第14話 至高の魔導ジュレ
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あらすじ
町工場の修理工・カイトは異世界に召喚されるも、ハズレスキル【リサイクル】を理由に「廃棄の谷」へ追放されてしまう。 だが、その真価はガラクタを神話級へと創り変える【超・資源再生(アップサイクル)】だった! 折れた剣は不壊の魔剣に、毒の霧は無限のエネルギーに、捨てられた機械人形は絶世の美少女(最強)へと大変身! 拾い人の少女や龍人族、没落令嬢らと共に、温泉付きの快適な要塞都市を築き上げていく。 一方、使い捨て社会のツケで破滅寸前の王国が「戻ってきて国を建て直してくれ!」と泣きついてくるが―― 「断る。俺の居場所は、あの最高のゴミ捨て場だ」 ガラクタだらけのどん底から始まる、痛快な領地開拓ファンタジー!
本文
「お兄ちゃん、お湯沸いてるよ! 温かいタオルもいっぱい用意した!」
工房のリビングに駆け込むと、エマが先回りしてソファの上にふかふかの清潔な毛布を敷いて待っていた。
「助かる、エマ。ヴィオラの泥を拭いて、身体を冷やさないように温めてやってくれ」
「任せて! ……うう、角も尻尾も泥だらけで可哀想に……」
エマが手際よく温かい蒸しタオルでヴィオラの顔や手足を丁寧に拭っていく。
俺は作業着のポーチから取り出した特級ポーションを、ヴィオラの乾いた唇に数滴垂らしてやった。
淡いエメラルドグリーンの光が喉元を通り抜けていき、苦しげだった呼吸がわずかに落ち着きを取り戻す。
「内臓の傷はこれで塞がるはずだが……根本的な『魔力飢餓』は治らない。メシを作ってくる」
「カイト様、調理のお手伝いをいたしましょうか?」
ルナが心配そうにサファイアの瞳を向けて尋ねてくる。
「いや、ルナはエマと一緒にヴィオラを見ていてくれ。ここからは――職人の、いや、シェフの腕の見せ所だ」
俺は作業部屋へと足早に向かい、扉をしっかりと閉めた。
作業台の上に、選りすぐりの素材を並べる。
最深部のクレーターで回収してきた、古代の高純度ミスリル鉱石の削り粉。
屋上の清浄タワーから抽出した、不純物ゼロの超高密度魔力液。
そして、先ほど回収した、甘い果実のような香りを放つ薬用ハーブのエキスだ。
「金属を食わなきゃ生きられないなら、胃腸に負担をかけずに、極上の魔力だけを一瞬で吸収できる形にしてやればいい」
普通なら、金属を食べるなんて不可能な話だ。
だが、金属を分子レベルで分解し、別の物質へと再構築できる俺の【超・資源再生(アップサイクル)】なら、不可能ではない。
「【解析(スキャン)】――【分解・精製(ディスアセンブル)】!」
手のひらからエメラルドグリーンの光が溢れ出す。
冷たく硬いミスリル鋼が、光の中でチリチリと熱を帯びて微粒子へと分解されていく。
金属特有のエグみ、サビの匂い、有毒な鉱物成分を完全に消滅させ、純粋な『霊導金属の旨味と魔力』だけを抽出する。
そこに、ハーブのエキスと超高密度の魔力液を注ぎ込んだ。
「【超・資源再生(アップサイクル)】――食性転換再構築!」
「ジュワアアアッ!」
光の渦の中で、信じられない変化が起きた。
液体と金属の微粒子が美しく溶け合い、トロリとした粘度を帯びて固まっていく。
出来上がったのは――深海のように澄んだエメラルドグリーンに輝く、ぷるぷるのゼリー状の物体だった。
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【完成品】至高の星屑魔導ジュレ(品質:神話級)
【効果】
・竜種および金属食生体に対する完全栄養補給
・魔力の即時超急速充填(通常の魔導金属の百倍効率)
・消化器系の完全保護・強化
・味:爽やかな甘みと濃厚な魔導のコク
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「よし、完璧だ。見た目も金平糖を散りばめたジュレみたいで美味そうじゃないか」
俺はガラスの器にたっぷりと盛り付け、銀のスプーンを添えてリビングへと戻った。
リビングでは、エマに体を綺麗に拭いてもらったヴィオラが、毛布に包まってピクピクと鼻をひくつかせていた。
「んん……? なに……この、すっごくいい匂い……?」
うっすらと赤い瞳が開かれる。
焦点が定まると、ヴィオラの視線は俺が持っている器へと釘付けになった。
「あ、気がついたか」
