第20話 好きを自覚して
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あらすじ
五色の音色に囚われて - 第20話 好きを自覚して
本文
「聞くのも何だけど……私の事が好き、なんだよな?」
「うん……」
「それは……どういった感じの好きなんだ?」
「……分からない。れおな、あいかの事考えると胸がポカポカするし、ギュってしたくなるの。
でも、れんやすずねに取られるって思うとモヤモヤするの……」
玲於奈は私の背に腕を回して抱き締める力を強めた。
その仕草に、温度に、匂いに心臓が跳ねる。
でも、まだだ。ここで流されるのは玲於奈に対しても不誠実だ。
「五行輪舞のメンバーに対する好きとは違うのか?」
「たぶん違う、と思う。仲間だけど、そーゆー好きとは違うと思う」
「そうか……」
そう言えば玲於奈は揶揄ってきたり馬鹿にしてくるとかで涼音や水城にプンプン怒ってたな。
木ノ葉は子供扱いしてくるって文句言ってたし、恋はたぶん学力と精神年齢が近いからライバル心があるんだろう。
それでも仲間と呼べるぐらいには絆を育んで来たんだな。
「何時私を好きになってくれたんだ?」
「高校に入って、あいかと出会ってから。
あいかも小っちゃいのに頭が良くて、先生から信頼されて、周りに頼られて……カッコよくて大人っぽいなって憧れてた。
れおなが困ってる時は何時も助けてくれたし。でも……」
「でも?」
「好きって思ったのは……渋谷で会った時。
学校とは違って派手な格好して、れんやすずねと並んでも様になってて……すっごくカッコいいって思った。
学校のあいかも、渋谷のあいかもどっちもカッコよくて凄いって思ったの!」
うぅん、正直あの二人と並んだら見劣りすると思うんだが……委員長モードとのギャップが効いたんだろうか?
「学校でもあいかはれおなにお仕事を手伝わせてくれた。
他の人は危ないよ、とか代わりにやってあげる、とか。
そうやって子供扱いしてくるのに、あいかは対等に扱ってくれた」
なのに……と、私を抱きしめる力が更に強くなった。
「子供扱いは嫌なのに……子供みたいな事しちゃダメなのに……っ
あいかをギューってすると安心するの。
あいかに頭を撫でられると嬉しくなっちゃうの。
それじゃダメなのに……もっと大人にならないとダメなのに……っ!」
「それは……好きな人に甘えるのは大人でもそうなんじゃないか?」
「でもれんの方がカッコイイでしょ? すずねの方が大人っぽいでしょ?」
「それ言ったら私よりあの二人の方が目立つしキラキラしてるじゃないか。
っていうか、私から見たら玲於奈だってそうなんだぞ?
ステージの上でギター弾いてる姿とか、凄くカッコよかった」
「ホントに? れおな……カッコよかった? あいかから見ても?」
「ああ」
「……えへへっ♪」
玲於奈は顔を綻ばせて。だけど少し拗ねたような目付きで私を見上げる。
「なのに、キスしてくれないの? れおなだと恋愛対象になれないの?」
「玲於奈が本音をぶつけてくれたから私も本音で言うけどさ。
……玲於奈は可愛いよ。こうして好意を伝えられて、抱き着かれて、心臓が壊れそうなぐらいにドキドキしてる。
でも……恋にもこうやって迫られたらきっとドキドキすると思う。
玲於奈は魅力的だ。でも、恋も同じぐらい魅力的だと思ってるんだ。
……そんなんじゃあ、誰かと恋愛する資格なんて無いんだよ」
「それでも良い! いっぱい努力してれおなの事しか考えられないように……」
玲於奈が必死に自分の気持ちを訴えて……でもソレは突然の呼び鈴に中断された。
その後、母の声の後にとたとたと廊下を歩く音。そして……
「愛花……!」
「恋……」
恋が、息を切らせて部屋の扉を開けた。
「っ、レオずるいっ!」
「……え?」
「小っちゃくて可愛いからっていっつも愛花に抱き着いて! ボクもするっ!」
「ぶぇっ!?」
「むぎゅっ!? そーゆーれんだってさっき纏めて抱き締めたじゃない!」
