第21話 誘拐では?
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あらすじ
五色の音色に囚われて - 第21話 誘拐では?
本文
一人っきりの渋谷散策。
険悪なムードは無いけど、流石にこの状況で誰かと一緒に行動するのは憚られる。
恋と玲於奈の三人で……なんて以ての外だ。
「どうすりゃ良いんだろうな……」
同性である、という事に因る戸惑いはない。
そりゃ人によるんだろうけど、あんな美形な顔面の女に好意を向けられて迫られたら、同性であってもドキっとするだろう。
少なくとも私はそうだった。だからこそ選べないから答えを保留させてもらってる訳だけど……
「……どうすりゃ良いんだろうな」
同じ言葉しか出てこない。涼音だってそれなりに好意は持ってくれてるみたいだし……
そりゃまぁ、確かに悩みや困り事の解決を手伝ったりはしたけど、それだけで人を好きになったりするんだろうか?
「……お?」
そんな事を思いながら歩いていると、見るからに高級だと分かる車がゆっくりと私の前で停車した。
綺麗なお姉さんが降りてきて後部座席のドアを開ける。
そこから優雅な動作で私の前に姿を現したのは……
「水城 海里……?」
「ごきげんよう、天王寺さん。ふふ、こんなにお腹を露出して……学校とは正反対の大胆な装いですわね」
「何の用だ?」
「そんなに固くならないでくださいな。
私はただ天王寺さんを我が家にご招待したいだけですわ」
口調こそはお淑やかだけど、目の奥には危険な光を感じる……
そもそも1回水城の家には行ったが、こうして友達感覚で行き来する程の仲では無かった筈だ。
「悪いな、今は少し急いでるんだ。用があるなら日を改めてくれないか?」
「つれないですわねぇ……私と貴女の仲ではありませんか」
「どんな仲だよ……」
「うふふ、では仕方ありませんわね。姑息な手段は好みではないのですが……」
水城は手に口を当ててお上品に笑った後に、1枚の紙を差し出した。
そこには学校の私と渋谷に繰り出している私……その両方の写真が載せられ、両者の一致する顔や身体的特徴が記載された……平たく言えば、天王寺 愛花がプライベートではこんな事をしていますよというのを分かりやすく示した代物だった。
「これは……っ」
「ふふ、良く出来ているでしょう?」
「お前……!」
「さぁ、どうなさいます?この紙切れ1枚で貴女の積み上げてきたイメージが一変する事になりますわよ」
「……何が目的だ」
「言ったでしょう?天王寺さんを我が家に招待したいだけですわ。
えぇ、勿論悪いようには致しませんとも」
「……分かったよ」
「ご理解頂けて幸いですわ。では、参りましょう?」
水城は勝ち誇った様に笑った後に再び車に戻る。
私もそれに倣って後部座席に乗り込んだ。
座席からしてフカフカでこれが高級車か! という事を見せ付けられた気分だ。
「ふふふ……」
水城が妖しい笑みを浮かべる。
それでさえハッとする程に美しく感じるのだから顔の良い女って奴はほんとに得だな。
◇◇◇◇◇
「く……っ」
車を走らせて例の馬鹿デカい屋敷に到着した後、私は水城の部屋に連れていかれた。
ここまでは普通だった。
問題なのはその後……部屋に入った瞬間に腕を掴まれて椅子に座らされたかと思うと、ソレに取り付けられていた枷で手足の自由を奪われてしまった事だ。
「おい、何だよこれ!」
「見ての通り手錠と足枷ですわ。これで貴女は逃げられませんわね」
「ふざけんな! 外せよ……っ!」
ガチャガチャと手足を動かしてもビクともしない。
ホームに連れ込まれ、椅子に拘束されて……これはもう誰が見たって拉致監禁の図だ。
「うふふ、大変お似合いですわよ」
「何が目的だ!」
「言ったでしょう? 貴女を我が家に招待したかっただけですわ。
そしてその結果、女二人が部屋に居たら……ねぇ?」
「ひぁっ!?」
するり、と水城の手が私の腹部を撫でる。
くそ、へそ出しルックなんてするんじゃなかった……っ!
「貴女のお腹はとても薄くて……ふふ、掌底一発で色々とぶち撒けてしまいそうですわね?」
「な、なんだよその感想……!」
水城が手にグッと力を込める。
ただそれだけなのに、私は恐怖を感じて必死に身体を捩るが……当然拘束されている以上は無意味な抵抗だった。
「あぁ、良いですわ……その顔……」
水城の手が徐々に上に登っていく。
それはまるで蛇の様にゆっくりと這って来て、ぞわぞわと鳥肌が立つのを感じた。
「……っ」
服の中に入って。
ブラの上から下乳を親指で軽くなぞられる。
このまま流されちゃ駄目だ……!
「なんでだよっ! 女を抱きたいならお前にはもっと顔の良い取り巻きが沢山居るだろ!? なんで私なんかを……っ」
「確かに下僕と触れ合うのも素敵な一時ではありますけれど……今は貴女に興味津々ですのよ。
五行輪舞のメンバーを三人も墜としたその手腕に、ね?」
「墜とすって……アイツ等とはそんなんじゃない!
ただ交流を重ねて仲良くなっただけで……」
「愛の告白をただの友達同士の戯れだなんて……思ったよりプレイガールなのかしら?」
「お前何処まで知って……んっ」
「これでも羨望や恋焦がれる視線は受け慣れていますのよ?
それに五行輪舞の仲間ですもの……あの熱い視線が誰に向いているかなんて、ねぇ?」
「や、止め……」
水城の手が更に上がる。
こうなってしまったら本格的にマズい……そう思わせる程度には水城の触り方には抗えない何かがあった。
くそ、何か……水城を止められる奴は……
「……あ」
一人だけ、思い付いた。
この場に都合良く居合わせているとは思えないけど……学校では何時も一緒に居た。
少なくとも、殊更親密な相手なのは確かな筈だ。
「木ノ葉っ!」
「あら、芽衣がどうかしましたの?」
「こんな事して、木ノ葉はどう思うだろうな⁉︎」
苦し紛れの脅しだ。
けれど身体の抵抗を封じられた私としてはこうするしかない。
「芽衣……」
水城は木ノ葉 芽衣の名前をポツリと呟いて……
「ふふ、うふふふふっ」
何が可笑しいのか口元に手を当てて抱えて笑い出す。流石に予想外の反応だな……
「うふふ、ごめんあそばせ? まさか芽衣に希望を見出すなんて……
部外者なのに私達の関係を良くご存知ですのね。
或いはその観察眼が彼女達を惹きつけたのかも。でも、残念でしたわね?」
水城が私から離れて部屋の押し入れを開く。
「……え?」
そこには……手足を厳重に縛られ猿轡を噛まされている木ノ葉が転がされていた。
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