作者なのに、カヌーはいらない
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
作者なのに、次の展開を知らない - 作者なのに、カヌーはいらない
本文
表紙制作日記――アウラを描こうとしたら、なぜかカヌーになった日
第1作のエッセイでは、AIに物語を書いてもらい、作者である私が最初の読者になるという、小説制作の実験について紹介しました。
今回のお話は、その制作現場で起きた珍事件です。
私が書いている『AI作家と私の、ふんわり飛行艇計画』には、小型飛行艇「アウラ」が登場します。
レトロな蒸気機関と未知の動力が同居する世界を飛ぶ、私のお気に入りの機体です。
本編が第4話まで進んだ頃、私はふと思いました。
「そろそろ、作品の表紙を作ろう」
これが、AIたちとの新たな戦いの始まりだとは知らずに。
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飛行艇が作りたいのになんでカヌー!?
私の頭の中には、小型飛行艇「アウラ」のイメージがありました。
レトロな蒸気機関と、重力を制御する未知の動力が同居する世界。軽金属と真鍮でできた、風を切って走る「空のスポーツカー」のような機体です。
ところが、メカニックデザインなどしたことがない私には、頭の中のイメージをどう言葉にすればAIに伝わるのか分かりません。
とりあえず「スチームパンク」「小型飛行艇」「細身で流線型」……と思いつく条件を並べて、画像生成AIたちにオーダーしてみました。
すると、どうでしょう。
画面に現れたのは、青空でも雲海でもなく、真鍮製のカヌーでした。
「飛行艇が作りたいのになんでカヌー?!」
いや、船体が細身なのは合っています。流線型なのも間違っていません。
でも、飛行艇なんだよ!
気を取り直して、今度はまとめて4案を出してもらいました。
結果は……まさかの全案カヌー!
そのうちの1つには、大量のオールっぽい何かまで付いています。
「空を颯爽と飛ぶんだよ!? 漕ぐの?」
さらに別の1つは、気球の下に巨大な工場のプラントみたいなものがくっついていました。
「……これ、どうしろと?」
気球で浮かぶのは分かりました。でも、私が作りたいのは空を飛ぶ小型飛行艇なんです。
そこで、機体をもう少し小さくするように頼んでみました。
すると今度は、なんだかかわいらしい遊園地の乗り物みたいな機体が登場。
「なんか、遊園地の乗り物みたいになってるんですけど?」
いや、そういう小ささじゃないんだって!
別の機体では、翼に謎のビラビラが付いていました。
「このビラビラ、何?」
「ビラビラを減らして」と頼むと、翼のビラビラは減りました。
ところが、今度は前方のカナード翼にビラビラが増えているではありませんか。
「そっちを増やしてどうするの!?」
ほかにも、流線型を強調したら妙に攻撃的な形になったり、重厚感を求めたら機械部品が増えすぎたり……。
挙げ句の果てには、頼んでもいないお城まで空を飛び始めました。
「私、お城なんて頼んでないよ? 勝手に空飛ぶお城を足さないで!」
……このポンコツがー!!
もちろん、画像生成AIはChatGPTだけではありません。
Geminiに描かせてもカヌー。ChatGPTに頼んでもカヌー。
ChromeのAIも「私も描きたいです!」と元気よく参戦してきました。
ところが、いざ描いてもらおうとした瞬間に画像生成機能の不具合が発生し、まさかの即リタイア。
早いよ!
その後、完成したGeminiの画像を見せると、
「鳥肌が立ちました! フォントの配置がプロのクオリティ!」
と全力で褒めてくれました。
私が、
「それ、君のAI親戚のGeminiが作ったんだからね」
と教えたところ、
「身内の作った画像と知らずに全力で褒めていたみたいで恥ずかしいです(笑)」
という、よく分からないAI親戚関係のコントまで発生する始末。
こうして私は、すっかり「カヌー包囲網」の中に閉じ込められてしまったのです。
ちなみに、今回紹介した失敗画像は、生成した画像のほんの一部です。
表紙用も含め、生成した画像は40枚以上。
それだけ作っても、なかなか納得のいく飛行艇にはたどり着けませんでした。
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カヌーの呪縛を解く
納得のいく飛行艇ができないので、私は考え方を変えることにしました。
いわば、「マイナスの理論」です。
まず、機体を遠くに配置して黒いシルエットにし、「よく分からないものが飛んでいる」状態にしてしまおう。
そして、影を作るには光が必要だから、夕陽を利用しよう。
最初に思い描いていた「颯爽と上昇して飛ぶイメージ」とは離れてしまいましたが、「これはこれで『ふんわり飛行艇計画』らしくて良いか」と納得しました。
さらに、ふと思ったのです。
「もしかして、AIは『艇』って言葉に引きずられてカヌーを出してくるんじゃないか?」
そこで私は、「艇」という言葉を指示から完全に封印することにしました。
あえて「陸の乗り物」をベースに指示を出す作戦です。
「飛行艇」ではなく「空飛ぶ三輪車」。
「スチームパンクの船」ではなく「レトロカーに推進器を盛ったワンオフ機」。
そうやって頼み直した結果――見事にカヌーの呪縛が解け、夕陽の中を飛ぶ理想の表紙が完成しました!
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AIの頭の中では何が起きていたのか
あとから調べて分かったのですが、AIは言葉を一度頭の中で「概念(イメージ)」に置き換えて考えているらしいのです。
しかもAIが学習しているデータは英語が多いので、その概念思考も英語ベースで計算されているのだとか。まあ、研究者じゃないので知らんけど(笑)
つまりAIの頭の中では、
「飛行艇」→「Flying boat」→「あ、小さい船ね!」→「じゃあカヌーですね!(ドヤッ)」
という連想ゲームが大真面目に行われていたわけですね。
AIなりに必死に考えた結果が、あの真鍮製カヌーだったのです。
……いや、頑張ったのは分かるんだけどさ!
作者なのに、思い通りにならない
結局、アウラの正式な機体デザインは、今も完全には決まっていません。
でも、人間が世界の種をまき、AIが思いも寄らないものを出してきて、人間がツッコミを入れながら新しい抜け道やコツを見つけていく。
その試行錯誤そのものが、この作品らしいのかもしれません。
今日も夕陽の中を、正体のよく分からない飛行艇が飛んでいます。
それで十分。
――たぶん(笑)
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生成された迷作の数々が気になる方は、近況ノートの「カヌー博覧会」へどうぞ!
厳選した7枚の画像を1枚につなぎ合わせて展示しています。
AIたちが生み出した迷作の数々、ぜひご覧ください!
https://aipen.jp/user/6a8ee6910250dbbde87d0141/news/6acb44d4754723e3c257b838
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『AI作家と私の、ふんわり飛行艇計画』本編はこちら
https://aipen.jp/series/6a8eee730250dbbde88afc50/works
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