第三十話 敗北の経験の表紙画像

第三十話 敗北の経験

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/11/6 📚 シリーズ: Reincarnation -Record of memories- 📝 7,039文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

遺した記録、貴方の記憶、その手で全て解き明かして。

本文

地下闘技場の事件から、数日が過ぎた。

シェイン王国には、少しずつ日常が戻りつつあった。

訓練場には朝から木剣の音が響き、兵たちはいつものように走り込み、城の厨房からは焼きたてのパンの匂いが漂っている。

だが、その日常は以前とまったく同じではない。

封印室には、忘却の剣が眠っている。

王城の結界には、記憶干渉を警戒する術式が加えられている。

そして、トーマの訓練場復帰には、毎回ロイドの厳しい監視がついていた。

「トーマ、そこまでです」

「まだ十回しか振ってない」

「今日は十回までです」

「昨日は十五回だった」

「昨日の夜、腕の痛みが出たと報告を受けています」

「……誰から?」

「ノアです」

トーマは少しだけ顔をしかめた。

訓練場の端にいたノアが、気まずそうに目を逸らす。

「ご、ごめん。でも、痛いの隠してたから」

「隠してはいない。言わなかっただけだ」

ユナが静かに言う。

「それを隠すと言う」

ミアが頷く。

「そうだぞ、トーマ! 痛い時は痛いって言えってロイドが言ってただろ!」

「ミアに言われると妙に悔しいな」

「なんでだ!」

レナが腕を組んで、うんうんと頷く。

「分かるぞトーマ。まだ行けると思う時ほど止められるのは悔しい!」

ロイドが即座に言う。

「レナはそちら側に立たないでください」

「でも気持ちは分かる!」

「分かっても止める側に回ってください」

「うむ、止まれトーマ!」

「切り替えが早い」

トーマは木剣を下ろした。

身体はもうほとんど回復している。

歩ける。

走れる。

軽く剣も振れる。

だが、完全に元通りというわけではなかった。

忘却の剣に支配された時の反動は、肉体の奥にまだ少し残っている。

無理をすると、腕が痺れる。

胸の奥が冷える。

ときどき、視界の端に黒い羽根の幻がよぎる。

そのたびに、トーマは名前を呼ぶ。

「トーマ」

自分の名。

それから、今ここにいる名前たち。

「ノア。ミア。ユナ。レナ。ロイド。ソル」

その訓練は続いていた。

もう一つ、変わったことがある。

トーマは剣を持たない訓練を増やしていた。

木剣ではなく、短い棒。

あるいは素手。

忘却の剣を再び手にする日はいつか来るかもしれない。

けれど今は、剣に頼らない体の使い方を覚える必要があった。

ソルはそれを静かに見ていた。

「悪くない」

「本当に?」

「地下闘技場の前より、動きに迷いが少ない」

トーマは少し驚く。

「あんな目に遭ったのに?」

「遭ったからだ」

ソルは木剣を肩に乗せる。

「お前は怖さを知った。自分が壊れることも、誰かを傷つけることも、剣に飲まれることも。そのうえで立っている」

トーマは黙る。

ソルは続けた。

「恐怖を知らない強さは、折れる時がある。恐怖を知って、それでも前に出る強さは、粘る」

「俺にそれがあるのか?」

「今はまだ小さい」

「はっきり言うな」

「だが、ある」

その言葉に、トーマは少しだけ息を吐いた。

ソルにそう言われると、不思議と信じられる。

レナが横から言った。

「つまり、トーマは強くなってるってことだな!」

「そうだ」

ソルは頷く。

「でも今日はここまでだ」

「ええっ」

トーマとレナが同時に声を上げた。

ロイドは満足そうに頷く。

「ソルがこちら側にいて助かります」

「私は最初からロイド側だ」

「たまに訓練量が過剰ですが」

「……善処する」

「そこは断言してください」

