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【69番台】メダカの灯り

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/19 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 2,358文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

夕方の第9区には、いつもと変わらない光景が広がっていた。

道路の上を配送ドローンが静かに行き交い、建物の壁面にはホログラム広告が浮かんでいる。遠くでは、空中車がゆっくりと高度を変えながら交差点を通過していた。

その上空を、一台の小型ドローンスピーカーが飛んでいた。

『第9区の皆様へお知らせいたします。本日十六時より、気象制御システムの定期調整に伴い、第9区全域で電力供給の切り替えを行います』

街角のホログラム掲示板にも、同じ内容が表示された。

《第9区・電力系統切替のお知らせ》

《予定時間:約三十分》

《切替中は各家庭・各施設の非常用電源へ自動移行します》

『切り替えの際、一時的に照明が暗くなる場合がございます。慌てず、そのままお過ごしください』

空を見上げていた人が、隣の人に言った。

「今日だったっけ?」

「そうらしいよ。天候システムの調整も一緒だって」

「じゃあ、今夜は雨も止まるのかな」

「たぶんね」

それくらいの反応だった。

未来都市では、電力供給が一時的に止まることそのものは、珍しいことではない。各家庭には病院などと同じように非常用電源が備えられていて、系統が切り替われば必要最低限の電力が自動的に確保される。

だから、街は少し暗くなるだけだった。

そして、その「少し暗くなる」予定の中に、時環遊技場も含まれていた。

「まもなく電力供給の切り替えを行います」

店主の声が店内に響く。

「照明が一時的に暗くなりますので、お足元にはお気をつけください」

店内にいた常連客たちは、打っている手を止めることもなく、「はーい」「了解」「非常用電源かあ」などと、それぞれ適当に返事をした。

人間の客だけではない。島の端では、機械の頭をしたロボットが玉を弾いていた。

その隣では、金属製の身体を持つアンドロイドが、盤面をじっと見つめている。

店内では彼らも、ごく普通の常連客だった。

やがて、店内の蛍光灯が一度だけ明滅した。

そして――ぷつん。いつもの明るさが消えた。

一瞬だけ、店内が暗くなる。すぐに非常用電源が立ち上がり、蛍光灯がゆっくりと戻ってきた。

店内全体が、夕暮れのような落ち着いた明るさになった。

「おお……」

誰かが声を漏らした。

すると、店内に別の光がぽつぽつと浮かび上がった。

ロボットの目。アンドロイドの耳元にある小さなインジケーター。胸元の表示ランプ。頭部の小さなステータス表示。

「……」

「……」

機械の客たちが、お互いの姿を見た。

「お前、光ってんな」

「そっちもだろ」

人間の客が振り返った。

「なんか……ロボットのほうが明るくない?」

「言うな」

「ちょっと羨ましい」

「じゃあ頭にランプ付ける?」

「パチンコ屋で?」

「今なら需要あるぞ」

笑いが起こった。

薄暗くなった店内では、いつものパチンコ台のランプも妙に鮮やかに見えた。

赤。緑。黄色。青。古い機械の中で、いくつもの小さな光が浮かんでいる。

「……なんか、綺麗じゃない?」

「うん」

「台のランプ、こんなに明るかったんだな」

「いつもより目立つね」

店主も島の間を歩きながら盤面を眺めた。

「照明が少し落ちるだけで、ずいぶん印象が変わりますね」

そのとき、天井付近を五つの小さな光が横切った。

ホログラムメダカだ。普段から店内を泳いでいる五匹のメダカが、薄暗くなった店内ではいつも以上に目立っている。

銀色の身体が淡く光りながら、すいすいと島の上を泳いでいく。

「おっ」

常連の一人がメダカを見上げた。

「メダカも綺麗だな」

「今日、照明係じゃん」

「いや、あれ普段から照明じゃないだろ」

「でも、今なら台を照らすのに使えるんじゃない?」

一同がメダカを見た。

メダカは何も知らず、すいっと泳いでいく。

「店主さん」

「はい?」

「メダカ、こっちに呼べない?」

「メダカさんを、ですか?」

「そう。俺の台、もうちょっと照らしてほしい」

店主は少し考えてから、腕時計を覗き込んだ。

「では、確認をしてみましょうか」

「そんな機能あるんですか?」

店主は腕時計を操作してみる。すると、一匹のメダカがくるりと方向を変えた。

「おっ!」

客たちが一斉に顔を上げる。メダカはゆっくりと泳ぎ、やがて一台の上で止まった。

盤面に淡い光が落ちる。

「見える!」

「おお、ちょうどいい!」

「店主さん、こっちにも!」

「いや、俺のほうが先!」

「五匹いるんだから一匹ずつでいいだろ!」

「その一匹が来ないんだよ!」

さっきまで静かだった店内が、急に騒がしくなった。

ロボットの客まで両手を広げてメダカを誘導し始める。

「こちらへ」

「いや、そっちは俺の台!」

「私の台のほうが暗い」

「お前、身体そのものが光ってるだろ!」

「それとこれとは別問題だ」

「別問題なのかよ!」

薄暗い店内を、五匹のメダカが自由気ままに泳いでいく。

一匹が羽根モノの上に止まれば、「そこじゃない!」と声が飛ぶ。別の一匹が一発台の盤面を照らせば、「おお! いいぞ!」と歓声が上がる。

そして五匹すべてが、なぜか同じ島の端に集まった。

「なんで全員そっち行くんだよ!」

「人気島じゃん」

「メダカにも人気島が分かるのか?」

「知らん!」

薄暗い店内に、台のランプ、メダカの光、そして人間にはない小さな機械の光が浮かんでいた。なんだか妙に賑やかだった。

店主はカウンターから、その光景を眺めていた。

「……これはこれで、面白いですね」

やがて誰かが言った。

「店主さん、このままやりません?」

「何をです?」

「せっかく暗いんだから」

「昔の遊技場みたいに」

薄暗い店内。小さな台のランプ。その上を泳ぐホログラムメダカ。そして、ところどころでぼんやり光っているロボットやアンドロイドたち。

店主は少しだけ笑った。

「それでは――」

五匹のメダカが、暗い店内をふわりと横切った。

「今夜は、少し趣向を変えて遊んでみましょうか」

こうして、停電の夜の時環遊技場で、妙な遊技会が始まった。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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