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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/30 📚 シリーズ: きまぐれまほろば夜行帖【本編】 📝 1,419文字 ✅ 全年齢

あらすじ

見守り狼たち ベーカリーの前。みみは紙袋を膝に置き、最後のひと口をゆっくり食べていた。

本文

見守り狼たち

ベーカリーの前。

みみは紙袋を膝に置き、最後のひと口をゆっくり食べていた。

さっきの一瞬の寂しさは、もう隠れてしまったようにも見える。

けれど、少し俯いた横顔には、まだ名残があった。

そこへ、通りかかったひとりの男性が足を止めた。

男性「あの……どうかしましたか?」

みみ「え?」

男性「少し元気がないように見えたので。何かお困りですか?」

みみは驚いたように顔を上げ、それから小さく笑った。

みみ「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」

男性「そうですか? それならよかった」

男性は穏やかに笑い、少し距離を保ったまま話を続けた。

男性「この辺りは初めてですか? お店も多いですからね」

みみ「はい。今日は初めて歩いているんです」

少し離れた通り。

カミルは、その様子を見ていた。

カミル「…………」

仲間A「声をかけられましたね」

仲間B「心配してくれたみたいですね。悪い人には見えませんが」

カミル「分かっている」

男性は無理に近づいていない。

みみも普通に受け答えしている。

それでも、カミルの視線はそちらに留まっていた。

(……あいつは、誰にでもああして笑う)

仲間A「ボス?」

カミル「仕事に戻るぞ」

そう言ったものの、歩き出す直前にもう一度だけ振り返る。

みみは男性の話を聞きながら、紙袋を大事そうに抱えていた。

(……楽しんでこい。そう言ったのは俺だ)

カミルは小さく息を吐いた。

仲間B(……ボス、気になって仕方ないんだろうな)

狼たちは何も言わず、ボスの後に続いた。

まだ誰も知らない男

ベーカリーの前。

男性は、みみの隣に立ったまま、柔らかな笑顔を浮かべていた。

男性「この街は初めてなんですね。でしたら、まだ知らない素敵なお店もたくさんありますよ」

みみ「そうなんですね。楽しみです」

男性「おひとりで観光ですか?」

みみ「はい。今日は自由に歩いてみようと思って」

男性「それはいいですね。せっかくですから、案内しましょうか?」

みみ「えっ、いいんですか?」

男性「もちろん。僕もこの辺りには詳しいので」

みみは少し嬉しそうに笑った。

みみ「ありがとうございます。でも、まだ行きたいお店があるんです」

男性「そうですか。では、またどこかで」

男性は穏やかに微笑んだ。

けれど、その目は笑っていなかった。

(……なるほど。ひとりで歩いているのか)

彼が見ていたのは、みみの柔らかな雰囲気と、警戒心の薄そうな受け答えだった。

人の好意を疑わず、素直に礼を言う。

そういう女性を探していた。

少し離れた通り。

カミルは仲間から店の報告を受けていた。

仲間A「ボス、東側の店舗は問題ありません」

カミル「ああ。次は?」

仲間B「西側の倉庫です。あと、さっきの女性ですが……」

カミル「みみか?」

仲間B「はい。知らない男性と話していましたが、普通の世間話のようでした」

カミル「そうか」

仲間たちは、特に不審には思っていない。

男性の身元も、目的も知らない。

ただ、通りすがりに声をかけた親切な人。

その程度の認識だった。

カミルも、この時点では何も知らない。

ただ、ひとつだけ気になっていた。

カミル(……あいつ、ずいぶん人懐こいな)

仲間A「ボス?」

カミル「何でもない。仕事を続けるぞ」

一方、みみはベーカリーを後にしていた。

みみ「次は雑貨屋さんに行こうかな」

紙袋を片手に、楽しそうに歩いていく。

その後ろ姿を、先ほどの男性が少し離れた場所から見送っていた。

男性(……また会えるといいですね)

その笑顔の裏にあるものを、まだ誰も知らなかった。

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作者について

みまち

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紅茶、珈琲、レモンが好き。【私がニヤニヤする物を置いております】

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