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第2話 丸髷の同志たち

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/11/2 📚 シリーズ: 大宇宙マルマゲドン 📝 4,670文字 ✅ 全年齢

あらすじ

丸髷は美しい。 古い日本髪の写真集を見て、丸髷の美しさに魅せられた若い女性、丸井月子。 彼女は、思い切って自分も丸髷にしてみたものの、周囲の人々から笑われてしまう。 傷ついた月子は、ある夜、星空を見上げて決心する。 「地球に丸髷の美しさを理解してくれる国がないのなら、宇宙に作ればいい!」 やがて、彼女の夢に共感する少数の仲間たちが集まり、秘密の宇宙船計画が始まる。 そして、誰にも知られずに宇宙へ旅立つ月子たち。 果たして、丸髷を愛する人々の理想郷は見つかるのだろうか? 丸髷と宇宙――全く関係のなさそうな二つのものが結びついたとき、奇想天外な冒険が始まる。 ちょっぴりおかしくて、心温まる、愛と夢と丸髷の宇宙物語。

本文

宇宙へ行こう。

そう決心した丸井月子だったが、

翌朝、目を覚ましてみると、早くも一つの重大な問題に気づいた。

「……どうやって?」

月子はベッドの上で首をかしげた。

宇宙船を買おうにも、どこで売っているのか分からない。

そもそも、宇宙船というものは、個人で買えるのだろうか。

月子はスマートフォンで調べてみた。

宇宙旅行には、想像を絶するほどのお金がかかるらしい。

「うわあ……」

画面に並ぶ数字を見て、月子は思わず声を上げた。

どうやら、気軽に出かけられる場所ではないようだった。

しかし、だからといって、諦めるつもりはなかった。

「まずは、仲間を探そう」

月子は、そう考えた。

自分一人では何もできない。

けれども、丸髷を美しいと思う人たちが集まれば、何かが変わるかもしれない。

月子はインターネットで、丸髷について調べ始めた。

すると、昔の日本髪を愛好する人々が集まる、小さな交流サイトを見つけた。

名前は『日本髪を愛する会』。

会員はそれほど多くないようだったが、

昔の髪型についての写真や感想が、静かに投稿されていた。

「こんなところがあったんだ……」

月子は嬉しくなった。

そこには丸髷を褒める投稿もあった。

『丸髷の曲線は本当に美しいですね』

『昔の女性たちの結髪技術には感心します』

『現代でも丸髷を楽しむ人が増えたらいいのに』

月子は、胸が温かくなるのを感じた。

自分だけではなかったのだ。

丸髷を美しいと思う人は、ちゃんと存在していたのである。

月子は思い切って会員登録をした。

そして、自分の丸髷姿の写真を添えて、文章を投稿した。

『初めまして。丸井月子と申します。

私は最近、丸髷の美しさを知り、自分でも丸髷を結うようになりました。

ところが、街を歩くと笑われてしまいます。

私は、丸髷が本当に美しいと思っています。

いつか、丸髷を愛する人々が集まって、

誰にも笑われずに暮らせる国を作れたら素敵だと思います。

できることなら、宇宙のどこかに、そんな国を作ってみたいです』

投稿してから、月子は少し恥ずかしくなった。

「宇宙に国を作りたい、なんて……変な人だと思われるかな」

けれども、文章を消すことはしなかった。

自分の本当の気持ちだったからだ。

翌日、サイトを開いてみると、いくつか返信が届いていた。

『丸髷、とてもお似合いですね』

『素敵な夢だと思います』

『宇宙という発想には驚きましたが、気持ちは分かります』

月子は、思わず笑顔になった。

「嬉しい……!」

そして、その中に、ひときわ明るい文章があった。

『月子さん、初めまして! 花村小春といいます。二十四歳です。

私も日本髪が大好きです!

丸髷姿、とってもきれいですね!

