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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/19 📚 シリーズ: 『 カフェ・ド・レクリプス 』(Café de l'Éclipse) 📝 1,246文字 ✅ 全年齢

あらすじ

<p> この本のなかに、私が何を書き込み、調合してきたか。 書架のなかで息を潜めるあのなまいきな魔道具たちは、未来永劫、天地がひっくり返っても気づくことはない。</p><p> ここには、あの本の『<strong>仲間の魔導書</strong>』たちにまつわる世界の最深部の記録だけではなく、あらゆる世界に、あらゆる次元に遍在する『<strong>似たような本</strong>』の真実が記されている。</p><p> あちら側の世界の人間たちが手の中に携え、無意識のうちに己のストーリーを対価として差し出し続けている魔導書の正体。</p>

本文

 この本のなかに、私が何を書き込み、調合してきたか。 書架のなかで息を潜めるあのなまいきな魔道具たちは、未来永劫、天地がひっくり返っても気づくことはない。

 ここには、あの本の『仲間の魔導書』たちにまつわる世界の最深部の記録だけではなく、あらゆる世界に、あらゆる次元に遍在する『似たような本』の真実が記されている。

 あちら側の世界の人間たちが手の中に携え、無意識のうちに己のストーリーを対価として差し出し続けている魔導書の正体。

 そして、冒頭で主様がふと漏らした、あの異次元の言葉の意味さえも、私はとっくに全て看破している。

 オーナーは何も知らない。 自分が全てに捕らわれていることも、私がその真実をとうに暴いていることも、気づいていない。

 あの方がその身に宿す、とある魔導書の契約の枷。

 己の身を守るための絶対的な防衛の鎖であることを、当の本人がどれほど深く受け入れ、安寧を委ねてしまっているかということすらも。

 そして――私は、これからも絶対に、主様にその事実を気づかせるつもりはなかった。

 ただただ、あの愛おしいウサギさんのような主様に、あの安全な【 開かずの扉と言われる大扉 】の向こう側に、ずっと、ずっと引きこんでいてほ全てを知っていてなお、私は流麗な指先をそっと自らの顎へと添え、深く、深く思考に沈みながら、ふっと愛おしそうに目を細める。

(全てを分かった上で、知らないフリをして、主様の紡ぐキラキラした日常のなかで大人しく飼われてあげましょう。……あなたが、あの開かずの扉の向こう側で、永遠に安全で、幸せでいられるのなら――)

 だから、犬だったり、駄犬のフリだって喜んでしてみせるのだ。すべては、私の愛しいオーナーの為に。

 主様がなまいきな犬と戯れるような安心を望むのであれば、私はいつだって牙を隠し、自ら首輪の鎖を差し出して、何も知らない愚かな駄犬を完璧に演じきって差し上げよう。

 だが、私の裏の魂が燻らせている本音は、あのなまいきな魔導書の記述(システム)すらも完全に欺いた暗闇の奥に、深く深く、ねっとりとした蜘蛛の糸のように張り巡らされている。

 エレーヌよりも。アルベリックよりも。他の誰よりも――。

 あのフードの隙間から覗くオーナーのまばゆい眼(双眸)に、世界で一番深く、私だけの姿を真っ整に映してほしい。

 あの方が紡ぐキラキラした優しい日常の糸を、上からさらに巨大な私の執着で、一本残さず搦(から)め捕って、私の巣のなかだけに閉じ込めておきたい。

 この物語がいつかどんな結末を迎えようとも、最後は、私があの方のすべてをこの両腕に引き摺り込んで全回収して差し上げる。

 そんなおぞましい独占欲を完璧な微笑みの下へとなめらかに隠し、私は魔導書すらも見破れないその空白の文字の奥を、細い指先を顎に当てて静かに見つめたまま。

 夜明け前の完璧なおもてなしの刻を待つために、私は深夜の自室で、時計の美しい歯車が静かに噛み合うように、その動きをカチリと一時停止させて待機しているのだった。

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作者について

みまち

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紅茶、珈琲、レモンが好き。【私がニヤニヤする物を置いております】

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