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【72番外】 店主、本日お休みです

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/23 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 3,972文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

開店前の時環遊技場。白い蛍光灯が店内を照らすなか、店主はいつもより少し軽やかな足取りで出かける支度をしていた。

「では、今日は一日お願いしますね」

「承知しました。何かございましたらご連絡ください」

従業員アンドロイドに店を任せ、店主はにこやかに自動ドアを抜けていった。今日は以前から探していた、昭和のパチンコ台の部品を探しに行くのだ。玉を打ち出す機構に使われていたゴム部品や、古いハンドルの交換用パーツ。今すぐ必要というわけではないが、予備が手に入るなら確保しておきたい。

店主にとっては、待ちに待った休日である。

その後、開店した時環遊技場はいつもどおりの賑わいを見せていた。銀玉が盤面を弾む音、羽根モノの役物が動く音、常連たちの賑やかな声。ところが、ひとりの客がカウンターにやって来て、店主の不在を知った途端、空気が変わった。

「えっ、今日、店主いないの?」

「本日、店主はお休みです」

「店主が休み!?」

その声に、近くの台に座っていた常連たちまで振り向いた。

「えっ、店主って休むんすか!?」

「休むだろ! なんだと思ってんだ!」

「いや、だって店主だぞ?」

「店主だからって休まない理由にはならねえだろ!」

RB-4176とCL-2083も、遊技の手を止めてカウンターへやって来た。

「店主、どこ行ったんすか?」

「私用とのことです」

「私用……。何だろうな?」

「気になるなあ。店主の私用って」

従業員アンドロイドは、別段気にする様子もなく景品カウンターの整理を続けている。

「店主が不在でも通常どおり営業しておりますので、皆さんは遊技をお楽しみください」

「いや、そうなんだけどさあ!」

何がそんなに気になるのか、自分たちでもよくわかっていないらしい。それでも常連たちは、店主の休日についてあれこれ推理を始めた。

「最新型の遊技施設でも見に行ってんじゃね?」

「いや、店主なら古い台の部品探しとかじゃない?」

「部品?」

「この前、打ち出すところのゴムがどうとか言ってなかった?」

「ああ! なんか小さいやつ!」

「説明が雑!」

話題がそこまで来たとき、CL-2083がふと顎に手を当てた。

「……そういえばさ」

「ん?」

「俺たち、店主のことは毎日見てるけど、店主の真似ってできる?」

一同が黙った。

それは、考えたこともなかった。

「できるだろ。毎日見てんだから」

「じゃあ、やってみてよ」

「えっ、俺?」

指名された常連は、少し考えてから、すっと背筋を伸ばした。両手を前で重ね、穏やかな表情を作る。

「皆さん、本日も時環遊技場へようこそ」

「いやいやいや、そんな改まった挨拶しないだろ!」

「えっ、違う?」

「もっと普通だって! ほら、いつもの感じ!」

今度はRB-4176が挑戦した。羽根モノの島の前に立ち、盤面をじっと眺めてから、ゆっくりと口を開く。

「おやおや……これは、なかなか」

「何がなかなかなんだよ!」

「いや、店主って台を見るとき、こんな感じじゃん?」

「雰囲気だけじゃねえか!」

周囲の常連たちまで集まり始めた。どうやら、誰がいちばん店主に似ているかを競う流れになってしまったらしい。

「店主はもっと、こう、余裕があるんだよ」

「余裕?」

「そう。慌てない。何が起きても、にこにこしてる」

「じゃあ、台が故障したときは?」

「それでも、にこにこ」

「大当たりしたときは?」

「にこにこ」

「玉が詰まったときは?」

「にこにこ……いや、それはちょっと違うんじゃねえか?」

「お前の基準、適当すぎるだろ!」

RB-4176が腕を組んで唸り、CL-2083は別の角度から考え始めた。

「いや、店主らしさって、顔だけじゃないんじゃない? 声とか、歩き方とか」

「歩き方?」

ひとりが店内をゆっくり歩き始めた。背筋を伸ばし、両手を前で重ね、足音まで気にしている。

「どうだ?」

「なんか偉い人みたい」

「店主じゃなくて、式典の司会者だな」

「くっそ、難しいな!」

いつの間にか、羽根モノの島の端では店主の立ち姿を研究する者が、カウンター前ではお辞儀の角度を検証する者が現れていた。真剣そのものの顔で、誰もが自分なりの店主像を再現しようとしている。

従業員アンドロイドは、そんな一団を横目に見ながら、通常業務を続けていた。

「皆さん、店主の再現をされているのですか?」

「そうそう! どう? 似てる?」

「いいえ」

「即答!?」

「皆さんが再現しているのは、店主の一部分にすぎません」

「じゃあ、お前はできるのかよ!」

従業員アンドロイドは手を止め、すっと姿勢を整えた。顔の角度、穏やかな表情、落ち着いた声。まるでいつもの店主がそこに立っているかのような、自然な佇まいだった。

「おやおや。皆さん、今日も楽しそうですねえ」

一瞬、常連たちが静まり返った。

「……」

「……お前、めっちゃ似てるじゃん!」

「店主の接客データを参考にしました」

「ズルだろ、それ!」

「参考にしただけですが?」

再び笑い声が上がり、モノマネ大会はさらに白熱した。

その頃、未来都市の商業区にある中古機械店では、店主が棚のいちばん下に置かれた小箱を見つけていた。返品待ちの機器や用途不明の部品に埋もれ、長いこと忘れられていたらしい箱である。

