024、外の意思
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
時空のゆがみ:あらゆる人や物を取り出すことができる空間。ある世界との間の空間。 時空の裂け目:ゆがみを使い過ぎて裂け目になった空間。マナが不安定になり危険。修復師が縫い合わせてゆがみになる。ある世界との交わり。 修復師:マナを糸状に操り裂け目を修復する者。修復中は無防備になる。 縫界衛士:無防備な修復師を裂け目の悪意から守る者。修復師1人に対し2人いるのが基本。 この物語は、時空のゆがみと対峙する人々が織りなす群像劇。 そこで繰り広げられるヒューマンドラマをお楽しみください。
本文
村は、いつも通りだった。
干し網が揺れ、木槌の音が響き、笑い声が風に乗る。
だから、異変は音を立てなかった。
「ただいまー!!」
時雨の声は半分泣き声だった。
寄り合い所の前で月代仁香が振り向く。
「どうしたの?」
息が切れ、言葉が出ない。
代わりに朱里が言う。
「海のとこ、空気が変なの。石、消えた」
その言葉で、空気が一段冷える。
近くにいた神楽次郎の手が止まる。
木炭が地面に落ちた。
「どこ?」
「岩の近く」
その時、源三郎がちょうど戻ってくる。
「……俺も感じた」
彼の声は低い。
「風の音が違った」
大人たちの顔つきが変わる。
これは勘ではない。経験が告げている。
歪みだ。
だが、いつもの歪みと違う。
海岸へ向かう大人たち。
敬三、花子、源三郎、次郎。
朱里と時雨は止められるが、遠くから見ている。
歪みはそこにあった。
陽炎のように揺れ、だがその中心だけ、光を吸っている。
「大きくなってるな…」
敬三が低く言う。
その瞬間。
歪みの奥で、“何か”がこちらを向いた。
輪郭はない。
目もない。
だが、“見られた” と全員が理解した。
次の瞬間、空気がひび割れるような音。
歪みの端から、何か小さなものが転がり出た。
石の破片。
いや、違う。
刃の欠片だった。
錆びている。
形状は、この土地のものではない。
村の空気が変わる。
これは自然現象ではない。
向こう側には、文明がある。
そして。
こちらを見ている。
遠くで、美恵子が泣き出す。
誰かが抱き上げる。
その泣き声が、村の中心を示す。
守る場所がある。
守るべき命がある。
だからこの揺らぎは、もう無視できない。
昼下がりの穏やかさは終わった。
村に初めて、
“外の意思” が触れたのだった。
後書き
異変が顔を出しました。外に明確な意思があります。
漁師たちの運命やいかに!?