⑶
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
幻燈街・路地裏 みみが通りで待っていることを確認すると、カミルはBとCを連れて、人目につかない路地へ入った。さっきまで、みみの隣で穏やかに話していた男とは思えない。
本文
幻燈街・路地裏
みみが通りで待っていることを確認すると、カミルはBとCを連れて、人目につかない路地へ入った。
さっきまで、みみの隣で穏やかに話していた男とは思えない。
カミル「……さて」
低い声が落ちた。
BとCは、反射的に背筋を伸ばす。
カミル「お前ら、さっきの女に何をしようとした?」
B「いや、その……ちょっと声をかけただけで……」
カミル「ほう」
カミルが一歩、近づく。
カミル「嫌がる相手を無理に連れていこうとするのも、声をかけただけって言うのか?」
B「……っ」
C「で、でも、あの人は別に怒ってなかったじゃないですか……」
その瞬間、カミルの赤い瞳がCを射抜いた。
カミル「……お前、今の話を聞いて、本気でそう思ってんのか?」
声は静かだった。
怒鳴りもしない。
それなのに、路地の空気がひやりと冷える。
カミル「相手が笑ってりゃ、何をしても許されると思うな。あいつは、お前らが思ってるほど何も考えてねぇわけじゃない」
(……いや、考えてねぇところもあるが)
一瞬だけ、別の意味で眉間に皺が寄る。
しかし、すぐに鋭い眼差しへ戻った。
カミル「いいか。ここは俺の街だ」
BとC「…………」
カミル「この街じゃ、相手の意思を無視して押し通すような真似はさせねぇ。断られたら引く。嫌がってる相手を囲まない。無理に連れていかない。そんな当たり前のことも分からねぇなら、ここで好き勝手するのはやめてもらう」
B「……すみませんでした」
C「もうしません……!」
カミル「謝る相手が違うだろうが」
二人がびくりと肩を揺らす。
カミル「今後どうするかは、お前らの行動で決まる。口先だけで済むと思うなよ」
そして、カミルは路地の奥へ視線を向けた。
控えていた仲間が、すぐさま姿を現す。
カミル「こいつらに街のルールを教え直せ。今後、同じことが起きねぇように、周りにも徹底させろ」
仲間「了解です、ボス」
カミル「頼んだぞ」
仲間「はい」
BとCは、もう一度、深く頭を下げた。
B「……本当に、すみませんでした」
C「二度としません」
カミル「……よし。連れていけ」
仲間に促され、二人は路地の奥へと消えていく。
最後まで見届けたカミルは、小さく息を吐いた。
(……まったく、余計な時間を食わせやがって)
ふと、通りのほうへ目を向ける。
みみは、あの場所で待っているはずだ。
きっと今ごろ、仲直りできるとでも思っているのだろう。
あの無邪気な笑顔が、簡単に目に浮かぶ。
カミル(……早く戻るか)
あの女は、目を離せば気になる店へふらふらと寄っていく。本人に悪気はないし、むしろ楽しそうにしている。
だからこそ、気になって仕方がない。
(……ちゃんと待ってろよ)
もちろん、そんなことは口にしない。
カミルはいつもの落ち着いた表情を取り戻すと、路地を出るために歩き始めた。
街のボスとしての仕事は、ひとまず終わり。
あとは――みみのところへ戻るだけだった。