023、昼下がりの揺らぎ
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
時空のゆがみ:あらゆる人や物を取り出すことができる空間。ある世界との間の空間。 時空の裂け目:ゆがみを使い過ぎて裂け目になった空間。マナが不安定になり危険。修復師が縫い合わせてゆがみになる。ある世界との交わり。 修復師:マナを糸状に操り裂け目を修復する者。修復中は無防備になる。 縫界衛士:無防備な修復師を裂け目の悪意から守る者。修復師1人に対し2人いるのが基本。 この物語は、時空のゆがみと対峙する人々が織りなす群像劇。 そこで繰り広げられるヒューマンドラマをお楽しみください。
本文
— 最初に気づいたのは、守られる側だった —
昼下がりの浜辺は、穏やかだった。
大人たちは作業に散り、海は青く、風は柔らかい。
だからこそ、その違和感は“遊びの延長”みたいに始まった。
「ここ、昨日こんなのあった?」
朱里が足を止める。
時雨は木の枝を振り回していたが、つられて覗き込んだ。
砂浜の端、岩場に近い場所。
空気が、少しだけ揺れている。
熱でゆらぐ空気に似ている。
でも違う。
向こう側の景色が、ほんのわずかに歪んで見える。
「水の上みたい」
時雨が近づこうとする。
「だめ」
朱里が袖を掴んだ。
彼女は少しおませさんだった。
意味はわからなくても、「これは遊びじゃない」と感じ取っていた。
「見ちゃだめなやつかも」
でも、好奇心は止まらない。
時雨は小石を拾って投げた。
石は歪みに触れた瞬間、音もなく消えた。
二人の時間が止まる。
「……え?」
次の瞬間。
ふっと、冷たい風が吹いた。
さっきまで夏の匂いだったのに、一瞬だけ、知らない場所の空気が混じる。
乾いた土の匂い。
鉄みたいな匂い。
そして。
歪みの中で、何かが“動いた”。
人影。
でも形が定まらない。
水面の向こうに立つ誰かのように、揺らいでいる。
「……帰ろう」
朱里の声は小さい。
時雨は、初めて遊びの顔をやめた。
二人は走る。
村へ。
砂を蹴って、息を切らして、転びそうになりながら。
その頃。
源三郎は巡回の途中、足を止めていた。
潮の音に混じって、わずかに聞こえる“別の風”の音。
同じ異変に、違う場所で気づいている。
村はまだ、穏やかだ。
洗濯物が揺れ、干し魚が並び、煙が上がる。
だがその外側で、世界の縁が、わずかにめくれ始めていた。
そして最初にそれを見たのは、まだ剣も持たない、守られるはずの子どもたちだった。
後書き
子どもたちが異変を見つけましたね。さて、彼らはどうするかな?
作品統計
📚 本を探すなら「よみどき」(あいぺんが運営する本の発見サイト)
130万冊を超えるコミック・小説・書籍の順位と値段を毎日みて、いま読むものを決められます。