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quintus=5:beside ↦ gravity─傍らの内は外に垂れる重さ

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/11/5 📚 シリーズ: literalconnotation ─ なみだの魔法円から現れたのはあたしでした。 📝 4,382文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

夫の浮気を問い詰めた明楽メルは、勢いのまま足元の水たまりに魔法陣を描いた。 「異世界に行く」 もちろん、本当に行けるとは思っていなかった。 ところが次に目を覚ました場所は見知らぬ部屋。しかも自分の体は小学校低学年ほどに幼くなっている。 そんなメルを拾ったのは、銀髪の美青年――自称・悪魔のヴィザーゴだった。 「名前はアキラにしようか」 妙に馴れ馴れしく、人の思考を勝手に読み、肝心なことほど妙な言い回しをするヴィザーゴ。 その従者である三尾の狐ルーモと白山羊ヴェーロ。 言葉も常識も違う世界で、メル改め“アキラ”の奇妙な生活が始まる。 けれど、この世界はどうもおかしい。 消えたはずの傷。 元の自分とは異なる身体。 自分の真名を知る者たち。 ヴィザーゴが口にする「層」と呼ばれるもの。 そして、異世界へ来たはずなのに再び現れる、彼女がいた世界。 ここは本当に「異世界」なのか。 そもそも、自分は何者なのか。 ――まあ、それはそれとして。 服は欲しい。 靴も欲しい。 ご飯は食べたい。 旦那は一発殴っておきたい。 深刻になりきれないメルと、善良とは少々言い難い悪魔。 行き先のわからない二人が辿るのは、偶然でも、運命でもない。

本文

「あきらー!おふろしましょ!」

 解体を目の当たりにして、思わずヴィザーゴさんにしがみついていたあたしは、部屋に戻っていた。

 そういや、昨夜は色々なごたごたで入浴していない。

 体の不快……特に髪の毛の不快を感じてなくて思いもしなかったのが本音で、言われて思い出した。

 チャルマさんの魅惑的なお誘いではあるけど、さて?お風呂とか入っていい体なんでしょうか?

 ヴィザーゴさんの顔を覗くと、

「僕は行かないよ」

 って、そうでしょう。

 いくら一見幼児でも、あたしたちは乙女でしてよ。

「ここは共用だよ」

 共用?

「蒸し風呂ってやつ。蒸気が苦手なんだよね」

 蒸し……サウナですか?

 北欧のサウナみたいな感じかね?

 掘っ立て……ログハウスみたいな小屋に、男女で入る、みたいな。

「そのイメージはほぼ合ってるかもね」

 そうなんだ。

 サウナと聞いて、昨日開けられてしまったピアスを思い出した。

 ピアスとサウナって、相性良くないよね?

 単純に金属つけて、熱いとこってよくない気がする。

 ピアスとは無縁だったからなー。

「ちゃんと処理してるし、金属は使ってないから構わないけど」

 へえー。

 どうやって耳についてんだ?

「埋めてる感じかな?」

 はい?

「落とさなくて、いいでしょう?」

 ……はあぁ。

「で?お風呂とかって、大丈夫なの?」

「何が?」

 そこで、そう返されるとは。

 体感や触感に違和感はないのよね。

 けど、体内に関してはしっくりこない。

「壊れても直せるよ」

 なんか、違う。

 そうじゃない。

「んとね。壊れること前提じゃなくて、壊さないようにしたいんだけど」

「どうして?在る物は壊れるよ」

 ……まあ、そうですね。

「在る物は無くなるよ。例外なく、ね」

 ……まあ……あれ?なんの話だっけ?

「お風呂だねぇ。行ってくればいい。Experientia docet. だよ」

 経験ねえ。

 お風呂の話だよね?

 いっか。

「チャルマさん、行こう」

 って言うと、チャルマさんがめっちゃ笑顔を向けてくれた。

 愛い奴め。

「これどうぞ」

 チャルマさんが、畳まれた布を渡してくれる。

 タオルかな?

 広げると、チャルマさんもお召しの貫頭衣。

 旅館の浴衣感覚なのかね。

「これきて、はいるんだよ!」

 ご説明、ありがとうございます。

「ヴィザーゴさん、着替えるからおろしてね」

 ヴィザーゴさんは、あたしの頭に、自分の額をこつんと当ててから下ろしてくれた。

「行ってらっしゃいませ、ご主人様」

 何読んでるんだよ。

「あれ?ルーモは?」

 浴室の中に入って、フォルティオさんに先ずかけられた一言。

 ブレないな、このヒト。

 思うに、ルーモさんは寝る時に狐になる。

 ということは、狐が本来の姿だろうし、お風呂は好きではないだろう。

 あたしは首を横に振ると、あからさまに肩を落とすフォルティオさん。

「あきら!こっち」

 チャルマさんが腕を引く。

 張り切ってらっしゃいますね。

 真ん中にあった、噴水みたいなやつからとろとろと湯気とともに出ているのは、お湯……温泉かな?