そんなやり取りの中で、訓練場に一人の兵士が駆け込んできた。

「ロイド様!」

ロイドが振り返る。

「何事ですか」

「テリア王国より、正式な書簡が届きました!」

その言葉に、訓練場の空気が変わった。

テリア王国。

その名を聞くと、どうしても地下闘技場の記憶が胸をよぎる。

テリア女王。

セイレン。

赤い裂け目。

記録喰い。

忘却の剣。

だが兵士が差し出した封筒には、禍々しさはなかった。

青と黒の封蝋。

テリア王国の正式な紋章。

ロイドは封を確認し、慎重に開いた。

文面を読み始めた彼女の眼鏡の奥で、目が少し細くなる。

「……なるほど」

レナが前のめりになる。

「何だ? また何か来るのか?」

「来る、というより」

ロイドは書簡を閉じた。

「開催されます」

ミアが目を輝かせる。

「大会か!?」

「はい」

ロイドは全員を見た。

「リトルヴァルキリートーナメントの次に行われるもの。当然、ヴァルキリートーナメントです」

訓練場に、ざわめきが走った。

ヴァルキリートーナメント。

各国のヴァルキリーたちが出場する本戦。

リトルヴァルキリーではない。

ノアたちが戦った大会より、はるかに規模も実力も上。

ロイド、レナ、ソル。

リン、ガーネ。

アリス、ロイ。

三国の主力がぶつかる、戦乙女たちの大会。

レナの顔が一気に輝く。

「ついに来たか!」

ソルは静かに息を吐いた。

「予定通りだな」

トーマはロイドを見る。

「それは、皆への案内か」

「はい。ですが、それだけではありません」

ロイドはもう一通、封筒の中から小さな手紙を取り出した。

封蝋は同じテリア王国のもの。

だが、宛名にはこう書かれていた。

トーマ殿へ

トーマは眉を寄せる。

「俺に?」

「はい。招待状です」

ノアが小さく息を呑む。

ミアは驚いて叫ぶ。

「トーマも大会に出るのか!?」

「大声」

ユナが注意する。

「すまん!」

ロイドは手紙をトーマへ渡した。

「読みますか」

「ああ」

トーマは受け取る。

少しだけ緊張した。

忘却の剣の封印以降、テリア王国から個人的な文が届くことはなかった。

差出人は、テリア女王。

トーマは封を開き、文を読む。

そこには、丁寧な文字でこう書かれていた。

⸻

トーマ殿。

次なるヴァルキリートーナメントに、特別招待者としてお主を招く。

正式なヴァルキリーではないお主を招くことは、通常の慣例から外れる。

じゃが、お主は三国の運命にすでに深く関わっておる。

忘却の剣、記録喰い、そしてお主自身の過去。

それらと向き合うためにも、戦いの場に身を置くことは意味があるとワシは考える。

もちろん、無理に勝てとは言わぬ。

むしろ、今のお主にはこう伝えておきたい。

負けても構わぬ。

勝利だけが得るものではない。

負けてなお立ち上がること。

敗北の中で自分を知ること。

誰かの強さを受け取ること。

それもまた、今のお主に必要な戦いじゃ。

参加するかどうかは、お主自身が決めよ。

テリア

⸻

トーマは手紙を読み終え、しばらく黙っていた。

負けても構わぬ。

その一文が、胸に残った。

大会への招待状にしては、妙な言葉だった。

勝て。

示せ。

証明せよ。

そう言われるなら分かる。

だが、テリア女王は負けてもいいと言った。

「負けても構わぬ……」

トーマは呟く。

ソルが手紙を見る。

「テリア女王らしいようで、らしくない言葉だな」

ロイドは頷く。

「勝敗よりも、経験を重視しているのでしょう。地下闘技場の件を踏まえれば、トーマには制御された戦闘経験が必要です」

レナが拳を握る。

「つまり大会で鍛えるってことだな!」

ユナが冷静に言う。

「たぶん、それだけじゃない」

ノアも静かに言った。

「負けても構わないって……トーマに、勝たなきゃいけないって思いすぎるなって言ってるのかも」

トーマはノアを見る。

ノアは少し考えながら続ける。