宇宙に丸髷の国を作るなんて、すごく面白いです。

ぜひ、お友達になってください!』

月子は、すぐに返信した。

『ありがとうございます! ぜひ仲良くしてください!』

こうして、月子と花村小春の交流が始まった。

小春は明るく、話し好きな女性だった。

日本髪だけでなく、着物や昔の暮らしの文化にも詳しかった。

二人は何度もメッセージを交換した。

そして、ある休日、実際に会ってみることになった。

待ち合わせ場所は、駅の近くの喫茶店だった。

月子は、その日も丸髷を結って出かけた。

以前のように笑われるのではないかと、少し不安だった。

けれども、小春に会うと、その不安はすぐに消えた。

「わあ! 月子さん!」

小春は目を輝かせた。

「本当に丸髷なんですね! すごくきれい!」

「……ありがとう」

月子は照れくさそうに笑った。

「私、こんなふうに褒めてもらえると、本当に嬉しい」

「だって、きれいなんですもの!」

小春は、にこにこしていた。

二人は喫茶店で、時間を忘れて話し込んだ。

丸髷の形の美しさ。

日本髪の歴史。

髪飾りの楽しさ。

そして、月子が宇宙に行きたいと思った理由。

「月子さん、本当に宇宙に行くつもりなんですか?」

小春が尋ねた。

「うん。できることなら」

「すごいなあ」

「でも、宇宙船なんて持ってないし、お金もないし……」

月子は苦笑した。

「夢だけは大きいんだけどね」

すると、小春は真剣な顔になった。

「私、その夢、好きですよ」

「本当?」

「ええ。丸髷が好きなだけなのに、笑われるなんて悲しいですもの。

そんなことを気にしなくていい国があったら、素敵だと思います」

月子は、胸がいっぱいになった。

「小春さん……」

「もし本当に宇宙へ行けるなら、私も一緒に行ってみたいです!」

小春は笑った。

月子も笑った。

こうして、月子には初めて、宇宙への夢を分かち合う仲間ができたのである。

それから数日後。

月子のもとに、交流サイトを通じて、一通の丁寧なメッセージが届いた。

『丸井月子様。

初めまして。白石隆之と申します。

あなたの投稿を拝見いたしました。

私は長年、丸髷の美しさに強い魅力を感じております。

あなたが宇宙に丸髷の国を作りたいとお考えになったことに、

大変興味を持ちました。

もしよろしければ、一度、お話を伺えないでしょうか』

月子は、驚いた。

とても礼儀正しい文章だった。

しかし、それ以上に驚いたのは、

宇宙への夢について、真剣に話を聞きたいと言ってくれていることだった。

月子は小春に相談した。

「こんなメッセージが来たんだけど……」

「へえ、白石隆之さん?」

小春は少し考えてから言った。

「まずはオンラインでお話ししてみたらどうでしょう。

二人だけじゃなくて、私も同席しますよ」

「うん。そうしようかな」

こうして、三人は画面越しに顔を合わせることになった。

白石隆之は、四十五歳ほどの、穏やかな雰囲気の男性だった。

落ち着いた声で、丁寧に挨拶した。

「丸井さん、花村さん。初めまして」

「初めまして!」

月子と小春も挨拶した。

白石は画面に映る月子の丸髷を見ると、嬉しそうに微笑んだ。

「実に美しい丸髷ですね」

月子は、思わず頬を赤くした。

「ありがとうございます……!」

「私は昔から、丸髷のあの優美な曲線が好きなのです。

今の時代に、こうして丸髷を結っておられる方に出会えるとは思いませんでした」

「私も、丸髷が大好きなんです!」

月子は嬉しくなって、つい身を乗り出した。

それから三人は、丸髷について語り合った。

白石は日本髪の歴史にも詳しく、月子の知らないことをいくつも教えてくれた。

やがて話題は、宇宙への夢に移った。

「丸井さん」

白石が尋ねた。

「宇宙に国を作りたいというのは、本当のお気持ちですか?」

月子は少し緊張した。

「はい。本気です」

「なるほど」

「もちろん、簡単じゃないのは分かっています。でも……」

月子は、少し言葉を探した。

「私は、丸髷が美しいって、心から思っているんです。

なのに、笑われることがあるんです」

白石は黙って聞いていた。

「だから、丸髷を美しいと思う人たちが集まって、

幸せに暮らせる国を作りたいんです」

「素晴らしいと思います」

白石は静かに答えた。

「人が何を美しいと思うかは、それぞれです。

自分の好きなものを大切にできる場所があるというのは、幸せなことですね」

月子は、深くうなずいた。

すると、白石は少し微笑んだ。

「実は、私はいくつかの会社を経営しておりましてね」

「そうなんですか?」

「その中には、宇宙開発に関係する事業もあるのです」

「えっ?」

