【70番外】パチンコ島の大空洞
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。
本文
その日の午後、時環遊技場はいつも通りの賑わいを見せていた。
手打ち式の台では、玉の行方をじっと見つめる客がいる。
羽根モノの島では、役物の動きを見ながら一喜一憂する声が飛び交い、一発台のあたりからは、ときおり歓声が上がっていた。
店主がカウンターの奥で、店内を眺めていた。そのときだった。
「……あれ?」
店主が首を傾げた。
島と島の間。
いつもなら何人かの客が行き交っている通路の一角に、妙な違和感がある。
何かが置かれているわけではない。
床もある。天井もある。照明もちゃんと点いている。けれど――そこだけ、妙に空いている。
「こんなに広かったでしょうか」
店主が歩いて近づいてみる。一歩、二歩と近づくほど、違和感が強くなる。
音が遠い。周囲の台から聞こえていた玉の音や電子音が、ほんの少しだけ薄くなっている。
まるで、そこだけ音が吸い込まれているようだった。
店主は立ち止まった。
「……不思議ですね」
そこへ、常連客の一人がやってきた。
「店主、何してるんです?」
「いえ。ここを見ていたんです」
「ここ?」
常連が店主の隣に立つ。そして、じっと何もない空間を見る。
「……ほんとだ。なんか変ですね」
「でしょう?」
「ちょっと入ってみます」
「お気をつけて」
常連が一歩、足を踏み入れた。その瞬間。
「……ん?」
身体が、ほんの少し前へ動いた。
「おや?」
もう一歩。また、前へ。
「えっ?」
自分から歩いているわけではない。それなのに、身体がゆっくりと空間の中央へ引っ張られていく。
「ちょ、ちょっと待って!」
常連が慌てて後ろへ戻ろうとする。だが、戻れない。ずるずると、ほんの少しずつ、中央へ近づいていく。
「店主ー!」
「はい」
「これ、引っ張られてます!」
「そのようですね」
「『そのようですね』じゃないですよ!」
店主が手を伸ばした。常連の腕をつかむ。ところが――
「おや?」
店主の身体まで、前へ引っ張られた。
「店主!?」
「これは……」
ずるずると二人そろって中央へ。そこへ別の常連が駆け寄ってきた。
「何やってるんですか!」
「助けてください」
「今、引っ張ります!」
常連が店主の腕をつかむ。ところが――
「えっ?」
さらに、その常連まで引っ張られる。
「ちょっと待って!」
三人が一本の鎖のようにつながったまま、ゆっくりと何もない空間の中央へ近づいていく。
その光景を見ていた別の客が、ぽつりと言った。
「……宇宙の大空洞みたいだな」
「宇宙?」
「銀河がほとんど存在しない、ものすごく広い空間があるんだって」
「へえ」
店主が興味深そうに聞いている。
「それは面白いですね」
「店主、感心してないで助けてください!」
「すみません」
店主は少し考えた。
「では、宇宙の大空洞にならって――」
「ならって?」
「パチンコ島の大空洞、と呼びましょうか」
「名前つけてる場合ですか!」
そのときだった。店内の何台かの遊技台から、ほぼ同時に小さな電子音が鳴った。
ピッ。ピッ。ピッ。
まるで、笑っているようだった。
店主が振り返る。
「……?」
さらに別の台が鳴る。どうやら遊技台たちも、この騒ぎを楽しんでいるらしい。
「まさか……」
店主が目を細めた。
「皆さん、何か知っていますね?」
当然、台は答えない。ただ、あちこちから電子音が聞こえてくる。
常連客は苦笑した。
「これ、台が面白がってるんじゃないですか?」
「そうかもしれませんね」
店主はそう言いながら、ボイドの中央を見た。そして、ふと思いついたように言った。
「……試してみましょう」
「何を?」
店主は、近くにあった丸椅子を一脚持ってきた。
「これを置いてみます」
「え?」
店主が、何もない空間の中央へ椅子を置く。すると――すっと、椅子が消えた。
「…………」
三人が黙る。
店主が瞬きをした。
「消えましたね」
「消えましたね、じゃないですよ!」
常連が叫ぶ。
店主は少し考えたあと、もう一脚持ってきた。
「では、もう一つ」
もう一つの椅子も同じように消えた。
「店主!」
「はい」
「楽しんでません?」
店主は少しだけ笑った。
「ええ。かなり」
いつの間にか、店主の周りには何人もの客が集まっていた。
「次、これ入れてみよう!」
「やめときなよ!」
「じゃあ景品の箱は?」
「それもやめなさい!」
「玉箱は?」
「絶対やめて!」
わいわい騒いでいるうちに、ボイドはすっかり店内の人気スポットになってしまった。
店主はその様子を見ながら、ふと腕時計を確認した。
「なるほど」
「何がです?」
「どうやら、この空間は『何もない』ことにこだわっているようです」
「そんな空間ある?」
「試してみましょう」
店主は小さな札を一枚持ってきた。
そこには、『ここには何も置かないでください』と書かれている。
それをボイドの前に置く。すると――札だけが消えた。
「…………」
店内が静かになる。店主は札の消えた場所を見つめた。
「……なるほど」
「だから何が!?」
その瞬間。ボイドの中央に、淡いホログラムの文字が浮かび上がった。
『ここには何もありません』
全員が見上げる。
常連の一人が叫んだ。
「いや、文字あるじゃん!」
その瞬間。店内の遊技台が、一斉に小さな電子音を鳴らした。
ピピッ。ピピッ。ピピピッ。
まるで、大笑いしているようだった。
店主も思わず笑った。
「どうやら、皆さんも気に入ったようですね」
やがて、奇妙な現象は少しずつ弱まっていった。
引っ張られていた客たちも、ようやく普通に歩けるようになった。
そして翌日。
店主が店を開けると――そこには、何もなかった。昨日まであった「大空洞」は、跡形もなく消えている。
「……なくなりましたね」
従業員アンドロイドが言う。
「ええ」
「原因は判明しましたか?」
「いえ」
店主は首を横に振った。
「ただ、ひとつだけ分かったことがあります」
「何でしょう?」
「時環遊技場では、宇宙よりも先に、パチンコ島が大空洞を作ることがあるようです」
その言葉を聞いた直後。昨日、ボイドがあった場所の近くにある一台が、ピッ、と鳴った。
店主が振り返る。
「……まだ何かありますか?」
返事の代わりにピッ、と鳴った。
店主は少し考えたあと、にっこり笑った。
「また何か置いてみましょうか」
すると今度は――ピピピピピピピッ!と店の中の台が一斉に鳴り出した。
店主は笑いながら、丸椅子を取りに行った。
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