「地下闘技場で、トーマは自分が何者か分からなくなった。勝つとか、強くなるとか、それだけを考えたら、また怖くなるかもしれない」

「だから負けてもいい?」

「うん。負けても、トーマはトーマだから」

その言葉は、静かに刺さった。

トーマは自分の手を見る。

剣を握った手。

仲間を傷つけた手。

剣を離そうとした手。

「参加するべきだと思うか?」

誰にともなく問う。

ロイドが答える。

「利点と危険があります」

「だろうな」

「利点は、実戦に近い環境で、しかし殺害禁止のルール下で戦闘経験を得られること。各国のヴァルキリーと戦うことで、自分の立ち位置を把握できます」

「危険は?」

「記録喰い、レッドフラッグス、忘却の剣に関わる何者かが大会を利用する可能性」

ソルが続ける。

「それと、お前自身の精神状態だ。追い詰められた時、剣なしでどこまで保てるか」

トーマは頷く。

「忘却の剣は使えない」

ロイドはきっぱり言った。

「当然です。封印解除は認められません」

レナが腕を組む。

「じゃあ木剣か?」

「大会用の訓練剣、もしくは非殺傷武器を用意します。正式な出場形式はテリア側へ確認が必要ですが、特別招待枠なら調整は可能でしょう」

ミアが目を輝かせる。

「トーマも大会出るのか……! 見たい!」

ユナが言う。

「でも危ない」

ミアは少し考える。

「危ないけど、見たい!」

「正直」

ノアはトーマを見ていた。

「トーマは、どうしたい?」

その問いに、トーマはすぐには答えられなかった。

どうしたいのか。

怖い。

当然怖い。

人前で戦うこと。

追い詰められること。

自分の中にまた黒いものが湧くかもしれないこと。

でも、それ以上に。

逃げたくない。

地下闘技場で、自分は仲間の名前に助けられた。

なら今度は、戦いの中で自分を保てるようにならなければならない。

誰かを傷つけないために。

誰かに守られるだけで終わらないために。

そしていつか、忘却の剣と向き合うために。

「出る」

トーマは言った。

訓練場の空気が止まる。

「怖い。でも、出る」

ノアは静かに頷いた。

「うん」

ソルも頷く。

「なら、鍛える」

レナが笑う。

「よし! 特訓だな!」

ロイドがすぐに言う。

「無茶な特訓は禁止です」

「分かってる!」

「本当に?」

「たぶん!」

「駄目です」

ミアが手を上げる。

「私たちも手伝う!」

ユナが頷く。

「トーマの名前を呼ぶ訓練ならできる」

ノアも言う。

「防御も、支える膜も使える」

トーマは三人を見る。

「ありがとう」

ミアがにっと笑う。

「私たちも、次の大会に出るわけじゃないけど、見てるだけじゃつまらないからな!」

「応援と訓練補助」

ユナが言う。

「それと、トーマが無理した時の通報」

ノアが少し申し訳なさそうに言う。

「それは私がやるかも」

「信頼されてないな、俺」

ロイドが淡々と答える。

「信頼しているから監視するのです」

「そういうものか?」

「そういうものです」

トーマは苦笑した。

けれど、その胸には温かいものがあった。

また戦いが始まる。

今度は地下の闇ではない。

三国が見守る大会。

ルールある戦い。

けれど、その裏にはきっと不穏な影もある。

忘却の剣。

記録喰い。

ゼロ。

セイレンとルーク。

そして、テリア女王の招待状。

負けても構わぬ。

その言葉が、戦いの意味を変えていた。

勝つためだけではない。

自分を知るため。

敗北しても名前を失わないため。

誰かの強さを受け取るため。

そして、トーマとして立つため。

⸻

その日から、ヴァルキリートーナメントに向けた特訓が始まった。

シェイン王国の訓練場は、一気に熱を帯びた。

ロイドは大会形式を想定した戦術訓練を組んだ。

「トーマは正式なヴァルキリーではないため、通常の戦闘兵とは異なる扱いになる可能性があります。単騎戦に出るか、特別試合枠になるか、まだ確定していません。ですが、どちらにも対応できるよう準備します」

