※ 第5話 くすぐったい……
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
売りに出されて三年目、神様のお世話係に任命されました - ※ 第5話 くすぐったい……
本文
「美子ー」
「はい、滝さん」
あの後、何時ものお仕事に戻った所で滝さんに話しかけられました。
「上手くやったじゃないのさ」
「はい?」
滝さんは嫌らしい笑みを浮かべながら私の肩に腕を回して寄り掛かってきます。
「なんの事でしょうか?」
「惚けんじゃないよ。あの鬼を手懐けてご褒美貰ったんだろ?」
「聞いてたんですか?」
「人聞きの悪い事言わないでおくれよ。あたしは偶然通りかかっただけさ」
「はぁ……」
「ね、ね。あたしにも鬼の躾け方を教えておくれよ。
あたしも鬼の世話が出来ればご褒美が貰えるかもしれないだろ?」
「あの、神様は躾けるとかそういう物ではなくて……」
「あぁ、分かるよ。折角の飯の種を簡単には教えたくは無いだろうさ。
でも今まで散々面倒見てやっただろ?少しくらい良いじゃないのさ」
「ですから、何も特別な事はしていないのです」
「じゃあアンタがあの地下道で何してるか教えておくれよ」
「私はただ神様に挨拶をして、捧げ物を献上して、話掛けているだけです。躾るだとか手懐けるだとか……神様はそんな存在では無いのです」
「ふぅん、まるで犬だね。そっかそっか、今までの奴等はビビり過ぎてたんだねぇ」
「滝さん?」
「美子、明日の鬼の世話はあたしがやるよ」
「え……? ですが、それは私が旦那様から仰せ使ったお役目です」
「そんなん風邪でも引いたって上手く誤魔化しとくよ。
アンタも本当に風邪引いた時に代役が居ないと困るだろ?
あたしも、もしもの時に鬼の世話を任せられるって思って貰えれば旦那様の覚えも良くなるってもんさ」
「あの、ですから……」
「小春様との事、旦那様にばらしても良いんだよ?」
「……っ!?」
「旦那様も奥様もアンタと小春様はただ仲良しこよしの姉妹ごっこをしてるだけだと思ってる。
けどその裏で何をやってるか……あたしは知ってんだよ?」
「あ、ぅ……」
「もし女同士で愛し合ってるって旦那様にばれてごらんよ?
アンタはこのお屋敷に置いて貰えないよ。小春様だって大目玉さ」
喉が渇く。目の奥がズキズキする。
どうしよう
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……っ
「そんな顔しなさんな。別にお役目を奪い取ろうって訳じゃない。
明日、たった一日だけ代わってくれればそれで良いんだ。
勿論、旦那様にあたしが完璧に鬼の世話をしたって口添えしてね」
「……分かり、ました」
もしお屋敷から追い出されてしまったら、小春様と離れ離れになってしまいます。
神様とお会いする事も叶わなくなるでしょう。
私に残された選択肢は無いも同然でした。
※※※※※
「こ、小春様……っ」
「どうしたの美子ちゃん。久しぶりなのだからもっと愛し合いましょう?」
「ひぅ……っ!?」
その夜、久々に夜を共にするという事で小春様は普段よりも積極的でした。
高揚して火照った顔と妖しく光る眼光の色っぽさに私自身も昂ってしまいます。
ですが、昼間の滝さんとのやり取りに心を乱されているのも、また確かなのです。
そして、その乱れを小春様は見逃しませんでした。
「……美子ちゃん本当にどうしたの? 何か不安な事でもあるの?」
「それは……い、いえ……」
「あるのね? 何があったか言ってごらんなさい?」
「ひぅっ!? ふぁぅ…、だ、大丈夫ですので……っ!」
「強情ね。そんな聞き分けの悪い美子ちゃんは……拷問しちゃおうかしら」
「あ……っ!?」
着物の帯締めで両手を縛られてしまいます。
抵抗を封じられた私の身体を小春様の手が滑ります。
「んふっ、ひひゃぁぁ……っ」
私は未だに“気持ち良い”がどういう感覚なのか分かっていません。
だから小春様も、私に“気持ち良い”事を強要するような事はしません。
くすぐったさとか、小春様の手の暖かさを楽しむような……そんな営みです。
……今回に関しては拷問と称しているだけあって、くすぐりの比重が多いようにも感じますが。
「さぁ、美子ちゃん。白状なさい」
「はひゅっ! ひぁぅ……っ!」
「ほら、早く」
「あ、あぁう……っ」
脇腹をこしょこしょと擽られながら耳元で囁かれると、もう我慢出来ません。
私は滝さんとのやり取りを全て小春様に告白しました。
所々言い淀む事はありましたが、その度に擽られるのですぐに白状させられてしまうのです。
「ふぅん。丁度良い機会じゃない。そのまま代わって貰いなさいな」
「そういう訳には……」
「本当にあの化け物にお熱なのね……そうだわ、今なら首を縦に振らせられるかしら?」
「へ……?」
小春様は怪しい笑みを浮かべると、再び私の身体を指で擽り始めました。
先程まで笑わされていた私の防壁は無いも同然でした。
「くひゅっ、ひあぅ……っ」
「もうあの化け物の所に行かないと約束しなさい。
そうしないとずっと終わらないわよ?」
「んぎゅう……!」
「こら、唇を噛んじゃ駄目よ」
「あふっ!?」
小春様は私の口を無理矢理に開かせると、そこに自身の指を捩じ込みました。
当然小春様の指を噛める筈も無く、私は声を堪る手段を失ったのです。
「いひゃ……っ、んひ、くひゅぐったひ……っ」
「やめて欲しかったらあの化け物の元にはもう行かないと誓いなさい。そうすれば直ぐに楽にしてあげる」
「おゆふひを……おはるひゃま……っ!」
「許して欲しいならどうすれば良いのか……分かるでしょう?」
小春様の指が私の口内までもを擽ります。
上顎、歯の裏、舌の上、頬の裏……
「あふっ、ひぁう……」
万が一にも小春様を傷付けまいと口を大きく開いているので、口の端から赤子のように涎を垂れ流しにさせられています。
それでいて身体の擽りも止めてはくれません。
口内をくちゅくちゅと掻き混ぜる音が頭に響き、それでもお役目の放棄だけはしたくなくて。
だから小春様の拷問も止まる事はなくて。
「……あら?」
事もあろうに、私は小春様のお布団とそのお召し物に粗相をしてしまったのです。
「あ、あ……おうひあえ、ぐしゅ……っ!」
「ごめんなさい。やりすぎてしまったわね」
泣きじゃくる私を撫でながら、身体を抱き寄せてくださいました。
そんな事をしたら更に汚れてしまうというのに……
「落ち着いた?」
「はい……ぐす……申し訳ありませんでした」
「良いのよ、私も悪い事をしたわね……
美子ちゃんの化け物通いを諦めさせられなかったのは心残りだけれどね」
「申し訳ございません。それだけは……」
「分かっているわ、お父様から任されたお役目だもの。
簡単には替えられない……だけど、妬けてしまうわね」
そう言って小春様は少し悲しそうに微笑むのでした。
その後は服を着替え、月明かりを頼りにお布団を洗いました。
小春様は付き合ってくれたばかりか、石鹸まで持って来てくださいました。
そして新しいお布団を敷いて、小春様に抱き締められながら眠りに就きました。
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