「だって愛花もレオも好きなんだもん!」
……なんだコレ。
「と、取り敢えず落ち着いてくれ! な?」
やんわりと二人を引き剥がして、クッションに座らせる。
私も突然の状況に混乱はしてるけど、今の恋と玲於奈に冷静な対話は無理だ。
私が話を進めないといけない。
「まず、恋はなんで此処に?」
「レオが愛花の家に行くって言って……それで心がざわざわして、モヤモヤして……走ってきた」
「そっか……それで、恋も私の事を好いてくれてるって事で良い、のか?」
「……うん。愛花はボクに不真面目を教えて五行輪舞を一歩先に進ませてくれた。
ボク達のロックを否定されて追い詰められてた時に、ボク達のロックを肯定してくれた。好きだって言ってくれた。
ボクにとって愛花はとっても大切な人なの!」
「なにそれっ! そんなのずるいわ! れおなはもっと前からあいかの事が好きだったのに!」
「好きになるのに時間なんて関係無いもん!」
「れおなの愛の方が大きいんだから!」
「ボクの方が愛花の事いっぱい好きだよ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 頼むから……!」
精神年齢の近い二人が子供みたいに張り合ってヒートアップする中、肩を軽く叩いてどうにか宥める。
ただ、それでも頬を膨らませて不満気である事を隠そうともしない。
「……あいかはどっちが好きなの?」
「ボクだよね? 愛花はボクの事好きなんだもんね?」
「それで言ったら二人とも同じぐらい好きだ、としか言えない。
そもそも恋愛的な意味で好かれてるって自覚出来たのもついさっきだしな……」
「む〜……」
「自分で言ってて情けない話だけど……同性の、しかもこんな顔の良い二人に同時に迫られるなんて初めての経験なんだ。
正直まだ頭ん中がグルグルしてる……ハッキリ言って、現時点では答えは出せないし、出すべきじゃないと思ってる」
「それは、そうかもだけど……」
「少し時間が欲しい。頼む……!」
「あ、頭を上げてよ! ボクもいきなり乗り込んじゃって……ごめん」
「れおなも急に迫っちゃったかも……今日はもう帰るわ」
「あぁ、悪いな……」
私を気遣ってか、恋と玲於奈は二人して帰宅するみたいだ。
ただ、部屋を出て母と挨拶する頃にはもう普段の空気に戻っていた。
そこは二人の仲の良さに救われたな……
「……ふぅ」
深呼吸してスマホを手に取り、電話マークをタップ。
数回のコール音の後に、目当ての人物が出た。
『なに?』
「いきなり悪いな、涼音。実は……」
正直この話を涼音にするのは憚られる。
だけど他に相談出来る奴が居ないのも事実だ。
話を聞き終えた涼音は盛大な溜め息を一つ。
『恋が焦ってたのはそういう訳ね』
「やっぱり、恋もそういう意味で私の事が好きなのか?」
『前からずっと言ってるじゃない。あぁ、でも……例の一件を経てからは愛花にちょっと依存してるようにも見えるわね。
自分を肯定してくれる存在が離れていかないように必死って感じ』
「それは……良くないな」
『そう? アタシなら恋に幾らでも依存されて良いけど』
「相変わらず恋ガチ勢だな……それじゃあ涼音に関しては玲於奈の見解はハズレか」
『玲於奈が何か言ってたの?』
「いや、涼音も私の事が好きだとか何とか……」
『自惚れんじゃないわよ』
「言ったの私じゃねーって」
『良い? アタシの中で恋を一番に優先する事は確定してるのよ。
アンタは何処まで行っても二番手……それを自覚しなさい』
「……え? おい待てそれって……」
『もう切るわ。じゃあね』
ブツ、と一方的に通話を切られた。
二番手……二番手だと?
「恋の次なんて……涼音にとっちゃ最高級の扱いじゃないか?」
思わずそう呟いて。
はぁ……と溜め息が漏れ出る。
私にそんな資格なんて無いってのに。
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