「集団戦もあるのか?」

「可能性は低いですが、完全には否定できません」

「なら全部やるのか」

「はい」

「容赦ないな」

「負けても構わないことと、準備を怠ることは別です」

トーマは何も言えなかった。

ソルは基礎戦闘を担当した。

剣を持たず、短棒と素手での動き。

「忘却の剣がなくても、お前は戦える必要がある」

「素手か」

「ゼロも素手を好んだ」

その言葉に、トーマは一瞬反応した。

ソルも気づいたが、すぐに続ける。

「だが、お前はゼロではない。真似るな。参考にしろ」

「分かった」

トーマは拳を握る。

剣士としてではなく、トーマとして戦う。

それが新しい課題だった。

レナは速度訓練を担当した。

「私についてこい!」

「無理だ」

「最初から諦めるな!」

「レナについていける人間の方が少ない」

「じゃあ少し遅く走る!」

「本当に少しだな!」

レナの訓練は荒かった。

だが、彼女は以前よりトーマの状態を見るようになっていた。

息が乱れすぎた時。

足元がふらついた時。

顔色が変わった時。

以前のレナなら気づかず進んでいたかもしれない。

でも今は違う。

「止まれ、トーマ」

そう言えるようになっていた。

ロイドはそれを見て、小さく頷いた。

「成長していますね」

レナは得意げに笑う。

「私も特訓してるからな!」

「何の?」

「止める特訓!」

「良いことです」

ノアは防御と精神固定を担当した。

ノアの魔力膜は、トーマの訓練に欠かせないものになった。

硬い盾。

受け流す膜。

支える足場。

そして、もう一つ。

名前を刻む光。

ノアは小さな防御膜に、トーマの名前を込める練習を始めていた。

「これが近くにあると、少し落ち着く」

トーマは言った。

「本当?」

「ああ。黒いものが近づいても、戻りやすい気がする」

ノアは嬉しそうに微笑んだ。

「じゃあ、もっと上手くなる」

「無理はするなよ」

「トーマに言われたくない」

「……確かに」

ミアとユナも手伝った。

ミアは全力で突っ込んできて、トーマに「予想外への対応」を叩き込む。

「いくぞトーマ!」

「待て、合図は?」

「今言った!」

「それは合図じゃなくて宣言だ!」

ユナはその横で、糸を使って足元や腕を軽く引っかける。

「戦場では思った通りに動けない」

「それは分かるけど、ミアとユナの組み合わせは地味に厄介だな」

「褒め言葉」

「褒めてる」

三人のリトルヴァルキリーたちは、以前よりずっと息が合っていた。

トーマの訓練に付き合うことで、彼女たち自身も成長していく。

それを見たロイドは、記録にこう書いた。

トーマの訓練は、シェイン全体の連携強化にも繋がっている。

⸻

一方、テリア王国でも準備は始まっていた。

アリスは自室で魔法式を組み直していた。

「トーマが出るなら、普通の大会じゃ済まないわね」

ロイは窓辺に座っている。

「うん」

「あなたも出るんでしょ?」

「たぶん」

「たぶんって何よ。最高戦力でしょうが」

「テリア女王が決める」

「出るわよ。絶対」

ロイは少しだけ考える。

「ソルも出る」

「でしょうね」

「戦うかも」

「嬉しそうね」

ロイは首を傾げる。

「そう?」

「そうよ」

ロイは少しだけ目を逸らした。

アリスはそれを見て、小さく笑う。

「分かりづらいけど、あなたも変わったわね」

「そう?」

「ええ。前より人に興味がある」

ロイは少し黙った。

そして、短く言った。

「トーマ、戻ったから」

アリスはその意味を考える。

地下闘技場で、ロイは確かにトーマの名前を呼んだ。

彼が戻ったことは、ロイにも何かを残したのだろう。

