第12話 圧倒的な性能
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
町工場の修理工・カイトは異世界に召喚されるも、ハズレスキル【リサイクル】を理由に「廃棄の谷」へ追放されてしまう。 だが、その真価はガラクタを神話級へと創り変える【超・資源再生(アップサイクル)】だった! 折れた剣は不壊の魔剣に、毒の霧は無限のエネルギーに、捨てられた機械人形は絶世の美少女(最強)へと大変身! 拾い人の少女や龍人族、没落令嬢らと共に、温泉付きの快適な要塞都市を築き上げていく。 一方、使い捨て社会のツケで破滅寸前の王国が「戻ってきて国を建て直してくれ!」と泣きついてくるが―― 「断る。俺の居場所は、あの最高のゴミ捨て場だ」 ガラクタだらけのどん底から始まる、痛快な領地開拓ファンタジー!
本文
「さて、戦うなら武器が必要だな。ルナ、これを使ってくれ」
俺は作業部屋の奥から、布に大切に包まれていた一振りの剣を取り出し、ルナへと差し出した。
それは、最深部のクレーターでルナと一緒に回収してきた、古代の折れた魔剣を丹念にアップサイクルしたものだ。
刀身は、傷一つないまばゆい白銀の輝きを放っている。
不純物を極限まで削ぎ落とした神聖魔導鋼をベースに、超伝導ワイヤーを芯として打ち込み、柄にはルナの魔力波長と完全に同調する思念金属を組み込んである。
「これは……神聖魔導剣、ですか?」
ルナが両手でかしこまって剣を受け取った。
鞘から静かに抜いた瞬間、キィィンと澄み切った高い金属音が、作業部屋に涼やかに響き渡る。
「ああ。ルナの新しい骨格と魔力回路に合わせて、重心もミリ単位で調整しておいた。大気中の魔力を吸い込んで、刀身に高密度の衝撃波を纏わせることができるぞ」
「……っ」
ルナは剣を軽く一閃させ、その風切り音に青い目を丸くした。
まるで最初から自分の手足の一部だったかのように、吸い付くように手のひらになじんでいる。
「カイト様……素晴らしいです。手首への負荷が完全に相殺され、私の魔力が一切の抵抗なく切っ先へと伝達されています。これほどの業物、旧時代の宝物庫でも見たことがありません」
「ルナが使うんだから、世界一の剣じゃなきゃ意味がないからな」
「…………っ」
俺が笑って言うと、ルナはまたしても白い頬を淡い桜色に染めた。
そして、パッと顔を背けてツンとした表情を作る。
「……べ、別に、お世辞を言われても出力は上がりません。ただ、手頃で使いやすい道具だと事実を述べただけです」
「あはは! ルナちゃん、また分かりやすくツンツンしてる! 可愛い〜!」
「エマ様、私は兵器です。『可愛い』という評価は演算エラーを引き起こすため、禁止します」
むっと唇を結ぶルナに、エマが楽しそうに笑い声を上げる。
二人ともすっかり打ち解けたようで何よりだ。
「よし、それじゃあ外の害虫退治といくか」
俺たちは工房の正面ハッチを開け、外の荒野へと足を踏み出した。
屋上の清浄タワーのおかげで、拠点周辺の空気は高原のように澄み渡っている。
だが、その防毒結界の境界線のすぐ外側――紫色の霧が蠢く暗闇の奥から、ドスン、ドスン、と大地を揺るがす不気味な地響きが近づいてきていた。
「グルルルルル……!」
「ギギギギギギッ!」
霧をかき分けて姿を現したのは、十数匹のスクラップ・ハウンドの群れ。
そして、その中央にそびえ立つ、ひときわ巨大な影だった。
「ひゃああああっ!? な、なにあの大きいの!?」
エマが俺の背中に隠れながら悲鳴を上げた。
そこにいたのは、体長5メートルを優に超える巨大な魔獣だった。
何十台もの壊れた魔導装甲車の残骸が、ドロドロとした黒い汚染魔力によって無理やり継ぎ接ぎされ、巨大な2足歩行の巨像――【ジャンク・ゴーレム】の形を成している。
丸太のように太い腕には、巨大な鉄骨が棍棒のように握られていた。
「あんなの、王国の重装騎士団が20人以上で囲んで、大魔法を何発も撃ち込んでようやく倒せるような特級の廃棄魔獣だよ! いくらルナちゃんでも、あんな鉄の塊相手じゃ……!」
「エマ様、下がっていてください」
ルナが静かに前に進み出た。
メイド服の裾が風に揺れ、銀色の長髪がふわりと広がる。
「カイト様。迎撃の許可を」
「ああ、許可する。思う存分暴れてこい」
「承知しました。――戦闘モード、起動」
ルナの青い瞳が、鋭い光を宿した。
次の瞬間――。
「ドォォォォンッ!」
大地が爆発したかのような轟音が響いた。
