代わり人形と位置を入れ替えて攻撃を避けるとか、戦術の幅がめちゃくちゃ広がるな」

「次に『オートインテリジェンス』です。これは生成したゴーレムに対し、簡易的な自律型ディープラーニング機能を付与するスキルです。マスターが一度行った作業や命令のプロセスをゴーレム自身に学習させ、高度な作業を自動マクロ化させることが可能となります」

「自動マクロ化! ってことは、畑の細かい水やりとか雑草抜きとか、いちいち細かく命令しなくても、ゴーレムが自分で考えて最適にこなしてくれるってことか! 」

素晴らしい!これぞ、俺が求めていたゴーレムの形!

「よし、休憩はここまでだ! アカシャ、さっそくこの2つのスキルの検証を始めよう!」

「……先ほどあれほど疲弊していたというのに、未知のスキルの検証となると途端に活動的になるのですね。」

アカシャの少し呆れたような声を聞きながら、俺はすぐさまテントの前の広場でゴーレムを呼び出し、2つのスキルの検証に没頭した。

それからさらに数日後。

畑のスタレーニは見違えるほど大きく成長していた。

青々とした立派な葉が何枚も重なり合い、もう明日には収穫しても良いくらいの素晴らしい出来栄えになった。

「明日辺り収穫かな!」

そう思った瞬間。

――ゾクッ!!!

突如として、脳味噌を直接冷たい氷で擦られたかのような、凄まじい『危険察知』の狂騒が頭の中で鳴り響いた。

ジャンル・タグ

, , , , , , , ,

作品統計

👁️ 閲覧数: 0 👍 いいね: 0 📚 本棚登録: 0

作者について

水無月 五色

はじめまして。今書いている『ゴーレムの正しい作り方』が初連載になります。 日々のストレス解消に書いているので、連載は気分次第の所がありますが、なるべく定期で書き続けられればと思っています。 ...

👥 フォロワー: 1人

作者ページを見る