第5話 助手にしてくださいっ!

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

あらすじ

町工場の修理工・カイトは異世界に召喚されるも、ハズレスキル【リサイクル】を理由に「廃棄の谷」へ追放されてしまう。 だが、その真価はガラクタを神話級へと創り変える【超・資源再生(アップサイクル)】だった! 折れた剣は不壊の魔剣に、毒の霧は無限のエネルギーに、捨てられた機械人形は絶世の美少女(最強)へと大変身! 拾い人の少女や龍人族、没落令嬢らと共に、温泉付きの快適な要塞都市を築き上げていく。 一方、使い捨て社会のツケで破滅寸前の王国が「戻ってきて国を建て直してくれ!」と泣きついてくるが―― 「断る。俺の居場所は、あの最高のゴミ捨て場だ」 ガラクタだらけのどん底から始まる、痛快な領地開拓ファンタジー!

本文

「カイトお兄ちゃん、本当にそんなガラクタで薬なんて作れるの……?」

 エマが怪我をした足首を庇いながら、不安そうに眉を八の字に曲げていた。

 無理もない。

 俺が周囲から拾い集めてきたのは、誰がどう見てもただのゴミだった。

 泥がついて粉々に砕けたポーション瓶のガラス片。

 瓦礫の影にへばりつくように生えていた、わずかに青白く光るカビのような苔。

 そして、ひしゃげた鉄の水筒に残っていた、濁ったわずかな水だ。

「普通なら無理だな。だが、俺のアビリティなら話は別だ」

「う、うーん……さっきの雷の棒も凄かったけどさぁ……。薬って薬師のおじいちゃんたちが、何時間も怪しい大釜でグツグツ煮込んで作るものだよ? そんな道端の草と割れたガラスでパパッと作れるものなの?」

「釜で煮るより、分子レベルで直接成分を抽出して再構成した方が手っ取り早いだろ」

「ぶんしれべるって何!?」

 エマの素っ頓狂なツッコミを軽く受け流し、俺は拾い集めた素材を平らな鉄板の上に並べた。

「よし、まずは容器からだな」

 砕けたガラス片を手の中に集め、意識を集中させる。

「【解析(スキャン)】――【分解・精製(ディスアセンブル)】」

 淡いエメラルドグリーンの光が手のひらを包み込む。

 付着していた泥や油汚れが一瞬で黒いチリとなって消え去り、濁っていたガラスの破片が純粋なケイ素の透明な輝きを取り戻していく。

 手のひらの中で、砕けたガラス片が心地よい熱を帯びてドロリと溶け合った。

 俺のイメージ通りに滑らかな曲線を描き、手のひらサイズの美しい小瓶へと再構築されていく。

「わあ……割れた破片が、継ぎ目一つない綺麗な瓶になっちゃった……」

 エマが目を丸くして見つめる中、俺は仕上げの特性を付与した。

「――【永劫循環(エターナル・サイクル)】」

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【完成品】保存用魔導ガラス瓶(品質:特級)

【特性】

・完全密封

・内容物の劣化・腐敗を永久防止

・耐衝撃強化

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「よし、器はできた。次は中身だな」

 青白く光る苔と、濁った水を手に取る。

 解析ウィンドウが即座に詳細な情報を展開した。

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【対象】発光性の月光苔(乾燥劣化)

【状態】腐食率40%、微弱な毒素混入

【薬効成分】細胞活性化、鎮痛作用、組織再生

【潜在能力】高純度抽出により劇的な治癒効果を発揮

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「この苔、乾燥して毒素が混ざっちまってるが、有効な薬効成分自体はかなり上質だな」

「えっ!? 毒が入ってるの!? それ、飲んだらお腹を壊すどころじゃ済まないやつじゃない!?」

「だから、毒だけを取り除いて、いいところだけを残すんだよ」

 俺は苔と水を両手で包み込んだ。

 イメージするのは、精密なフィルターを通す作業だ。

 水に含まれる泥や雑菌、有害な重金属を瞬時に分解して純水に変え、苔の中に含まれる毒素の分子構造だけを綺麗に切り離す。

 そして、残った純粋な治癒成分だけを極限まで濃縮し、純水へと均一に溶け込ませていく。

「【超・資源再生(アップサイクル)】――濃縮精製!」

 ギュウウウウッ、と光が激しく収束していく。

 俺の両手の間で、青白い光の液体が生まれ、澄んだエメラルドグリーンへと輝きを変えた。

 甘く爽やかなハーブのような香りが、ふわりと周囲の空気を満たす。

 完成した液体を、先ほど作った特級のガラス瓶へと注ぎ込んだ。

 トクトク、と涼やかな音を立てて満たされていく。

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【完成品】至高の再生霊薬(特級アップサイクル・ポーション)

【効果】

・外傷、骨折、筋断裂の即時完全治癒

・疲労回復、魔力急速補給

・痛覚遮断(副作用なし)

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「よし、できたぞ」

「……できたぞ、じゃないよ! なにそのキラキラ光ってる液体! 私が街の薬屋の高級ショーウィンドウで見た、一番高い金貨百枚のポーションより神々しい光を放ってるんだけど!?」