ルナの足元にあった鋼鉄の瓦礫が粉々に砕け散り、彼女の姿が一瞬でかき消える。
目にも留まらぬ超高速の踏み込み。
「えっ……!? 消えた!?」
エマが目を白黒させる。
次の瞬間には、ルナはすでに100メートル先のスクラップ・ハウンドの群れのド真ん中に立っていた。
「【神聖魔導剣・抜刀】」
「キィィィィィンッ!」
白銀の閃光が、水平に円を描いて滑らかに薙ぎ払われた。
空気が両断され、真空の刃が広がっていく。
「ギャオッ――!?」
周囲にいた5匹のスクラップ・ハウンドが、悲鳴を上げることすら許されず、胴体を真っ二つに両断されて光の粒子へと弾け飛んだ。
豆腐でも切るかのような、滑らかすぎる一閃。
「グルアアアアッ!」
背後から飛びかかってきた別の個体に対し、ルナは振り返ることすらしなかった。
流れるようなバックステップで爪を紙一重でかわすと、神聖魔導鋼の踵を鋭く跳ね上げる。
「ドゴォォォンッ!」
芸術的な後ろ回し蹴りが、魔獣の顎を真正面から粉砕した。
2メートルを超える巨体がまるで弾丸のように空高く跳ね上がり、地面に激突して砕け散る。
「す、すごい……! 速すぎて目で見えないよ……!」
エマが口をあんぐりと開けて固まっている。
だが、本命は中央の巨像だ。
「オオオオオオオンッ!」
仲間を一瞬で消し飛ばされたジャンク・ゴーレムが、怒りの咆哮を上げ、巨大な鉄骨をルナの頭上めがけて全力で振り下ろした。
直撃すれば、家屋すら粉々に圧壊する暴力的な一撃。
だが、ルナは逃げなかった。
白銀の剣を両手で構え、真正面からその鉄骨を受け止める体勢をとる。
「ルナちゃん、避けてええっ!」
エマの悲鳴が響く中、鉄骨と白銀の剣が真正面から激突した。
「ズドォォォォォォンッ!!」
凄まじい衝撃波が巻き起こり、周囲の瓦礫が四方八方へと吹き飛ぶ。
だが――ルナは、1ミリも後退していなかった。
華奢な少女の両腕が、5メートルの巨人の全力の一撃を、片膝すら曲げずに完全に受け止めていたのだ。
「カイト様の施してくださった調整……完璧です」
ルナは平然とした声で呟いた。
「衝撃吸収率、100パーセント。全身の骨格フレームの歪み、ゼロ。主魔力炉の出力、以前の稼働限界を大幅に超過しています」
「ルナの潜在能力はこんなもんじゃないぞ! 一気に決めろ!」
「はい、カイト様!」
ルナの全身に張り巡らされた青い魔力ラインが、眩い光を放った。
大気中の魔力を吸い上げ、白銀の刀身に超高密度のプラズマが収束していく。
「【一刀両断・星塵破(スターダスト・ブレイク)】――!」
「バチチチチッ! ドガアアアアアアンッ!」
下から上へと振り抜かれた白銀の一閃が、巨大な鉄骨を真っ二つに切断し、そのままジャンク・ゴーレムの巨体を股下から脳天まで一気に両断した。
静寂。
次の瞬間、巨像の亀裂から無数の青い光の柱が噴き出し、山のような巨体がガラガラと音を立てて崩壊していった。
核を破壊された汚染魔力が霧散し、ただの浄化された金属の瓦礫となって地面に落ちる。
ザッ、と音を立ててルナが着地し、華麗に剣を払って鞘へと納めた。
「戦闘終了。脅威の完全排除を確認しました」
涼しい顔で歩み寄ってくるルナ。
身に纏うメイド服には埃一つついていない。
「つ、強すぎるよ……! ルナちゃん、一人で軍隊レベルじゃん……!」
エマがヘナヘナと腰を抜かしてその場に座り込んだ。
「……ふん、この程度、カイト様の武器と身体があれば当然の戦果です」
ルナは小さく胸を張り、得意げにフンと鼻を鳴らした。
感情を隠そうとしながらも、褒められたくて仕方がない子どものような表情が、なんとも微笑ましい。
「よくやったな、ルナ」
「カイト様……ありがとうございます」
俺が頭を優しく撫でてやると、ルナは目を細めて気持ちよさそうに目を伏せた。
「さて、散らばった残骸は最高の資材だ。全部【分解】して回収しておくか」
俺は転がっているゴーレムの残骸に手をかざし、高純度の重魔導鋼インゴットへと再構築していった。
これで拠点の防壁をさらに強固に強化できる。
だが――その時だった。
「ゴリッ、ガリガリガリッ……!」
「バキッ、バリバリバリバリッ……!」
谷のさらに奥深く――岩陰の向こうから、不気味で異様な音が響いてきた。
「……ん? なんだ、この音……?」
「ひっ……!? な、何かが……硬い金属を噛み砕いて食べてる……!?」
エマが怯えたように耳を塞ぐ。
まるで、巨大な怪物が鉄くずをボリボリと貪り食っているかのような、激しい咀嚼音が暗闇に反響していた。