【70番外】パチンコ島の大空洞の表紙画像

【70番外】パチンコ島の大空洞

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/21 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 2,515文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

その日の午後、時環遊技場はいつも通りの賑わいを見せていた。

手打ち式の台では、玉の行方をじっと見つめる客がいる。

羽根モノの島では、役物の動きを見ながら一喜一憂する声が飛び交い、一発台のあたりからは、ときおり歓声が上がっていた。

店主がカウンターの奥で、店内を眺めていた。そのときだった。

「……あれ?」

店主が首を傾げた。

島と島の間。

いつもなら何人かの客が行き交っている通路の一角に、妙な違和感がある。

何かが置かれているわけではない。

床もある。天井もある。照明もちゃんと点いている。けれど――そこだけ、妙に空いている。

「こんなに広かったでしょうか」

店主が歩いて近づいてみる。一歩、二歩と近づくほど、違和感が強くなる。

音が遠い。周囲の台から聞こえていた玉の音や電子音が、ほんの少しだけ薄くなっている。

まるで、そこだけ音が吸い込まれているようだった。

店主は立ち止まった。

「……不思議ですね」

そこへ、常連客の一人がやってきた。

「店主、何してるんです?」

「いえ。ここを見ていたんです」

「ここ?」

常連が店主の隣に立つ。そして、じっと何もない空間を見る。

「……ほんとだ。なんか変ですね」

「でしょう?」

「ちょっと入ってみます」

「お気をつけて」

常連が一歩、足を踏み入れた。その瞬間。

「……ん?」

身体が、ほんの少し前へ動いた。

「おや?」

もう一歩。また、前へ。

「えっ?」

自分から歩いているわけではない。それなのに、身体がゆっくりと空間の中央へ引っ張られていく。

「ちょ、ちょっと待って!」

常連が慌てて後ろへ戻ろうとする。だが、戻れない。ずるずると、ほんの少しずつ、中央へ近づいていく。

「店主ー!」

「はい」

「これ、引っ張られてます!」

「そのようですね」

「『そのようですね』じゃないですよ!」

店主が手を伸ばした。常連の腕をつかむ。ところが――

「おや?」

店主の身体まで、前へ引っ張られた。

「店主!?」

「これは……」

ずるずると二人そろって中央へ。そこへ別の常連が駆け寄ってきた。

「何やってるんですか!」

「助けてください」

「今、引っ張ります!」

常連が店主の腕をつかむ。ところが――

「えっ?」

さらに、その常連まで引っ張られる。

「ちょっと待って!」

三人が一本の鎖のようにつながったまま、ゆっくりと何もない空間の中央へ近づいていく。

その光景を見ていた別の客が、ぽつりと言った。

「……宇宙の大空洞みたいだな」

「宇宙?」

「銀河がほとんど存在しない、ものすごく広い空間があるんだって」

「へえ」

店主が興味深そうに聞いている。

「それは面白いですね」

「店主、感心してないで助けてください!」

「すみません」

店主は少し考えた。

「では、宇宙の大空洞にならって――」

「ならって?」

「パチンコ島の大空洞、と呼びましょうか」

「名前つけてる場合ですか!」

そのときだった。店内の何台かの遊技台から、ほぼ同時に小さな電子音が鳴った。

ピッ。ピッ。ピッ。

まるで、笑っているようだった。

店主が振り返る。

「……?」

さらに別の台が鳴る。どうやら遊技台たちも、この騒ぎを楽しんでいるらしい。

「まさか……」

店主が目を細めた。

「皆さん、何か知っていますね?」

当然、台は答えない。ただ、あちこちから電子音が聞こえてくる。

常連客は苦笑した。

「これ、台が面白がってるんじゃないですか?」

「そうかもしれませんね」

店主はそう言いながら、ボイドの中央を見た。そして、ふと思いついたように言った。

「……試してみましょう」

「何を?」

店主は、近くにあった丸椅子を一脚持ってきた。

「これを置いてみます」

「え?」

店主が、何もない空間の中央へ椅子を置く。すると――すっと、椅子が消えた。

「…………」

三人が黙る。

店主が瞬きをした。

「消えましたね」

「消えましたね、じゃないですよ!」

常連が叫ぶ。

店主は少し考えたあと、もう一脚持ってきた。

「では、もう一つ」

もう一つの椅子も同じように消えた。

「店主!」

「はい」

「楽しんでません?」

店主は少しだけ笑った。

「ええ。かなり」

いつの間にか、店主の周りには何人もの客が集まっていた。

「次、これ入れてみよう!」

「やめときなよ!」

「じゃあ景品の箱は?」

「それもやめなさい!」

「玉箱は?」

「絶対やめて!」

わいわい騒いでいるうちに、ボイドはすっかり店内の人気スポットになってしまった。

店主はその様子を見ながら、ふと腕時計を確認した。

「なるほど」

「何がです?」

「どうやら、この空間は『何もない』ことにこだわっているようです」

「そんな空間ある?」

「試してみましょう」

店主は小さな札を一枚持ってきた。

そこには、『ここには何も置かないでください』と書かれている。

それをボイドの前に置く。すると――札だけが消えた。

「…………」

店内が静かになる。店主は札の消えた場所を見つめた。

「……なるほど」

「だから何が!?」

その瞬間。ボイドの中央に、淡いホログラムの文字が浮かび上がった。

『ここには何もありません』

全員が見上げる。

常連の一人が叫んだ。

「いや、文字あるじゃん!」

その瞬間。店内の遊技台が、一斉に小さな電子音を鳴らした。

ピピッ。ピピッ。ピピピッ。

まるで、大笑いしているようだった。

店主も思わず笑った。

「どうやら、皆さんも気に入ったようですね」

やがて、奇妙な現象は少しずつ弱まっていった。

引っ張られていた客たちも、ようやく普通に歩けるようになった。

そして翌日。

店主が店を開けると――そこには、何もなかった。昨日まであった「大空洞」は、跡形もなく消えている。

「……なくなりましたね」

従業員アンドロイドが言う。

「ええ」

「原因は判明しましたか?」

「いえ」

店主は首を横に振った。

「ただ、ひとつだけ分かったことがあります」

「何でしょう?」

「時環遊技場では、宇宙よりも先に、パチンコ島が大空洞を作ることがあるようです」

その言葉を聞いた直後。昨日、ボイドがあった場所の近くにある一台が、ピッ、と鳴った。

店主が振り返る。

「……まだ何かありますか?」

返事の代わりにピッ、と鳴った。

店主は少し考えたあと、にっこり笑った。

「また何か置いてみましょうか」

すると今度は――ピピピピピピピッ!と店の中の台が一斉に鳴り出した。

店主は笑いながら、丸椅子を取りに行った。

ジャンル・タグ

,

作品統計

👁️ 閲覧数: 1 👍 いいね: 0 📚 本棚登録: 0

作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

👥 フォロワー: 1人

作者ページを見る