第13話 両手に高級花
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あらすじ
五色の音色に囚われて - 第13話 両手に高級花
本文
感覚的には久々の渋谷散策。
日数的にはそんなに空いてない筈だけど、濃い時間過ごしてたからか随分と懐かしい気がする。
「で、何処にあるのよ」
「あっち!」
だと言うのに、私の両脇には恋と涼音。
いや、別に不満は無いんだけど両手に花というかスタイルの差をまざまざと見せつけられてるというか……
何故こんな事に……と言うと、恋が下見したライブハウスの再下見。
何しろ人の悪意に疎い恋が一人で探したライブハウスが安心出来るかと言うと、それは絶対に無いからだ。
だからと言って私が居る理由は無いんだけど……恋との不真面目勉強会の予定が、涼音を伴ってやってきたので急遽下見に変更となった。
……あの日。
涼音と和解して、そして恋の気を惹く為に私に気があるように振る舞った日。
涼音はあれから私の事を愛花と呼ぶようになって、私も涼音と呼ぶように無言の圧力を掛けてきて。
以前よりも距離が近くなって、まぁ別に嫌な気はしないしとそのままにしていた。
ピアスも学校では一つだけ……だけど今日は何時も通りにフル装備だ。
曰く、学校では私の顔を立てるけどプライベートなら好きにする……と。
それは道理だと思うから特に口出しはしていない。
「ん? そのライブハウスってこの『ヘル・ステージ』ってトコ?」
「うん!」
「ふぅん……」
「何かあるのか?」
「調べた限りはちょっと怪しいわね。売人とか出入りしてるって。あくまで噂だけど」
「ばいにん?」
「恋は気にしなくて良いわ。取り敢えず行くだけ行ってみましょ」
「? うん! 行こっ!」
良く理解はしていないが、取り敢えず元気良く歩き出した恋。
私と涼音の腕をそれぞれ抱えてウキウキ気分だ。
歩幅が違うんだからもう少しゆっくり歩いてほしい。
「ここだよっ!」
恋が自信満々のドヤ顔で指を差した。
ビルの地下へ続く階段は昼間だというのに薄暗く、入口には色褪せたライブ告知が何枚も貼られていた。
明らかヤバそうな雰囲気だ。
「……これは」
「想像以上ね。恋、ここは一人じゃ絶対来ちゃ駄目」
「え? う、うん……ダメだった?」
「もっと大人が来るところだ」
「はぇ〜……」
適当に言ったら納得した。
良くも悪くも素直な奴だ。涼音が心配する理由も分かる。
もし恋が喜び勇んでこの階段を降りたら……外部で勝手に想像するのも良くないが、どうしても不安が勝る。
私達は心なしか足早にこの場を立ち去った。
「……あ」
「どうした?」
そんな折、いきなり恋が立ち止まった。
両手を目の上に翳してジッと目を細めて……
「レオだ!」
レオ……土屋 玲於奈か?
目を向けると確かにそこに居た。
ちっこい身体が二人の男に遮られてるから分からなかった。
あれは……ナンパでもされてるのか? 私達と同学年ではあるが、見た目は幼いのでその線は薄いとは思うけど……
「なぁ、良い子だからおじさん達とお巡りさんとこ行こ? な?」
「別に迷子じゃないもん!」
「分かってるよ! よーく分かってる! でもお母さんが迷子になってるかもしれないからさ?」
「だから! れおなは一人で此処まで来たの! 子供じゃないんだからっ!」
……どうやら小さい子供と勘違いされて保護されようとしているらしい。
まぁ、確かに……土屋は背が低いし童顔だし喋り方も子供っぽくて舌足らずだ。
オマケに服装も女児味溢れる装いなので小学生と間違われても無理は無い、と思う。
「レオ〜!」
「……!? れん! すずね!」
恋が声を掛けて。
それに気付いた土屋は男性二人の間を通って駆け出して涼音に抱き着いた。うーん、やっぱり子供だ。
「保護者の方?」
「友達ですっ!」
「任せても大丈夫?」
「大丈夫ですっ!」
「そうか、良かった……じゃあ俺達はこれで」
「はーい!」
「お騒がせしました」
優しい男性二人を見送って。さてどうするか。
今は恋と涼音が前に出て、私は後方。
土屋に私が天王寺 愛花だとバレるのは避けたい。
ただこれから行動を共にするなら私の事を隠しながらだと面倒だし……
だから涼音にアイコンタクトを取って、ひっそりと帰ろうとした。
「あ、あいか!」
なのに、私に気付いた土屋が駆け寄ってきて抱き着いてきた。
三つ編眼鏡の学校とは真逆。ヘソ出しで、短パンで、ちょっと勇気を出してサングラスまで掛けた私に向かって。
土屋は迷う事なく“あいか”と呼んだ。
「な、なんの事だ?」
「へ? 何って……あいかでしょ?」
「いや私は……」
「プライベートだとこんな格好なのね! こっちのあいかもカッコいいわ!」
これは……言い逃れは出来そうにない。
下手に逃げて学校で追及されても事だ。
「……そうだ。学校とは全然服装違うのに良く分かったな?」
「何回あいかと話してると思ってるのよ! すぐに分かったわ!」
フフーン! と何時ものドヤ顔。
正直意外だった。両親ですら今の私を天王寺 愛花だと見抜くのは無理だと確信出来るのに。
恋は背中のホクロで。涼音は尾行して尻尾を掴んだが、一目で見抜いたのは土屋が初めてだ。
「……で、アンタは一人で何してるのよ」
「エイモンセンターに行こうと思って……」
ジト目の涼音に問い掛けられた土屋は少し気不味そうにしながら答えた。
エイモン……エイリアン・モンスターというキャラクターの略称だ。
普段は人間に化けて生活しているという設定で、人間形態でオタクを。
エイリアン形態でキッズ層を取り込む事に成功したコンテンツ。
遂にはエイモンセンターという専門店までオープンし、その人気は留まる所を知らず。
土屋はそのエイモンセンターに行く為に一人で渋谷まで足を運んだらしい。
「エイモンセンター? こっちとは反対方向じゃない」
「えっ!? そうなの!?」
この容姿にこの服装にエイモンセンターに行こうとして迷子になる。
どこからどう見ても子供にしか見えない……
「ほら」
「???」
涼音がスマホの画面を見せるも、土屋の瞳には?マークが浮かぶだけだ。
「よし、一緒に行こう!」
「え」
それを見かねてか、単に自分も行きたくなったのか……あの目の輝き具合からして後者だろうな。
恋がふんすふんすと鼻息を荒くしてエイモンセンターに向けて舵を切った。
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