閑話――銀くん①
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
閑話 — お山の修行 朝のお山。銀は兄の前にちょこんと座っていた。
本文
閑話 — お山の修行
朝のお山。
銀は兄の前にちょこんと座っていた。
兄「銀、今日は基礎からやり直すぞ」
銀「ええー。また?」
兄「また、だ。人化の術も妖力の扱いも、基礎が大切だからな」
銀「……はーい」
(狐耳が少し横に傾く)
兄「まずは妖力を整える。焦らず、身体の中を巡らせてみろ」
銀「うん……」
(銀は目を閉じる。ふわふわの尻尾がゆっくり揺れた)
兄「そうだ。その調子だ」
銀「……んん」
兄「力みすぎるな。もっと自然に」
銀「むずかしいよ、お兄ちゃん」
兄「最初から上手くできる者はいない」
何度か繰り返すうちに、銀の周囲に小さな妖気が集まり始めた。
銀「……あっ!」
兄「できたな」
銀「できた! 見てた?」
兄「見ていたとも」
(銀の尻尾が嬉しそうにぶんぶん揺れる)
兄「だが、今日はここまでではないぞ」
銀「えっ……まだあるの?」
兄「もちろんだ」
銀「むぅ……」
(それでも銀は、兄の隣に戻って座り直す)
まだまだ修行は続く。
焦らなくていい。
一日ずつ、少しずつ。
銀は今日も、お山で頑張っている。🐾
閑話 — 大樹のそばで
朝のお山。
銀は兄と一緒に、大樹のもとへ来ていた。
大きく枝を広げる大樹。その姿を見上げる銀の狐耳が、ぴこりと動く。
銀「……大きいねえ」
兄「いつ見ても変わらないように見えるが、毎日様子は違う。よく見ておくんだ」
銀「うん」
(銀は幹にそっと手を添える)
兄「どうだ?」
銀「……あったかい」
兄「そうか」
銀「なんだか、みみのところにいるみたい」
兄は少しだけ銀を見た。
兄「大樹とみみは繋がっているからな」
銀「うん。知ってるよ」
(銀の尻尾がゆっくり揺れる)
兄「だからこそ、大樹を大切に管理しなければならない。お前も少しずつ覚えていくんだ」
銀「ぼくも、お兄ちゃんみたいにできる?」
兄「できるようになるさ。焦る必要はない」
銀「えへへ。がんばる!」
(銀はもう一度、大樹を見上げた)
まだ知らないことはたくさんある。
兄のように上手にはできない。
それでも、銀はこの大樹のそばで、少しずつ学んでいく。
兄「さて、今日はここまでにしよう」
銀「もう終わり?」
兄「続きは明日だ」
銀「うん!」
(ふわふわの尻尾が、嬉しそうに揺れた)
大樹の葉が、風にそよぐ。
今日もお山は穏やかだった。
子狐たちのお稽古
狐の里。
木々に囲まれた稽古場には、銀くんを含め、何匹かの若い狐たちが集まっていた。
実年齢は十五歳から二十歳ほど。けれど、妖かしたちは成長がゆっくりで、まだあどけなさの残る者も多い。
銀は仲間たちの間に座り、ふわりとした尻尾を横に置いている。
子狐A「銀、昨日の練習はどうだった?」
銀「うーん、少しだけ感覚がつかめた気がする。まだ安定しないけど」
子狐B「僕もだよ。霊力を集めるところまではできるんだけど、そのあとが難しいんだ」
銀「わかる。途中で散ってしまうんだよね」
そんな話をしていると、竜人の師匠が皆の前に立った。
師匠「それでは始めよう。今日は霊力を集めて、一定の状態に保つ練習だ。周りと比べず、自分の感覚を確かめること」
子狐たちはそれぞれ姿勢を整える。
銀も目を閉じ、静かに意識を集中させた。
(焦らないで……ゆっくり)
自分の内側にある霊力を探る。
少しずつ集まってきた感覚がした、そのとき。
ふわっ。
尻尾の毛がわずかに広がった。
子狐A「お、銀。今、少し集まったんじゃない?」
銀「えっ? 本当?」
師匠「いい感覚だ。ただ、そこで気を抜かないように。今の状態を保ってみなさい」
銀「はい」
銀はもう一度、目を閉じた。
今度は尻尾を動かさないように気をつけながら、集中する。
(できるかな……もう少し)
隣では仲間たちも、それぞれ真剣に取り組んでいる。
銀はひとりで学んでいるわけではない。
同じように練習し、時には失敗して、時には仲間の上達を喜びながら、少しずつ覚えていく。
その尻尾の先が、嬉しそうに小さく揺れていた。