蓋を開けると、小さなゴム部品や金属のつまみ、古い機械の細かなパーツがいくつも入っていた。

「おお……!」

店主の顔がぱっと明るくなった。

ひとつずつ手に取り、形状や摩耗の具合を確かめていく。探していたものに近い部品もあれば、交換用として十分使えそうなものもある。

「これはありがたいですねえ。予備も確保できそうです」

店員が不思議そうに覗き込んだ。

「それ、ずいぶん古い部品ですよ。型番もわからないし、ずっと売れ残っていたんですけど」

「ええ、ええ。そうでしょうねえ」

店主は嬉しそうに頷いた。

「いやあ、まさかこちらで見つかるとは。探してみるものですね」

そこから店員との話が弾み、別の箱まで見せてもらうことになった。気づけば予定していた時間を大幅に過ぎていたが、店主は大満足だった。小さな袋に部品を大切にしまい、帰路についた。

一方、時環遊技場のモノマネ大会は、いよいよ佳境に入っていた。

「いや、違う! 店主はそんなに顎を上げない!」

「じゃあ、こうか?」

「今度は下げすぎだって!」

「お前ら、店主の顔を何だと思ってんだよ!」

「じゃあ、お前がやってみろ!」

そのとき、自動ドアが開いた。

「ただいま戻りました」

店主が小さな袋を手に、店内へ入ってきた。しかし、常連たちは誰ひとり気づかない。

「いいか、店主の真似で一番大事なのは、あの独特の間なんだよ!」

「間?」

「そう。すぐに喋らないで、一回こう……台を見て」

CL-2083が盤面を見つめ、腕を組んだ。

「……なるほど」

「出た! それっぽい!」

「いや、まだだ。このあと……」

「おやおや、これは……」

RB-4176が横から声を重ねる。

「違う違う! 声が違う! もっと穏やかに!」

「穏やかって、どうやるんだよ!」

店主は入口付近で立ち止まり、しばらくその光景を眺めていた。羽根モノの島の横で、常連たちが真剣な顔をして自分の立ち姿を研究している。ひとりは不自然に背筋を伸ばし、もうひとりは顎に手を添えたまま固まっていた。

店主は小さく首を傾げたものの、どうやら面白そうなので、そのまま静かに近づいていった。

「皆さん」

誰も振り向かない。

「皆さん、こんにちは」

「おやおや、これは……」

「違う! 今のは違う! 店主ならもっと自然に……」

「……あまり似ていませんねえ」

「そうそう、似てないんだよ! って、えっ?」

全員の動きが止まった。

ゆっくりと振り返る。そこには、小さな袋を提げた店主が、いつもの穏やかな笑顔で立っていた。

「…………」

「…………店主?」

「いつから!?」

「少し前からおりましたよ」

「全然気づかなかった!!」

店主は不思議そうに皆を見回した。

「それで、皆さん。何をそんなに熱心に練習されていたのですか?」

常連たちは互いの顔を見合わせた。逃げ道はない。

「……店主の、モノマネを……」

「なるほど!」

店主はにこにこと頷いた。

「それで、あまり似ていなかったのですねぇ」

「本人に言われたぁぁぁ!!」

店内に、今日いちばんの笑い声が響き渡った。

従業員アンドロイドが、カウンターから静かに付け加える。

「私も、先ほどからそう申し上げていました」

「お前は黙ってろーーー!!」

常連たちが一斉に抗議するなか、店主は手にしていた袋をカウンターへ置いた。

「ところで、今日はよいものが見つかったんですよ」

袋から出てきたのは、小さなゴム部品と、いくつかの金属パーツだった。

「……えっ、何すか、それ?」

「昭和の機械に使われていた部品です。交換用と予備に、ちょうどよさそうなものがありましてね」

店主の顔が、またぱっと輝いた。

「いやあ、見つかってよかったです」

常連たちは部品を覗き込んだ。しばらく眺めたあと、CL-2083がぽつりと呟いた。

「……店主、今日いちばんいい顔してるな」

「そりゃあ、探してたもんが見つかったんだからな」

RB-4176が頷く。

「なあ、店主。その部品って、そんなにすごいんすか?」

「ええ。これがあると、いざというときに助かりますからね」

店主は丁寧に部品を袋へ戻した。

その様子を見ていた常連たちが、今度は一斉に顔を見合わせる。

「……もう一回、店主の真似やってみる?」

「やめとけって! 本人の前だぞ!」

「いや、今の笑顔、再現できる気がする!」

「できるわけねえだろ!」

店主は何のことやらわからない様子で、いつもの場所へ向かっていった。

従業員アンドロイドは、常連たちの騒ぎを横目に、通常業務へ戻る。

「皆さん、遊技の妨げになりますので、少しお静かにお願いします」

「お前も店主の真似すんな!!」

時環遊技場は、今日も平和だった。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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