「見た目は派手だが、元はそこらの苔と濁り水だから原価はタダだ。ほら、足を出せ」

「え、これ、本当に効くの……? 足が緑色に染まったりしない……?」

「変な心配するな。毒は完全に分解したって言っただろ」

 俺は瓶の栓を抜き、エメラルド色の液体をエマの腫れ上がった足首にそっと垂らした。

「ポタポタ……」

 液体が肌に触れた瞬間、パッと柔らかな光がエマの足全体を包み込んだ。

「ひゃうっ……!? な、なにこれ、あったかい……!」

 エマが息を呑む。

 見る見るうちに、赤黒く変色していた皮膚が元の健康的な白さを取り戻していく。

 内出血の腫れがスッと引き、皮膚の奥でパキパキと小さな音がして、傷ついていた骨や筋が瞬く間に修復されていった。

 ものの5秒も経たないうちに、エマの足首は何の傷痕もない、綺麗で柔軟な状態へと戻っていた。

「……うそ。痛みが……完全に消えた……?」

 エマはおそるおそる足首をくるくると回し、それから勢いよく立ち上がった。

 その場で軽くピョンピョンと跳ねてみる。

「痛くない! 全然痛くないよ! さっきまで骨がズキズキ痛んでたのに、怪我する前より足が軽い……!」

「骨の微細なヒビも全部繋ぎ直したからな。ついでに残りの半分を飲んでおけ。擦り傷も綺麗に消えるし、体力も戻るぞ」

 差し出された瓶を受け取り、エマは恐る恐る口をつけた。

「ごくっ……んんっ!? あ、甘くてすっごく美味しい! 高級な果物のジュースみたい……!」

 残りを一気に飲み干すと、エマの顔にパッと血色が戻り、腕や頬の擦り傷が跡形もなく消え去った。

 空になった瓶を両手で握りしめたまま、エマはわなわなと小刻みに震え始めた。

「ど、どうした? やっぱりどこか痛むか?」

「カイトお兄ちゃん……これ、特級ポーションどころじゃないよ……! 王族専用の『神殿の秘薬(エリクサー)』レベルだよ……! こんなの王都のオークションに出したら、お城が一つ買えちゃうよ!?」

「城は大げさだろ」

「大げさじゃないよ! この世界じゃ、ポーションなんて下級品ですら平民には手が出ない高級品なのに、ゴミからこんな神話級の薬を一瞬で作っちゃうなんて……!」

 エマは頭を抱えて叫んでいたが、ふと何かに気づいたようにピタッと動きを止めた。

 そして、じーっと真剣な琥珀色の瞳で俺の顔を見つめてくる。

「……なんだよ、そんなに改まって」

「カイトお兄ちゃん」

「ん?」

 エマはガシッと俺の両手を力いっぱいに握りしめてきた。

 その瞳は、途方もないお宝を見つけたかのように爛々と輝いている。

「私を、お兄ちゃんの助手にしてくださいっ!」

「……は?」

「助手! お弟子さんでもいい! とにかく、お兄ちゃんのそばで働かせて!」

「いや、俺は別に誰かを雇うつもりはないんだが……」

「損は絶対にさせないよ! 私、こう見えても【廃材採集者(マテリアル・ギャザラー)】歴5年の大ベテランなんだから! この廃棄の谷のどこにどんな素材が落ちてるか、頭の中に地図が入ってるの! それに、街の相場も全部知ってるし、危ない魔獣の縄張りも案内できるよ!」

 エマは身振り手振りを交えながら、猛烈な勢いで自分をアピールしてくる。

「お兄ちゃん、この谷に来たばかりで地理も魔獣のこともわからないでしょ? 一人で素材を探すより、私が案内した方が100倍効率がいいよ! ご飯の用意も洗濯も、雑用は何だってするから! お願いっ!」

 必死に頭を下げるエマの姿に、俺は少し考え込んだ。

 確かに、エマの言う通りだ。

 俺には【超・資源再生】の力があるが、この世界の地理も、素材の価値も、魔獣の生態も何も知らない。

 現地の事情に詳しいガイドがいるのは、これからのサバイバルにおいて間違いなく大きな強みになる。

「……本当にいいのか? 俺は王国から無能だと見下されて追放された身だぞ。一緒にいたら、厄介事に巻き込まれるかもしれない」

「へいきへいき! 私だって王国のスラムで『ガラクタ拾い』ってバカにされて生きてきたんだもん。王国の偉そうな奴らなんて大っ嫌いだよ! それより、物を大事にして、ゴミからこんな凄い奇跡を起こすお兄ちゃんの方が、何百倍もカッコいいもん!」

 屈託のない笑顔で、エマは胸を張って言い切った。

 その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。

「……わかったよ。じゃあ、助手としてよろしく頼む、エマ」

「やったああっ! 決まりね、カイトお兄ちゃん!」

 エマは飛び跳ねて喜び、満面の笑みを浮かべた。

「さて、そうと決まれば善は急げだ。まずは拠点を探したいんだが……雨風をしのげて、作業に集中できる場所はないか?」

「それなら、ぴったりの場所があるよ! ここから西に少し行ったところに、昔捨てられた巨大な魔導コンテナの山があるの。あそこなら魔獣も入ってこないし、すごく頑丈だよ!」

「巨大コンテナか……いいな、素材の宝庫だ」

 俺は出来上がった魔導棍を軽く肩に担ぎ、エマに向かって力強く頷いた。

「よし、案内してくれ。俺たちの工房を作りに行こう」

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作者について

ふっせ

第2弾スタートです!

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