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フリーマーケット(二)

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/19 📚 シリーズ: 明日のラブレター 📝 1,960文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

長編&連作 作品集

本文

フリーマーケット(二)

【十秒の商売】

純は、二つの世界を行き来する二重生活に、少しずつ慣れていった。

向こうの世界へ行けば、そのまま数日過ごすこともある。向こうの市で稼いだ現地通貨があるおかげで、生活費には困らない。

けれどこちらへ戻ってくれば、経過時間はいつも十秒前後。

戻ってきてからは、こちらの世界で普通に何日か過ごす。

一人暮らしの部屋で、家事をしたり、のんびり過ごしたり。特に予定に縛られない日々。

そうしてまた「そろそろ向こうへ行きたいな」と思ったら、手を上げる。

一瞬で向こうの世界へ移動。

再びあちらで数日過ごして、またこちらへ帰還。

このリズムを繰り返すうち、純は自然と、二つの生活を両立させるコツをつかんでいった。

むしろ、決まった仕事もない身としては、これほど都合のいい生活もない。

こちらで過ごす数日の間に、純は向こうで仕入れてきた品物の選別と整理を行う。

「この綺麗なガラス風の器は、どの市に持っていけば一番価値が伝わるかな」

そんな算段を立てる時間すら、純にとっては密かな楽しみに変わっていた。

向こうの世界へ渡るたびに、今日はどの地域の市に出そうかと行き先を決める。

ある日は賑やかなA地区の市。

別の日は少し落ち着いた街並みのB地区の市。

行くたびに違う会場を選び分けているうち、自然といくつかの市の店主たちと顔なじみになっていった。

「よう、また来たな」

「今日はこれ、端っこに置かせてもらえますか」

「ああ、いいぞ。置いてみな」

そんな軽い掛け合いも、純にとっては商人としての第一歩だった。

こちらでは当たり前でも、向こうでは希少。

向こうでは日常品でも、こちらでは物珍しい一品。

同じ物を大量に売りさばくのではなく、「これは向こうなら喜ばれるな」という目利きが肝心だった

目当ての品を探す。

仕入れる。

その日選んだ市の露店に預ける。

売れる。

このシンプルなサイクルを回すことが、純にとっては仕事というより、上質なゲームのようで楽しかった。

---

ミナもまた、同じような生活リズムで商いを続けていた。

一人暮らしの気ままさもあって、向こうで数日過ごし、こちらに戻れば十秒。

戻ってきてからは、こちらでも自分のペースで日々を送る。

そんな合間を縫って、ミナは出品作業を進めていった。

舞台はネットの中。

そしてミナが目をつけたのは、大物ではなく、細工の細かい小物。

向こうの世界にしかない、精巧な作りの装飾品やアクセサリー。

こちらでは見たこともない意匠。

一目見ただけで、価値が分かる人には分かる。

ミナは思い切って、強気の値段をつけてみた。

それでも、次々に「購入しました」の通知が届く。

「え、これもう売れたの?」

思わず声が漏れるミナ。

良い物であれば安売りする必要はない。

珍しさと質の良さが写真と説明文で伝われば、値段は後からついてくる。

いくつか売れれば、また次の逸品を探しに向こうへ行く。見つけては、綺麗に写真を撮り出品して、丁寧に梱包して発送する。

そんな調子で、少しずつ、けれど確実に利益は積み上がっていった。

作業の合間、洗面所で鏡に映る自分をちらっと見ることもあったが、特に気にも留めない。

自分の意識は完全に「私」のままで生活をしているという思い込みがあるため、いちいち自分の顔を凝視することなどなかった。

「よし、今日も順調」

そのくらいの軽い感覚で、素通りしてしまうミナ。

二人とも商売屋育ちだけあって、品物を見る目に自然と磨きがかかる。

そして、二人ともじわじわと、着実に稼ぎを増やしていった。

もっとも、この段階でも二人は、お互いの存在すら知らない。

---

そんなある日、純はさらに一歩踏み込んだルールの検証を始める。

これまでは「持っている物だけが一緒に移動する」と思い込んでいた。

しかし試しに、持たずに触れてみた。

手で触れたまま、世界を越えてみる。

すると、物もちゃんとついてくる。

さらに範囲を広げて試す純。

小物に限らず、触れてさえいれば、大きな物も移動する。

つまり「持つ」ではなく「触れる」がルールの本質らしい。

これが分かった瞬間、少しだけ扱える品の幅が広がった。

とはいえ、頻繁に出す物ではない。

大物は、さすがに毎回は持ち歩けない。

「まあ、いざという時の手段だな」

純はそのくらいの温度感で、この発見を頭の隅にしまっておいた。

---

ミナもまた、独自に同じ現象に気づいて検証してみたものの、結局は自分の得意な小物路線を貫くことにした。大きな箱を運ぶよりも、手のひらに乗るような美しい逸品の方が写真映えするし、梱包も楽で送料もかからない。

「私はこっちの方が性に合ってる」

ミナはそう独りごちて、また次の掘り出し物出品のために、画面に向かう。

こうして二人は、それぞれの世界とやり方に深くのめり込みながら、まだ見ぬお互いの存在に、少しずつ、けれど確実に近づいていた。

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JJ

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