「お、お前はさっきの……! って、なにそれ!? すっごい高純度の魔力の匂いがする……! でも、金属の形をしてない……!?」
「お前が食うための食事だ。弱った胃腸でも一瞬で消化できるように、ミスリル鋼をジュレ状にアップサイクルしたんだよ。ほら、一口食ってみろ」
俺がスプーンですくって口元に差し出すと、ヴィオラはおそるおそる、警戒する子犬のように舌先をそっと伸ばした。
「ペロッ」
触れた瞬間、ヴィオラの全身がビクンッと大きく跳ね上がった。
「…………っ!?」
「ど、どうしたのヴィオラちゃん!? まずかった!?」
心配そうに覗き込むエマ。
だが、次の瞬間――ヴィオラの大きな赤い瞳から、ボロボロと大粒の涙が溢れ出した。
「な、なんじゃこりゃああああっ!? あ、甘くて、冷たくて、ぷるぷるしてて……噛むたびに極上のミスリルの魔力が、ジュワッて口いっぱいに広がるうううっ!」
「お、おい!?」
「うまい! うますぎる! こんなの食べたことない! 器ごとよこせえええっ!」
ヴィオラは俺の手から器とスプーンをひったくると、目にも留まらぬ猛スピードでジュレを口の中へとかき込み始めた。
「んぐっ、んぐっ、はふっ! あまぁい! 美味しいよぉぉぉ! サビの味がしない! 喉が痛くない! お腹の中がポカポカして、魔力が……魔力がどんどん湧いてくるううっ!」
あっという間に器は空っぽになり、ヴィオラは器の底までペロペロと綺麗に舐め尽くした。
その瞬間、ヴィオラの全身からカアッと眩い真紅の闘気が立ち上った。
泥だらけだった頭の角はルビーのように艶やかに輝き、尻尾の赤銅色の鱗が一枚一枚力強く逆立つ。
青白かった肌には健康的な赤みが差し、小柄な身体から放たれる生命力は、さっきまでの死にかけの状態が嘘のように満ち満ちていた。
「ふはぁぁぁ……! 生き返ったぁぁぁ……!」
ヴィオラはソファの上に仁王立ちになり、満足そうにお腹をポンと叩いた。
「すごい……! 角もお肌もツヤツヤだよ!」
エマが手を叩いて喜ぶ横で、ヴィオラはカッと目を見開き、ソファから飛び降りて俺の足元へと滑り込んできた。
そして、ガシッと俺の作業着のズボンにしがみついてきたのだ。
「お前……いや、あなた様は神か!? あんな神話級の美味いご飯、王宮の宝物庫の魔剣でも味わえなかったぞ!」
「神じゃない、ただの修理工だ」
「頼む! 私を専属の護衛として雇ってくれ! あのジュレを毎日食べさせてくれるなら、私、どんな敵だって粉々にぶっ飛ばしてみせるから!」
「護衛っていうか……本音はご飯係だろ」
「ぎくっ!? い、いや、ご飯も大事だけど、私の怪力は本物だぞ! そこらの竜くらいなら素手でへし折れるんだからな!」
必死にアピールしてくるヴィオラの頭の上で、赤銅色の尻尾がブンブンとプロペラのように激しく回転している。
現金なやつだが、どこか憎めない性格だ。
すると、静かに見守っていたルナが、すっと俺の横に並び立った。
「却下を提案します」
「ふぇっ!?」
ルナは冷徹なサファイアの瞳で、ヴィオラを見下ろした。
「カイト様の身辺警護は、すでにこの私が担当しています。不確定要素の多い暴食個体の同行は、工房の防犯上、推奨されません」
「な、なんだとこのブリキ人形! 私の方が力なら絶対に上だぞ!」
「私は旧式の人形ではありません。カイト様の手によって再構築された至高の自律型オートマトンです。戦闘力において、あなたに遅れをとる要素は皆無です」
バチバチと視線で火花を散らす二人。
「あはは……ルナちゃん、ライバル登場でヤキモチ焼いてる?」
エマが小声でからかうと、ルナは即座に顔を背けてツンと澄ました。
「エマ様、誤解です。私はただ、資源の無駄遣いを懸念しているだけです。カイト様の作った貴重なジュレを、こんな怪獣に消費させるのは非効率的です」
「怪獣言うな! 失礼なやつだな!」
ギャーギャーと騒ぐヴィオラと、冷ややかに受け流すルナ。
エマが楽しそうに笑う中、俺は賑やかになりすぎたリビングで苦笑いを浮かべた。
だが――。
「ピピッ、ピピッ、ピピッ!」
けたたましい警告音が、リビングの壁から鳴り響いた。
「……ん?」
俺が壁の魔導モニターに視線を向けると、防毒結界の外側――谷の入り口付近の映像が映し出されていた。
そこに映っていたのは、アルタリア王国の白百合の紋章を掲げた、数台の重装魔導馬車。
そして、白銀の甲冑に身を包み、魔導弓や魔導剣を構えた数十名の王国騎士団の姿だった。
「っ……!? アルタリア王国の追手……!?」
ヴィオラの表情が、恐怖と警戒で一瞬にして凍りついた。