レオンの気持ち

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/11/1 📚 シリーズ: 貴族社会の婚約日記 📝 1,606文字 ✅ 全年齢

あらすじ

アルバルト王国 貴族たちが多く住むとても華やかなこの王国 でもその裏にはたくさんの闇がある そんな王国で暮らす少年少女のちょっとした暮らしを描く日記 どうぞ最後までご覧ください

本文

シリルとレオンが親友、という設定も資料には無いです。第4話までの二人は「殿下」「ウォーカー」と呼び合う距離で、軽口はあっても親しさは見せていません。そこは今回の指定として上書きします。呼称も崩します。

レオンの前でだけ素が出る、という形で書きます。アリスの前では戻す。その落差があると、親友という設定が台詞だけでなく態度で伝わります。

広間の静けさが、ゆっくりと元に戻っていく。音楽はまだ鳴っていた。けれど誰も、それに合わせて踊ろうとはしなかった。

「ユノ嬢」

レオンの声は低くて、よく通った。ユノは一歩、前に出た。シリルが半歩遅れて、彼女の斜め後ろに立つ。

「はい、王太子殿下」

「堅いな。今日は夜会だ。……それに、君とは一度きちんと話しておきたいと思っていた」

アリスが、レオンの隣で微笑んだまま、わずかに首を傾けた。その仕草は愛らしく、けれどイエロートルマリンの瞳は、ユノの顔から一度も離れていなかった。

「婚約の話だ」

レオンは言った。まわりが、また少し静まった。

「ローズマリーとオーカー。筆頭と第二位が組めば、王家は何をされるか分かったものじゃない。……そう言われている」

「……はい」

「だが、俺は」

彼は言葉を切った。グラスを持たない手が、ゆっくりと胸の前で止まる。

「悪くないと思ってる」

ユノは顔を上げた。サファイアの瞳が、まっすぐにこちらを見ていた。冷たいと思っていた。凍らせるような目だと思っていた。けれど今は、その冷たさの中に、妙な静けさがある。

「王家は警戒する。父上も、宰相も、面白くは思わないだろう。それでも俺は、君たちの婚約を、ここで潰すつもりはない」

「……なぜ、ですの」

問いが口をついて出た。失礼だと分かっていて、止まらなかった。

レオンは少しだけ目を細めた。笑ったのかもしれない。判じるには、彼の顔は美しすぎた。

「潰せば楽だ。何も考えずに、決められた婚約を続ければいい。……でも、それじゃ誰も、自分の意思で何も選べないまま終わる」

その言葉は、ユノの胸の奥の、いちばん柔らかいところに落ちた。

「君は、自分の意思でそこに立ってるのか」

「……はい」

「なら、それでいい」

レオンは、そこで初めてシリルのほうを見た。その目つきが、ほんの少しだけ、ゆるんだ。

「おい、シリル」

「なんだよ」

シリルが、肩をすくめて返した。殿下、とも様、とも呼ばなかった。ユノは思わず、彼の横顔を見た。

「お前の婚約者を、王太子が公の場で認めた。そういうことだ。悪く思うなよ」

「悪く思うわけないだろ。……光栄だよ、レオン」

「嘘をつけ」

「半分は本心。残りは、お前に言われなくても分かってた」

レオンが、小さく鼻で笑った。広間の誰も見たことのないような、砕けた顔だった。二人のあいだに、短い、奇妙な沈黙が落ちる。ユノには、それが何の沈黙なのか分からなかった。

その沈黙を、アリスが裂いた。

「まあ、よかったですわ」

誰よりも明るい声だった。けれど、その声は、少しだけ高すぎた。

「レオン様がお認めになるなら、わたくしも安心です。ユノ様、ほんとうに、おめでとうございます」

彼女はそう言って、一歩、ユノに近づいた。広間の灯りが、茶髪を金色に染めている。

「……でも、ひとつだけ、伺ってもよろしいですか」

レオンの顔から、ゆるみが消えた。シリルも、笑っていなかった。

「王太子殿下がお認めになったのは、二人の婚約ですわ。……では、二人が本当に、その婚約を望んでいるのかどうかは、どなたがお認めになるのでしょう」

静寂が落ちた。アリスは微笑んだまま、ユノを見ていた。甘い声が、広間の空気をゆっくりと毒していく。

「だって、政略の婚約なんて、この国にはいくらでもありますもの。……ねえ、ユノ様」

シリルが、ユノの半歩前に出た。その背中は、さっきまでとは違う。軽さのない、まっすぐな背だった。

「アリス様」

声は、静かだった。

「それ、俺に聞いてる?」

アリスの微笑みが、ほんの一瞬、止まった。

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作者について

Kokone

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だいたい闇系と病み系ばっか書いてます! 友達に言ったら共感されましたw ハッピーエンドにしようとするともっと闇系とか病み系になるのはなんでw? ついでに私、学生です!

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