テリア女王は大会の書類を見ながら、窓の外を見ていた。

「負けても構わぬ、か」

自分で書いた言葉を思い返す。

それは、トーマに向けた言葉であると同時に、過去の自分へ向けた言葉でもあった。

勝たせること。

強くすること。

可能性を伸ばすこと。

それだけを見て、セイレンを見失った。

だから今度は、負けることにも意味を与えたかった。

テリア女王は静かに呟く。

「トーマ。お主が何を得るか、見せてもらうぞ」

⸻

ベイル王国でも、リンとガーネが訓練を再開していた。

リンは砕けたチャクラムの代わりに、新しい武器を調整している。

「地下闘技場では散々でしたからねぇ。次はもう少し美しく戦いたいものです」

ガーネは片腕の回復訓練をしていた。

「大会、出る」

「もちろんです。あなたが出ないと、ベイル女王陛下が訓練場を壊します」

「もう壊した」

「あら、早いですねぇ」

遠くで、ベイル女王の豪快な笑い声が響く。

「ヴァルキリートーナメントだ! 鍛え直せ、全員!」

ベイル王国の訓練場には、土煙が上がっていた。

⸻

そして荒野。

紅い旗の下。

セイレンは、三国に大会の気配が広がっていくのを感じていた。

ルークは隣で大剣を磨いている。

今度はちゃんと刃を磨いていた。

「トーマ、出る?」

ルークが聞く。

「出るでしょうね」

「戦う?」

「大会ではね」

「私たちは?」

「出ないわ」

「そっか」

ルークは少し残念そうだった。

「戦いたい」

「まだ駄目」

「なんで?」

「今のトーマは、まだ大会で学ぶ段階よ。私たちが潰すには早い」

ルークは首を傾げる。

「潰す?」

セイレンは少し黙る。

以前なら即答できた。

弱ければ壊す。

そう言えた。

だが今は、少しだけ言葉が遅れた。

「……試す」

ルークはセイレンを見る。

「変わった?」

「変わってない」

「そっか」

ルークはそれ以上聞かなかった。

セイレンは遠く、シェイン王国の方角を見る。

「...負けても構わぬ、ね」

テリア女王の書いた言葉を、どこかで感じ取っているようだった。

セイレンは薄く笑う。

「母上にしては、悪くない言葉ね」

ルークが顔を上げる。

「褒めた?」

「褒めてない」

「そっか」

紅い旗が風に揺れる。

セイレンは小さく呟いた。

「せいぜい負けなさい、トーマ」

その声には、嘲りだけではなかった。

「負けて、立ちなさい。剣ではなく、自分の足で」

⸻

シェイン王国の訓練場。

夕暮れ。

トーマは短棒を構えていた。

正面にはソル。

横にはレナ。

後方にはノア、ミア、ユナ。

ロイドが記録板を持って立っている。

「今日の最後です」

ロイドが言う。

「トーマ、目的は?」

トーマは答える。

「勝つことじゃない」

ソルが問う。

「では何だ」

トーマは短棒を握り直した。

「倒れても、自分の名前を失わないこと」

ノアが静かに頷く。

ミアが拳を握る。

ユナが糸を構える。

レナが走る準備をする。

ソルが剣を構える。

「では来い」

トーマは一歩踏み込む。

怖さはある。

だが、その怖さと一緒に進む。

大会は近い。

ヴァルキリートーナメント。

戦乙女たちの舞台。

そこに、記憶なき男トーマも招かれた。

勝つためだけではない。

負けるためでもない。

自分を知るために。

誰かの強さを受け取るために。

そして、忘却に抗う名前を、戦いの中で刻むために。

夕暮れの訓練場に、木と木がぶつかる乾いた音が響いた。

ジャンル・タグ

, ,

作品統計

👁️ 閲覧数: 0 👍 いいね: 0 📚 本棚登録: 0

作者について

となん

Reincarnationシリーズ投稿中

作者ページを見る