 近寄って、手を差し出そうとしたら、チャルマさんのちっさい体で、がっとその手を制された。

「んとんと、あついよ!あぶないよ!」

 源泉なのかな?

 備え付けのベンチみたいなところに座って、湯気を浴びる。

 ああ、噴水から湧き出てるお湯は床にも流れて、簀の子の隙間から湯気が出てるのか。

 ホントにサウナですね。

 ……

 チャルマさんも、フィリーノさんも、フォルティオさんもカヴァリーロさんも、汗ばんでる。

 あたしは、想像してはいたが、全く汗がない。

 と、いうか……

 熱いと感じない。

 こういうことは、言っててくれてもいいと思うぞ?ヴィザーゴさんよ。

 しばらくすると、男性陣は入ってきた扉とは別の扉を開けて、出ていった。

 そこから外に出るのですね。

 お湯の流れが止まり、チャルマさんが手を引く。

「つぎはこっちだよ」

 朝、洗顔した方に連れて行かれると、フィリーノさんが手ぬぐいを絞っていて、

「はいどうぞ」

 と、渡される。

  ??

「こうするんだよ!」

 チャルマさんが手ぬぐいを広げて、頭をゴシゴシしてる。

 髪は洗わないのかな?

 再び手ぬぐいを水に浸し、絞る。

 チャルマさんに倣って、貫頭衣から出てる、顔や手足を拭う。

「じゃあ、私は後片付けをするから、チャルマはアキラを食堂に連れて行ってね」

「はあーい!」

 これで終わりなの?と、思うとお風呂の概念が、ぶっ飛びますね。

 チャルマさんとお手々を繋いで食堂に向かう。

 向かってるのだよね?着替えないのかな?

 そういえば、この服、湿ってないな。

 いや、ほんのりは湿ってるけど。

 体に張り付くほどではない。

 まあ、郷に入っては郷に従え、でしょう。

 チャルマさんに従いましょ。

「すっぱかりふらーしゃす♪あんでぃりでぃりでぃりあ♪」

 ……チャルマさん、お気に入りですね。

「お帰り!アキラ!」

 食堂に入ると、まるで館の主のようにヴィザーゴさんが食卓についていた。

 ホントの館の主のカヴァリーロさんと、フォルティオさんが、食事の準備をしてるのに、ですよ?

 ルーモさんとヴェーロさんだって手伝ってるのに。

 ……手伝っているのか?自分の分を確保しているだけなのか?

 自分たちの分を取り分けると、さっさと着席する。

 先に着席したルーモさんに、フォルティオさんが追加でいろいろ世話を焼く。

 けど、要らないものを選り分けるルーモさん。

 かっけぇな。

 てか、男のヒトが甲斐甲斐しく食事の準備をしてるのは、何ともはや。

 旦那は爪の垢でも舐めるがいいよ?

「で、どうだった?」

 膝に乗せようとするヴィザーゴさんを無視して席につく。

 ん?ああ。

「ねえ?これ、なんでできてるの」

 着ているものを指で摘む。

「……布?」

 ……

「綿とか、麻とか、アクリルとか、レーヨンとか。そういうの聞いてるんですが?知らないならいいよ」

「ああ、そういうことね。今日は遅いから明日見に行こう。暗いとつまんないからね。今は兎だ」

 兎っ!

 はっ!と、食卓に目を走らせる。

 そこには、こんがりと焼き目を有した、兎さんだったものが、ヘソ天で眠られておられた。

 げっ!

「僕を見たフィリーノたちとおんなじ反応だねぇ」

 けたけたと笑っておられるが……良いんですか?それ。

「あきら!あしたもあそぼうねっ!」

 部屋まで案内してくれたチャルマさんは、そう言い残してカヴァリーロさんに抱っこされていった。

 カヴァリーロさんの肩越しに手を振るチャルマさんは何とも愛らしい。

「明日、チャルマさんもご一緒していいよね?」

「いいんじゃない?僕は構わないけど」

 構わない……許可なんだろか?

 無関心なんだろうか?

「そのままだよ」

 んー……

「難しいことは止めにして、今日はもう休もうよ。ルーモヴェーロももうMetamorphosisを解いてるよ」

 めたもるふぉしす?メタモルフォーゼとは違うのかね?

