【69番台】メダカの灯り
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。
本文
夕方の第9区には、いつもと変わらない光景が広がっていた。
道路の上を配送ドローンが静かに行き交い、建物の壁面にはホログラム広告が浮かんでいる。遠くでは、空中車がゆっくりと高度を変えながら交差点を通過していた。
その上空を、一台の小型ドローンスピーカーが飛んでいた。
『第9区の皆様へお知らせいたします。本日十六時より、気象制御システムの定期調整に伴い、第9区全域で電力供給の切り替えを行います』
街角のホログラム掲示板にも、同じ内容が表示された。
《第9区・電力系統切替のお知らせ》
《予定時間:約三十分》
《切替中は各家庭・各施設の非常用電源へ自動移行します》
『切り替えの際、一時的に照明が暗くなる場合がございます。慌てず、そのままお過ごしください』
空を見上げていた人が、隣の人に言った。
「今日だったっけ?」
「そうらしいよ。天候システムの調整も一緒だって」
「じゃあ、今夜は雨も止まるのかな」
「たぶんね」
それくらいの反応だった。
未来都市では、電力供給が一時的に止まることそのものは、珍しいことではない。各家庭には病院などと同じように非常用電源が備えられていて、系統が切り替われば必要最低限の電力が自動的に確保される。
だから、街は少し暗くなるだけだった。
そして、その「少し暗くなる」予定の中に、時環遊技場も含まれていた。
「まもなく電力供給の切り替えを行います」
店主の声が店内に響く。
「照明が一時的に暗くなりますので、お足元にはお気をつけください」
店内にいた常連客たちは、打っている手を止めることもなく、「はーい」「了解」「非常用電源かあ」などと、それぞれ適当に返事をした。
人間の客だけではない。島の端では、機械の頭をしたロボットが玉を弾いていた。
その隣では、金属製の身体を持つアンドロイドが、盤面をじっと見つめている。
店内では彼らも、ごく普通の常連客だった。
やがて、店内の蛍光灯が一度だけ明滅した。
そして――ぷつん。いつもの明るさが消えた。
一瞬だけ、店内が暗くなる。すぐに非常用電源が立ち上がり、蛍光灯がゆっくりと戻ってきた。
店内全体が、夕暮れのような落ち着いた明るさになった。
「おお……」
誰かが声を漏らした。
すると、店内に別の光がぽつぽつと浮かび上がった。
ロボットの目。アンドロイドの耳元にある小さなインジケーター。胸元の表示ランプ。頭部の小さなステータス表示。
「……」
「……」
機械の客たちが、お互いの姿を見た。
「お前、光ってんな」
「そっちもだろ」
人間の客が振り返った。
「なんか……ロボットのほうが明るくない?」
「言うな」
「ちょっと羨ましい」
「じゃあ頭にランプ付ける?」
「パチンコ屋で?」
「今なら需要あるぞ」
笑いが起こった。
薄暗くなった店内では、いつものパチンコ台のランプも妙に鮮やかに見えた。
赤。緑。黄色。青。古い機械の中で、いくつもの小さな光が浮かんでいる。
「……なんか、綺麗じゃない?」
「うん」
「台のランプ、こんなに明るかったんだな」
「いつもより目立つね」
店主も島の間を歩きながら盤面を眺めた。
「照明が少し落ちるだけで、ずいぶん印象が変わりますね」
そのとき、天井付近を五つの小さな光が横切った。
ホログラムメダカだ。普段から店内を泳いでいる五匹のメダカが、薄暗くなった店内ではいつも以上に目立っている。
銀色の身体が淡く光りながら、すいすいと島の上を泳いでいく。
「おっ」
常連の一人がメダカを見上げた。
「メダカも綺麗だな」
「今日、照明係じゃん」
「いや、あれ普段から照明じゃないだろ」
「でも、今なら台を照らすのに使えるんじゃない?」
一同がメダカを見た。
メダカは何も知らず、すいっと泳いでいく。
「店主さん」
「はい?」
「メダカ、こっちに呼べない?」
「メダカさんを、ですか?」
「そう。俺の台、もうちょっと照らしてほしい」
店主は少し考えてから、腕時計を覗き込んだ。
「では、確認をしてみましょうか」
「そんな機能あるんですか?」
店主は腕時計を操作してみる。すると、一匹のメダカがくるりと方向を変えた。
「おっ!」
客たちが一斉に顔を上げる。メダカはゆっくりと泳ぎ、やがて一台の上で止まった。
盤面に淡い光が落ちる。
「見える!」
「おお、ちょうどいい!」
「店主さん、こっちにも!」
「いや、俺のほうが先!」
「五匹いるんだから一匹ずつでいいだろ!」
「その一匹が来ないんだよ!」
さっきまで静かだった店内が、急に騒がしくなった。
ロボットの客まで両手を広げてメダカを誘導し始める。
「こちらへ」
「いや、そっちは俺の台!」
「私の台のほうが暗い」
「お前、身体そのものが光ってるだろ!」
「それとこれとは別問題だ」
「別問題なのかよ!」
薄暗い店内を、五匹のメダカが自由気ままに泳いでいく。
一匹が羽根モノの上に止まれば、「そこじゃない!」と声が飛ぶ。別の一匹が一発台の盤面を照らせば、「おお! いいぞ!」と歓声が上がる。
そして五匹すべてが、なぜか同じ島の端に集まった。
「なんで全員そっち行くんだよ!」
「人気島じゃん」
「メダカにも人気島が分かるのか?」
「知らん!」
薄暗い店内に、台のランプ、メダカの光、そして人間にはない小さな機械の光が浮かんでいた。なんだか妙に賑やかだった。
店主はカウンターから、その光景を眺めていた。
「……これはこれで、面白いですね」
やがて誰かが言った。
「店主さん、このままやりません?」
「何をです?」
「せっかく暗いんだから」
「昔の遊技場みたいに」
薄暗い店内。小さな台のランプ。その上を泳ぐホログラムメダカ。そして、ところどころでぼんやり光っているロボットやアンドロイドたち。
店主は少しだけ笑った。
「それでは――」
五匹のメダカが、暗い店内をふわりと横切った。
「今夜は、少し趣向を変えて遊んでみましょうか」
こうして、停電の夜の時環遊技場で、妙な遊技会が始まった。
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