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第6話 因果応報

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/1/4 📚 シリーズ: 売りに出されて三年目、神様のお世話係に任命されました 📝 2,276文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

売りに出されて三年目、神様のお世話係に任命されました - 第6話 因果応報

本文

「じゃ、行ってくるから」

「気を付けてくださいね?」

「心配しなさんな。兎とこんなに立派な握り飯もあるんだ。鬼も気を良くする筈さ」

「本当に失礼な態度は止めてください。神様は知性の無い獣などでは決してないのです」

「分かった分かった。そっちも風邪引いてるって事になってんだから上手くやりなよ」

「滝さん……!」

滝さんは締まりのない顔で右手をひらひらと振りながら出ていきました。

私も私でお仕事に移ります。熱が出た……と言っても簡単に休める訳ではありません。

神様に関しては風邪を移す訳にはいかないから代わって貰ったという事になっています。

「ふぅ……」

ようやくお掃除が終わりました。

以前までは大変ではありつつも特に苦とは感じませんでした。

ですが今は胸が苦しく、時間が過ぎるのが遅く感じます。

神様と一日会えないだけでここまで虚無感に襲われるとは自分でも思っていませんでした。

雑巾を綺麗に洗い、桶と共に置き場に戻そうとした時……お屋敷の中が俄に騒がしくなっていました。

私を見つけた先輩の妙さんが困惑した表情で近付いてきます。

「美子、美子」

「どうかしましたか?」

「滝見なかった? 今朝から姿が見えないんだけど……」

「え、帰ってきていない……のですか?」

「という事は何処に行ったか知ってるのね? 早いとこ連れ戻してきて頂戴」

「……っ!」

嫌な予感がして、鍵が掛けられている部屋に向かいました。

……神様の道に続く蔵の鍵は、まだ返却されていませんでした。

※※※※※

「はぁ、はぁ……っ!」

息を切らせて蔵へ走ります。

大丈夫、滝さんは気を付けると言っていました。

きっと神様とのお喋りが楽しくて時間を忘れてしまっているのでしょう。

そう無理矢理に明るく考えても、どうしても良くない結末を想像してしまいます。

背中に流れる汗は走った事による物だけではないのでしょう。

「はぁ、はぁ……」

蔵の前まで来ました。錠前は開かれたままです。

地下道に入るとランプも灯されたまま。

行きに通った人がまだ帰ってきていない証左です。

逸る気持ちを抑えられず、足を縺れさせながら進みます。

「神様、失礼致します」

道を抜けて、神様の在わす部屋へ。

あぁ、あぁ、けれど分かっているのです。分かってしまったのです。

部屋に入る前から濃い血の臭いが漂っていたのですから。

予想通り、想像通り、檻の前には見慣れた和服が破かれ、そして血塗れになって乱雑に置かれておりました。

その横には蔵の鍵も転がっています。

そして、檻の中には兎からは絶対に出ないであろう夥しい量の血液が散乱し、奥にはまだ渇ききっていない頭蓋骨が一つ増えておりました。

「神様……」

「みこ」

神様は返り血に染まった顔を向けて私を呼びます。

それでも、その瞳だけは爛々と輝いているのです。

「神様、今朝に別の者が捧げ物をお持ちした筈ですが……その者は何処へ行かれたのでしょうか?」

「くった。われを、みくだしていたゆえに」

「そう、ですか……」

悲しい気持ちと、やっぱり……という何処か納得のいく気持ちが混ざっています。

お世話になった人ですが、神様を侮辱したのなら罰が当たって当然だ、とも思ってしまうのです。

そもそも、筑摩家の方々は皆神様を知性の無い獣としか思っておりません。

本家の方々はお家を繁栄させる為の見世物。

召使いはまるで猛獣のように恐れております。

いずれにせよ、獣と同類……人間より下の存在に見ているのです。

ただ一人……明確に“敵”として憎悪を向けている小春様を除いて。

「代理の者が失礼を致しました」

「つぎは、みこがくるのだ」

「承知しております。何があろうと、次からは必ず私自らがお勤めを果すとお約束致します」

「やくそく?」

「はい、約束です」

神様は血に塗れた手を檻の隙間から差し出してきます。

私もそれに応えるように手を重ねました。

「やくそくだ」

「はい、必ず」

一頻り神様と手を重ね合わせた後、後ろ髪を引かれる思いで滝さんの服と鍵を抱えて地下道を引き返しました。

今後、私以外の方が通らないように……なんて身の程知らずな願いを込めて蔵の鍵を閉めました。

※※※※※

血塗れの服をお屋敷に持ち帰り、当然の如く騒ぎになりました。

神様の事を知る人は呆れとも諦めとも付かず、知らない人は何か熊か狼がうろついているのでは、と不安になっているようです。

その騒ぎは早くに旦那様の耳にも入り、私は事情説明の為に居間へと呼び出されました。

私はそこで起きた出来事を話しました。

小春様との関係で脅されて、已むを得ずお役目を譲った……という部分は省いて。

「そうか、滝が……。まぁ、それは良い。

それよりも、やはりお前が世話をしたからあの鬼も機嫌を良くしていたのだな。

それを確認出来ただけでも良しとしよう」

滝さんの死は『まぁ、良い』の一言で済まされました。

もっとも、筑摩家では下女など元々そう言った扱いでした。

神様のお世話をさせて、喰われたら別の者に行かせる消耗品……それが筑摩家の下女なのですから。

滝さんはちょっと偉い立場だったので微妙に違いはありますが、あの人も旦那様から見れば消耗品に過ぎなかったと言う事でしょう。

「不慣れな者を行かせて食われても面倒だ。

今後も世話はお前がやれ。風邪を引いたのなら無理をしてまで行かなくても良い。

あの鬼とて一日餌を食わんからと言って死ぬ訳でもないだろう」

「かしこまりました。お気遣いありがとうございます」

頭を下げて居間を後にします。

消耗品として扱われている事に対する悲しみは……少しだけあります。

ですがそれよりも、神様のお世話役を続けるようにと言われた喜びの方がずっと大きかったのです。

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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