 こつん、

 ヴィザーゴさんが額を付ける。

「一緒だね」

 そうなんだ。

「ルーモさん、ヴェーロさんはどっちが本当?」

 変な聞き方。

「どっちも本当だよ」

 変な返し方。

 まあ、いいか。

 ルーモさんは、狐の姿で窓から飛び出して行った。

 そこは玄関じゃないと思う。

 窓の下では、ヴェーロさんが山羊の姿で丸くなってる。

 自由だな。

 どちらが本当とか、会って二日の奴にとやかく言われたくはないよね。

「二日?!」

 思わず声に出る。

「二日だねえ」

「もう二ヶ月くらい過ぎた気になってた!」

 旦那と言い争って、奇妙なとこに着いて。

 旦那殴って、別のあたしに譲って。

 別のあたしの明楽を覗いて。

 富士山見て、チャルマさん探して。

 こんがり焼けた兎さん見て……

 そっかあ、二日か。

「別のあたしの葬式は終わったのかな」

「行く?」

「行かない。悪趣味極まりない」

 ヴィザーゴさんは、あたしの頭を撫でる。

 優しげに微笑んで、あたしを覗き込む。

 いつの間にか、真剣な眼差しに変わっていて不思議な色の瞳に吸い込まれそうだ。

 何色なんだろう?

 一言では言い表せない、不思議な色。

 ――――

「堕ちないねぇ」

「落ちません!」

 くくっと、笑い出すヴィザーゴさん。

 と、いうか。

 あたしには一瞬だったにらめっこだけど、思ったより時間は経っていたようだ。

 貫頭衣は、ネグリジェに変わり、ベッドの上に座るヴィザーゴさんの脚の間に収まってる。

 一体、いつの間に、

「だいたい、あたし落としてどうすんの?食べるの?」

 ふっと、笑いを止めて、妙に艶めかしい表情であたしの頬を両手で挟む。

 な、なに?!

「僕はただ、アキラがどんなふうに悦ぶのか興味が湧いただけだよ。食べられたかった?」

 ……不穏なワードはスルーを決め込もう。

 きっと、スルーしたことはバレてるんだろうけど。

「悪魔って、やっぱり食べるの?ありめんとむって、餌って浮かんだんだけど」

 ヴィザーゴさんは、あたしの頬からゆっくりと手を離すと、顎に手を当てた。

 少し間をおいて、

「突拍子もないこと言い出すねぇ。兎みたいに食べるってこと?アキラたちの“悪魔”じゃあるまいし、そんなこともう何年もやってないよ」

 くすくすと笑いながら言うけど、聞き逃しませんでしたぜ?

「以前は食べてたの?」

「望まれたからねぇ。兎のほうが美味しいよ?」

「チャルマさんが、ありめんとむってのは?」

 ヴィザーゴさんは一段と考え込む。

 発音、違ってました?

 いや、こんなときこそ読めよ。

「ああ、あの時の。アキラは聡いねぇ。alimentumは言い過ぎだったよ。secundae mensae――第二のテーブルだね。僕らは直接は食べないよ。稲を食べるほうがマシだよ」

 メインか、デザートかなだけの話なのでは?!

「僕らは、命は取らないよ」

 相変わらず、クイズのような禅問答だね。

 ……笑い声が聞こえないと思ったら、ルーモさんとヴェーロさんが、指を鳴らした時みたいな顔になってる。

「よりによって……sermoとか……」

 説教嫌うとか、やっぱ悪魔なんですかね?

 とん、と外から戻ってきたルーモさん。

 ぶるって体を振る。

 逆立った毛が、ゆっくりと滑らかな流れを作る。

 さ、触りてえ。

「水浴びしてきたみたいだね」

 ヴェーロさんの側に行き、まあるくなるルーモさん。

 ドライヤーがあれば乾かして差し上げるのに。

「触ると怒られるよ?ルーモは怒ると怖いんだ。体毛は魔法で乾かしてるから安心していいよ」

 心配ではない。

 大義名分だ。

「アキラたちは難儀だねぇ……」

 ヴィザーゴさんが、呆れたように笑った。

「さあて。明日は大変だよ、多分。早く休もう」

 ……って、ヴィザーゴさん。

 肘枕で横たわってらっしゃいますが、

 何故、胸の前をぽんぽんするし?

 ――ま、そこしか行くとこはないんだろうけどさ。

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作者について

有城 砂生

有城 砂生

理であそび 律にあやつる せつなゆたう はざま ワタシはログ。 律であそび 理をあやつる

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