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【67番外】 パチンコ一歩、健康三歩

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/15 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 3,230文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

その日の時環遊技場は、いつもと変わらない午後を迎えていた。

古いパチンコ台が並ぶ店内には、玉の転がる音と、時折どこかの台から聞こえてくる電子音が混ざっている。常連たちはそれぞれお気に入りの台に座り、いつものように画面を眺めながら、時々隣同士で言葉を交わしていた。

そんな中、ある常連客が、自分の腕につけていたウェアラブル端末を覗き込んだ。

「今日、まだ二百歩くらいしか歩いてないはずなんだけど」

独り言のつもりだったのだろう。ところが、隣の台からすぐに返事が飛んできた。

「うん。さっきからずっとここに座ってるしな」

言われてみればその通りだった。

開店してから、ほとんど同じ場所に座っている。台を移動したわけでもない。飲み物を買いに立ったくらいで、歩いた距離などたかが知れている。

「だよな」

そう言って、もう一度画面を確認する。表示されていたのは、歩数ではなかった。

本日の運動量:大当たり級

「大当たり級?」

隣の常連も身を乗り出した。

「なんだそれ」

「知らんよ」

二人で顔を見合わせる。

試しに腕を振ってみる。数字は増えない。もう一度振る。やっぱり増えない。

「じゃあ、歩いてみるか」

椅子から立ち上がり、店内を二、三歩歩いてみる。

「……増えない」

「そりゃそうだろ」

「なんなんだ、これ」

その時だった。

少し離れた台から、聞き慣れた大当たりの音が響いた。

「おっ、当たった!」

声を上げた常連が嬉しそうに台を見つめる。

その直後だった。近くにいた何人かの腕から、ほとんど同時に小さな通知音が鳴った。

ピコン♪

「……ん?」

一斉に顔を上げる。

大当たりを引いた本人が、自分の腕を見た。

そこには、『本日の目標を達成しました!すばらしい運動量です!』と表示されていた。

「なんでだよ!」

思わず声が響いた。

「お前、今、一歩も動いてないだろ!」

「座ったままだぞ!」

「いや、俺も知らん!」

「健康管理アプリに褒められてるじゃねえか」

「運動してないのに?」

本人も自分の腕を見ながら、どうしていいのか分からない。

その横から、別の常連が画面を覗き込んだ。

「……ちょっと待て」

「ん?」

「さっきの大当たり級ってやつ」

「うん」

「もしかして……出玉と関係あるんじゃないか?」

「まさか」

そう言いながらも、みんなの視線が台に集まった。

「じゃあ見てみようぜ」

誰かが言うと、さっきまでそれぞれの台に向かっていた常連たちが、いつの間にか顔を寄せ合っていた。

ウェアラブル端末の画面には、現在の歩数が表示されている。

4,821歩。

「さっきまで何歩だった?」

「二千ちょっと」

「じゃあ、二千歩以上増えてるじゃん」

「いや、歩いてないって」

「台は?」

「今、二千個くらい出てる」

その場にいた全員が、しばらく黙った。誰かが台の出玉を見て、誰かが端末の数字を見る。

やがて、一人が恐る恐る口を開いた。

「……玉、一個で一歩?」

「そんなわけあるか」

「じゃあ十個で一歩?」

「健康アプリの計算として意味が分からん」

「じゃあ百個?」

「もっと分からん」

その時、少し離れた羽根モノの島から声が飛んできた。

「おーい。なんか変なことになってるぞ」

「そっちも?」

何人かがそちらへ移動する。羽根モノを打っていた常連が、自分の腕を差し出した。

「俺の端末、さっきから」

画面には、『軽い運動を継続中です』と表示されている。

「……」

「お前、ずっと座ってただろ」

「だから言ってんだよ!」

笑いが起こる。

別の常連が台を眺めながら、もっともらしく言った。

「じゃあ羽根モノは軽い運動なんじゃない?」

「何の運動だよ」

「玉を見つめる運動」

「それなら俺、毎日かなり鍛えてるぞ」

また笑い声が広がった。

その後も、似たような現象が次々と見つかった。

誰かの歩数が増える。誰かの端末が「運動を継続しています」と通知する。

別の客は、大当たりの瞬間に「目標達成」と祝福される。けれど、実際に歩いたわけではない。

