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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/10/30 📚 シリーズ: きまぐれまほろば夜行帖【本編】 📝 1,563文字 ✅ 全年齢

あらすじ

とある男性視点 笑顔を浮かべ、穏やかな声で話し、相手の警戒を解く。そうすれば、人間たちは彼を異物だとは思わない。(……人間というものは、ずいぶん簡単だ)

本文

とある男性視点

笑顔を浮かべ、穏やかな声で話し、相手の警戒を解く。そうすれば、人間たちは彼を異物だとは思わない。

(……人間というものは、ずいぶん簡単だ)

口元には、先ほどと変わらない柔らかな笑み。

けれど、その影の奥で、何かがゆっくりとうごめいていた。

彼は森を追われた。

魔獣とも、妖怪とも呼びきれないもの。

いくつもの異なるものが混ざり、濁りきった感情から生まれた異常種。

森に受け入れられず、森からも拒まれた存在。

男性はふと、公園の木々を遠くから眺めた。

(……緑のある場所は、好きではない)

そう呟くように思い、視線を外す。

先ほどの女性のことを思い出した。

柔らかな笑顔。人懐こい声。

そして、森へ向かっていった後ろ姿。

男性は、何も言わずに歩き続けた。

公園・男性視点

公園の小道を進んだ先に、ベンチがあった。

そこに、先ほどの女性が座っている。

みみはベンチの端にちょこんと腰掛け、足をぶらぶらと揺らしていた。

可愛らしい服装に、ふわりとした長い髪。

リンゴ印の巾着をそばに置き、木々の向こうを眺めている。

風が吹くたび、髪の毛先がさらさらと揺れた。

みみ「……ふふ」

何か楽しいことでも見つけたのか、小さく笑う。

足先が、またぶらん、ぶらん。

まるで、ここだけ時間がゆっくり流れているようだった。

少し離れた場所を通りかかった男性が、その姿に気づく。

(……また会った)

男性は歩みを緩めた。

先ほどと同じ、穏やかな表情を作る。

けれど、その目の奥では、森に捨てられた異常なものが、静かに彼女を見つめていた。

(あの女性……どうして、あんなに楽しそうなんだろう)

男性はまだ、声をかけなかった。

ただ、ベンチに座って足を揺らす彼女を、少し離れた場所から眺めていた。

見守り狼視点――幻燈街・裏通り

カミルがその場に到着したとき、仲間たちはすでに現場を囲んでいた。

人通りの少ない路地。

その奥に、一人の女性が横たわっている。

見た目には、眠っているようだった。

衣服に大きな乱れはない。顔にも目立った傷はなく、苦しんだ様子さえ残っていない。

けれど、もう息はなかった。

女性のそばに膝をつき、静かに様子を確かめる。

カミル「いつ見つけた」

仲間B「つい先ほどです。周囲に争った形跡はありません。ただ……妙な気配が残っています」

カミル「妙な気配?」

仲間B「獣とも妖ともつかない。どちらか一方ではないような……」

カミルの目が、わずかに細くなった。

ここは自分の縄張りだ。

この街で暮らす者も、訪れる者も、安心して歩けるように守ってきた。

その場所で、命がひとつ失われた。

カミル「……調べろ。現場を荒らすな。誰が何を見たのか、順番に確認しろ」

仲間A「はい」

カミル「被害者の身元もだ。家族や知人がいるなら、丁寧に知らせろ」

低い声だった。

怒鳴ってはいない。

けれど、仲間たちは誰も軽口を叩かなかった。

カミルはもう一度、女性の眠るような顔を見た。

カミル「……俺の縄張りで、何をした」

その声には、抑え込まれた怒りが滲んでいた。

仲間B(……ボスが怒っている)

それは、誰かを威圧するための怒りではない。

守るべき場所で、守れなかった命がある。

その事実に対する怒りだった。

公園・みみ視点

一方、そのころ。

みみは公園のベンチに座っていた。

足をぶらぶら揺らしながら、木々の間を吹き抜ける風を感じている。

みみ「……いい香り」

葉っぱの匂い。

湿った土の匂い。

街の中にある公園なのに、ここには自然の気配がちゃんと残っている。

みみは目を細めた。

(なんだか、落ち着くなぁ)

大樹のそばにいるときのような、懐かしい心地よさ。

長命種の身体が、森の気配を自然に受け取っているのかもしれない。

みみ「ふふ……気持ちいい」

もう一度、風が吹いた。

髪の毛先が揺れ、みみの頬をくすぐる。

みみはベンチの上で、また足をぶらぶら。

今はただ、この心地よさを楽しんでいた。

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作者について

みまち

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紅茶、珈琲、レモンが好き。【私がニヤニヤする物を置いております】

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