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【71番外】幻の攻略法を探せ!

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/22 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 4,505文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

時環遊技場のカウンターの奥で、店主は一冊の古い本を開いていた。

昭和のパチンコ攻略本を模して作られた、店主自作の資料帳である。実在した書籍の情報や、昔の遊技方法についての記録が細かく整理されているが、今日の店主が眺めているのは、その末尾に挟まっていた一枚の紙だった。

紙は黄ばんでおり、端には小さな穴がいくつも開いている。印刷物ではなく、誰かが手書きしたものらしい。そこには、見慣れない図と、奇妙な攻略手順が記されていた。

「ふむ……これは、なかなか興味深いですね」

店主は眼鏡の位置を直し、もう一度、図を眺めた。

「どうしたんですか、店主?」

カウンターにやってきた常連客が、店主の手元をのぞき込んだ。店主が紙を差し出すと、常連客は最初こそ何気ない様子だったが、図を見た途端に眉をひそめた。

「なんだこれ。羽根モノの攻略法?」

「そのように見えますね。機種名も記されているのですが、当店にある機種と同じ名前なのです」

「えっ、どれどれ?」

その声を聞きつけた別の常連客がやってきた。さらにもう一人。少し離れた台で遊んでいたロボットまで、首を回してこちらを向いている。

あっという間に、カウンターの周囲に人だかりができた。

紙には、こんなことが書かれていた。

――第一に、打ち出しを開始する前に、遊技盤の右上にある風車を三度確認すること。

――第二に、羽根が開いた直後、玉を二発続けて打ち出すこと。

――第三に、最初の玉が羽根に拾われなかった場合、次の開放まで打ち出しを止めること。

そして最後に、ひときわ大きな文字でこう記されていた。

「三度目の開放にこそ、勝機あり」

「……三度目?」

「風車を三度確認するって、どうやって?」

「目で見るんじゃないのか?」

「いや、そういう意味じゃなくてさ!」

常連客たちの議論が始まった。

「二発続けて打つのはわかる。けど、なんで最初の玉が拾われなかったら止めるんだ?」

「次の開放を待つためじゃないか?」

「だったら、最初から二発打つ意味がないだろ!」

「そもそも、三度目の開放って何だよ。三回目だけ羽根の開き方が違うのか?」

店主は楽しそうに皆の話を聞いていたが、やがて紙をひっくり返した。

裏面には、さらに小さな文字で追記があった。

――この方法を用いる際は、遊技盤に向かって軽く一礼すること。礼を欠く者には、玉もまた礼を欠く。

「……最後の一文、絶対におかしいだろ!」

常連客の一人が声を上げた。

「いや、昔の人は遊技台を大切にしていたんだよ」

「大切にするのと、玉に礼儀を求めるのは違うだろ!」

RB-4176もいつの間にか加わっていた。機械の頭部を傾け、紙を撮影している。

「めっちゃ気になる!遊技盤への礼儀と入賞率に相関関係があるか、検証していいっすか?」

「やめとけ。台に頭を下げるロボットが何台も並んでいたら、知らない客がびっくりするだろ」

「じゃあ、内部センサーで礼の角度を計測するってのは?」

「そういう問題じゃない!」

店主は笑いをこらえながら、紙の出所について説明した。

「この紙は、古い資料の間に挟まっていたものなのです。いつ、誰が書いたのかはわかりません。ただ、こちらに書名らしきものが残っていましてね」

店主が指差した場所には、かすれた文字で『遊技秘伝』とあった。

「それ、本の名前じゃないの?」

「そうかもしれません。ただ、発行年も著者名もありません」

「じゃあ、調べようぜ!」

その一言で、事態は決まった。

常連客たちはそれぞれの端末を取り出し、未来都市の膨大な電子書籍データベースや古書目録を検索し始めた。従業員アンドロイドも検索に加わったが、数秒後、首を横に振った。

「該当する書籍は確認できません。表記揺れ、通称、未登録資料の可能性があります」

「未登録資料かあ……」

「だったら、別の本に載っていないか調べればいいんじゃないか?」

その言葉に、店主が顔を上げた。

「なるほど。ほかの攻略本が参考にしている資料を調べるのですね」

常連客たちは一斉に店主を見た。

「店主、そういう調べ方するの?」

「ええ。古い本を調べるときは、参考文献が大切です。そこから、さらに前の資料を知ることができますから」

店主は別の資料帳を取り出した。攻略法に関する記述がある本を並べ、最後のページを一冊ずつ確認していく。

やがて、一人の常連客が声を上げた。

「あった! 『遊技秘伝』って名前が、ここに載ってる!」

その本は、ある古い攻略本の参考文献欄に記載されていた。ただし、書名の後ろには疑問符がついている。

『遊技秘伝? 著者不詳』

「これだ! でも、疑問符ってなんだよ」

「本当に存在したのか、書いた人も確信がなかったのかもしれませんね」

さらに調べると、別の本にも同じ書名が出てきた。そちらには、攻略法の一部が引用されている。

ところが、記載されていた手順は、手元の紙とは違っていた。

『最初の玉が拾われなかった場合、次の開放まで待つのではなく、羽根が閉じた直後に一発だけ打ち出す』、と書かれているのだ。

「違うじゃないか!」

「いや、こっちが正しいんじゃないのか?」

「待てよ。こっちの本のほうが古いとは限らないだろ」

「参考文献の順番を見てみよう!」

従業員アンドロイドが両方の資料を照合した。

「書名の一致は確認できますが、発行年を特定できません。どちらが先に書かれたかは不明です」

「うわあ、いちばん困るやつだ!」

それでも、彼らは諦めなかった。

さらに古い本の参考文献を調べ、その本が引用している別の本を探し、見つけた本の参考文献をまた調べる。いつしかカウンターの上には、古書の画像や書誌情報が投影され、時環遊技場の常連客たちは、パチンコを打つことも忘れて資料の海に没頭していた。