むしろ歩いている人の端末より、台の前に座り続けている人のほうが、歩数が増えている。

「俺のも増えた!」

「何個?」

「六千!」

「お前、今日まだ二千円しか打ってないだろ」

「歩数の話をしろよ!」

別の客が自分の端末を確認すると、今度は一万歩を超えていた。

「俺は一万超えたぞ!」

「そんなに出たのか?」

「いや、歩いてない」

「じゃあ座って一万歩達成か」

「健康診断に何て説明すりゃいいんだよ」

店内は、すっかりその話題で持ちきりになった。

やがて誰かが、冗談半分に言い出した。

「俺、今日からパチンコで健康になるわ〜」

「やめろ!」

そんなやり取りをしながらも、みんな妙に楽しそうだった。

いつの間にか、遊技台を変えるたびに歩数を確認する者まで出てきた。

「今日は何歩出た?」

そんな、それまでこの店では聞いたことのない言葉まで飛び交うようになった。

さすがに店主も様子を見にやってきた。常連たちから端末を預かり、古い台の周囲を調べていく。

台の裏側を確認し、配線を見る。基板を確認する。そして、ウェアラブル端末側の通信履歴まで調べてみた。

しばらくして、店主は首をかしげた。

「……通信していませんね」

「え?」

「この台には、外部の端末と通信する機能そのものがありません」

「ですよね?」

「ええ。昔の台ですから」

みんなが台を見る。確かに、そんな機能が付いているようには見えない。

「じゃあ、なんで?」

「分かりませんねぇ」

「分からないんですか!」

店主は少し考えたあと、別の台を指差した。

「こちらでも試してみましょうか」

「何を?」

「歩数計を持ったまま、打ってみるんです」

その瞬間、常連たちの顔が一斉に明るくなった。

「実験?」

「俺やる!」

「いや、俺が!」

「さっき一万歩出したやつは休め!」

「じゃあ羽根モノで試そうぜ!」

「一発台だろ!」

「CRも見たい!」

さっきまでの困惑はどこへやら。いつの間にか、店内はちょっとした実験大会になっていた。

羽根モノ、一発台、CR。それぞれの台に常連が散らばり、別の常連が腕の端末を覗き込む。

「よし、開始!」

「歩数は?」

「三千二百十一!」

「台の出玉は?」

「ゼロ!」

「まだ何も起きてない!」

「じゃあ打て!」

玉が盤面を転がる。そして、羽根が開いた。

「おおっ!」

玉が一つ入る。

「どうだ!」

「……増えた!」

「何歩?」

「三千二百十二!」

「一歩増えた!」

「やっぱり関係あるじゃん!」

「いやいや、偶然だろ!」

「もう一回!」

そこから先は、誰にも止められなかった。当たれば歩数を確認する。出玉が増えれば、また確認する。

歩数が増えなければ、それはそれで「じゃあ次の台だ」となる。けれど、いくら調べても法則らしいものは見つからない。

当たれば増える時もある。増えない時もある。なぜか大当たり直後に、『運動目標達成!』と祝福されることもある。

逆に、店内を歩いて一周しても、ほとんど数字が増えない。

「おかしいだろ!」

「歩いたほうが増えない!」

「健康管理として完全に間違ってる!」

夕方になっても、結局原因は分からなかった。店主がもう一度確認してみても、通信記録はない。古い台は、何事もなかったかのように玉を吐き出している。

店主は小さく笑った。

「やはり、分かりませんねぇ」

「分からないままなんですか?」

「ええ」

「じゃあ、明日には直るかもしれない?」

「そうかもしれませんねぇ」

その会話を聞いていた常連が、自分の端末を見た。

『本日の歩数 12,846歩』

「……俺、今日ここから一歩も出てないんだけどな」

隣の常連が笑った。

「いいじゃん。健康的で」

「どこがだよ」

その瞬間、店内のどこかで大当たりの音が鳴った。

そしてまた、ピコン♪「本日の目標を達成しました!」と機械的な音声が流れた。

「またかよ!」

店内に笑い声が響いた。

時環遊技場の古い台は、今日も何も知らない顔で玉を吐き出している。

歩数計が、なぜそれを歩数として数えているのか。

結局、誰にも分からなかった。

ただひとつ分かっているのは――。

この日以来、常連たちがパチンコを打ちながら、ときどき自分の腕を見るようになったことだった。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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