月子は目を丸くした。

小春も驚いた。

「宇宙開発ですか?」

「ええ。小規模ではありますが、宇宙航行技術に関する研究にも出資しています」

白石は穏やかに続けた。

「もちろん、別の惑星へ行くというのは、とても大きな計画です。

簡単に実現できるとは申しません」

「はい……」

「しかし、まったく検討できない話でもないかもしれません」

月子は、一瞬、何を言われたのか分からなかった。

「……え?」

「あなたが本気なら、私も本気で考えてみたいのです」

月子は、しばらく言葉を失った。

夢物語だと思っていた宇宙旅行。

それを、真剣に検討してくれる人が現れたのである。

「ほ、本当に……?」

「ええ」

白石は微笑んだ。

「丸髷の美しさを愛する者同士、協力してみませんか」

月子の目に、思わず涙が浮かんだ。

「ありがとうございます……!」

小春も嬉しそうに笑った。

「すごい! 月子さん、宇宙に行けるかもしれませんよ!」

その日から、三人の秘密の計画が始まった。

白石は、自分の信頼する人々に、慎重に声をかけた。

宇宙開発に関わる技術者。

研究者。

そして、丸髷の美しさに共感する、少数の男女。

全員が同じ理由で参加したわけではなかった。

丸髷が好きな人もいれば、宇宙への挑戦そのものに心を動かされた人もいた。

しかし、みんなに共通していたのは、月子の夢を笑わなかったことである。

計画は、世間には公表しないことにした。

注目を集めれば、余計な騒ぎが起こるかもしれない。

月子自身も、大勢の人に知られることを望んでいなかった。

ただ、同じ夢を持つ仲間たちと、静かに宇宙を目指したかったのである。

白石は、自分の所有する研究施設の一つを、この計画に使うことにした。

必要な資金も、主に彼が負担する。

月子は恐縮した。

「白石さん、そんなにお金を使っていただいて、いいんでしょうか……」

「気になさらないでください」

白石は笑った。

「私にも、長年の夢がありますから」

「夢?」

「丸髷を美しいと思う人々が、堂々とその美しさを語り合える場所を作ることです」

月子は、白石を見つめた。

「あなたの夢と、私の夢は、どこか似ているのでしょうね」

白石はそう言って、穏やかに微笑んだ。

やがて、秘密の研究施設では、宇宙船の設計が始まった。

月子と小春も、ときどき施設を訪ねた。

そこには、月子には理解できない機械や図面が、たくさん並んでいた。

「すごい……」

月子は目を輝かせた。

「本当に、宇宙船ができるんですね」

「まだまだ、これからですよ」

白石が答えた。

小春は月子の丸髷を見て、笑った。

「月子さん、宇宙船に乗るときも丸髷にするんですよね?」

「もちろん!」

月子は即答した。

「だって、丸髷の国を探しに行くんだもの」

「そうですよね!」

二人は顔を見合わせて笑った。

白石も、つられて笑った。

その笑い声は、まだ何も完成していない研究施設の中に、明るく響いた。

月子は、ふと思った。

以前、丸髷にして街を歩いたときは、笑われることが悲しかった。

けれども、今は違う。

ここには、自分の丸髷を美しいと言ってくれる人たちがいる。

自分の途方もない夢を、真剣に考えてくれる人たちがいる。

それだけでも、月子は幸せだった。

そして、そんな仲間たちと一緒に、宇宙へ行けるかもしれないのである。

「白石さん、小春さん」

月子は、二人に向かって言った。

「私、絶対に、丸髷の国を見つけたいです」

小春が笑顔でうなずいた。

「一緒に頑張りましょう!」

白石も静かにうなずいた。

「ええ。夢に向かって、一歩ずつ進みましょう」

月子は、研究施設の窓から空を見上げた。

青い空の向こうには、あの広大な宇宙がある。

そこに丸髷を愛する人々の国を作る。

それは、まだ遠い夢だった。

けれども、もう、一人きりの夢ではなかった。

丸井月子の夢は、少しずつ、多くの人々の夢になろうとしていた。

そして、研究施設の奥では、

誰にも知られない一隻の宇宙船が、静かに形を取り始めていた。

その宇宙船が、やがて地球の人々を驚かせることになるとは、

まだ誰も知らなかった。

(第2話 完)

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作者について

ケイモモ

ケイモモ

はじめまして、ケイモモです。 相棒の「ちいもも」と一緒に、物語の世界をのんびり旅しています。 読む人の心に、そっと小さな花が咲くような。 笑ったり、ドキドキしたり、ときには胸がきゅっとなるような...

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