そして、ついに。

「見つけたあああ!」

常連客の声が店内に響いた。

「『遊技秘伝』の記述が載ってる、もっと古い資料だ!」

一同が画面をのぞき込む。

そこには、確かに似た図があった。風車の位置を示す印、羽根の開放と打ち出しのタイミング、そして三度目の開放に関する記述。

ただし、そこに書かれていたのは、今までのどの資料とも違う手順だった。

――羽根が開くたびに一発ずつ打ち出すべし。三度目の開放にて、打ち出しを止めるべし。

「止めるのかよ!」

「二発続けて打つんじゃなかったのか!」

「しかも、三度目に打つんじゃなくて、三度目に止めるんだぞ!」

常連客たちは大騒ぎになった。

従業員アンドロイドが、三つの記述を並べて比較する。

最初の資料では、三度目の開放が勝機。次の本では、三度目の開放に合わせて打ち出す。

そして最も古いと思われる資料では、三度目の開放で打ち出しを止める。

「つまり……」

RB-4176が腕を組んだ。

「誰かが文章を読み間違えたか、伝える途中で意味が変わった可能性があるね」

「あるいは、違う機種の攻略法が混ざったのかもしれませんね」

店主は静かにうなずいた。

「ただ、もう一つ気になることがあります」

店主は最も古い資料の末尾を拡大した。そこには、小さな追記があった。

――なお、この方法は先代の遊技者より聞き伝えたるものなり。

一同は黙り込んだ。

「……先代?」

「その人も、誰かから聞いたってこと?」

「じゃあ、最初に考えた人は?」

従業員アンドロイドが即座に答えた。

「現存する資料からは、起源を特定できません」

「結局わからないのかよ!」

店内に笑い声が広がった。

しかし、店主は楽しそうだった。

「それでも、こうして今も皆さんが調べているのですから、攻略法もずいぶん長生きしたものですね」

「店主、いい話っぽくまとめようとしてるけど、俺たち今日、何時間これ調べてたと思ってるんですか!」

「それだけ夢中になれるものがあった、ということではありませんか」

「うっ……。それは、そうだけどさあ」

そのとき、RB-4176が突然、羽根モノの島を振り返った。

「店主!提案〜!」

「はい、何でしょう」

「この攻略法、実際に試してみません?」

「ええっ、まだやるの!?」

「もちろん。まずは三度目の開放で打ち出しを止める方法から試して、次に、一発打ち出す方法。そして二発連続。データを取れば、何か違いが出るかも」

RB-4176は、すでに台の前へ向かっていた。

常連客たちも、結局ぞろぞろと後を追った。従業員アンドロイドは記録用の端末を起動し、店主は苦笑しながらマイクのスイッチを入れた。

「お客様にご案内申し上げます。ただいま羽根モノコーナーにおきまして、古文書に記された攻略法の検証が行われております。なお、遊技結果につきましては、当店では一切の保証をいたしかねますので、あらかじめご了承くださいませ」

「店主! 古文書って言うなよ! ただの怪しい紙だろ!」

「失礼いたしました。怪しい紙に記された攻略法の検証でございます」

「余計にひどくなった!」

時環遊技場の羽根モノコーナーは、いつも以上ににぎやかになった。

一発打ち出しては記録し、二発続けては記録し、三度目の開放で打ち出しを止めては記録する。人間もアンドロイドもロボットも、真剣そのものだった。

そして一時間後。

従業員アンドロイドが、集計結果を発表した。

「検証結果を報告します。各手順において、明確な優位性は確認できませんでした」

「そんなもんだろうなあ……」

「でも、待てよ。最後の一礼はどうだった?」

全員の視線が、RB-4176に集まった。

「礼の角度を変えて、十回ずつ試した」

「試したのかよ!」

「結果、入賞率との明確な相関関係は確認できなかったよ。後は、隣で遊技していたおっちゃんから『何をしているのか』と三回質問されたね」

「そっちのデータはいらない!」

店主はとうとう声を上げて笑った。

その日の閉店後、店主は例の紙を元の資料帳に戻した。出所不明。著者不詳。攻略法の起源も不明。けれど、紙の余白には新しい記録が加わった。

――西暦三二〇〇年、時環遊技場にて検証。明確な効果は認められず。なお、遊技盤への一礼については、周囲の注目を集める効果が確認された。

店主はペンを置き、満足そうに資料帳を閉じた。

そのとき、従業員アンドロイドが尋ねた。

「店主。この攻略法の記録は、今後の資料にも引用される可能性があります。参考文献の項目を追加しますか?」

「そうですね。ぜひお願いします」

「書名は、どのように記載いたしましょう」

店主は少し考えたあと、穏やかに答えた。

「『幻の攻略法を探せ! 時環遊技場検証記録』でいかがでしょう」

「承知しました。著者名は店主のお名前でよろしいですか?」

「いえ、検証に参加された皆さんのお名前も記載してください」

従業員アンドロイドはうなずき、記録を保存した。

その数百年後。未来都市の電子古書目録に、一冊の資料が登録された。

『幻の攻略法を探せ! 時環遊技場検証記録』

その本を読んだ、ある遊技文化研究家は、巻末の参考文献に記された一行に目を留めた。

『遊技秘伝? 著者不詳』

研究家は首をかしげ、端末に検索語を入力した。

「……これは、もっと古い資料があるのでは?」

こうして、幻の攻略法をめぐる調査は、また新たな時代へと引き継がれていった。

そして、その攻略法が最初に誰によって考案されたのかは、今もわかっていない。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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