※ 第13話 本来の意味での夜伽
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
売りに出されて三年目、神様のお世話係に任命されました - ※ 第13話 本来の意味での夜伽
本文
「良くやったぞ美子。武中殿も大層喜んでおられた」
「恐縮です」
その夜、旦那様にお呼ばれして応接間に来ました。
武中さんとのお話が大層上手く行ったのか、旦那様はお酒を片手にご機嫌なご様子。
「よくぞ二週間であそこまで仕込んだものだ。
働きには対価で応えねばならん。何か欲しい物でも言ってみろ」
「それでは、お願い事が二つございます」
「言ってみろ」
「一つ、神様の枷を外して頂きたいという事。
二つ、私に檻の中に入る許可を頂きたい、という事。
それが叶えば芸事の幅も増えるかと」
嘘です。
確かに出来る事は増えるでしょうが、本心は少しでも麗鬼様をお逃しする機会を作りたいという一心でした。……その筈、です。
「うぅむ、そうか……」
私のお願いに旦那様は難しい顔をされます。
怒っているでも、憮然としているでも無い困惑の表情。
「何か問題でもあるのでしょうか?」
「実はな……枷の封も檻の鍵も、管理しているのは六条殿なのだ。
儂の一存でどうこう出来る物では無い。
そもそもあの枷や滑車にも安くない金を払っている」
「そこをどうにかお願い出来ませんでしょうか?」
「そうだな……まぁ、設備を壊す訳でも無し。
先行投資と思えばそう悪くない。うむ、六条殿に相談してみよう」
「ありがとうございますっ!」
床に手と額を付けて感謝の意を示します。
これで少しでも麗鬼様の御負担が減らせれば、そしてあわよくば逃す事が出来たのならば……麗鬼様に抱いた仄暗い劣情を、振り払えるのでしょうか。
※※※※※
結論として、檻の鍵を渡す事は出来ない……と言われました。
ただ、枷については手足の物は外せるとの事でした。
その分、首枷には更に強力な封札を貼る事になるので麗鬼様の御負担その物は然程変わりませんが……自由が効くようになったので気分が良いと言ってくださいました。
そして旦那様にああ言った手前、更なる芸事をして頂く事に申し訳ないと思いつつも、それに関しても快諾してくださいました。
輪を潜ったり、大玉に乗ったり……時には、いやらしく脚を広げる姿勢を要求されたりもしました。
娼婦の真似事など……と思っても、私にも麗鬼様にもそれを拒否する術はありません。
麗鬼様の全てを晒すように命令し、それが終われば頭を撫でて褒める……そんな自分に嫌気が差しますが、当の麗鬼様はもっとお辛いのです。
私には悲劇に浸る資格など無いのです。
ちなみに……お客様が裏社会やそれに近い場所に生きる方々である為か、時折人食いの依頼もあるようでした。
寧ろ麗鬼様の存在が裏社会で有名になるに連れて、処分したい“人”が運び込まれてくる頻度も増えています。
不幸中の幸いなのは、麗鬼様に人食いに対する忌避感や罪悪感が無い事でしょうか。
収集している人間の頭蓋骨も、檻の中が手狭になると幾らか放り投げたりと、私が思った程それに意味を持たせている訳でも無いようです。
そんな日々が続いて……気付けば私の齢は十五になっておりました。
いつの間にやら裏社会では、鬼操士などと呼ばれているとかいないとか。
私が麗鬼様を操るなどと……無礼千万にも程がありますが、その方が受けが良いからと旦那様は訂正してくれません。
女中の中でもそれなりの立場になり後輩も出来ました。
事情を知らない者からは、妖を従える得体の知れない者……と恐れられている節があります。
そのせいで益々私と麗鬼様の関係を誤解する人が増えてしまうというのに、私が幾ら言った所で怯えるばかりで誰も理解はしてくれません。
ところ話は変わって……
私も十五ともなれば女の快楽という物を多少は知る物です。
その甲斐あってか、ようやく本来の意味での夜伽を熟せるようになりました。
小春様も擽ったいと身を攀じる子供の頃の私よりも、気持ち良いと喘ぐ今の私の方がお好みの御様子。
私に触れる指にも熱が入ります。
「はっ、あぅ……、小春様……っ」
「可愛いわ美子ちゃん。ふふ、もっと啼いて、もっとその可愛い声を聞かせて?」
「は、恥ずかしい、んぁ……です……っ」
「まぁ、私に逆らうなんていけない子。
何処を触ればその可愛い声を聞かせてくれるのかしら?」
「あ、ひぃっ……!」
「あぁ……美子ちゃん可愛いわ。良いのよ、美子ちゃんの思うままに受け止めて」
小春様は私の体をまさぐるように触れます。
決して激しい訳ではなく。
ゆっくりと時間を掛けて昂らされた身体はほんの僅かな刺激にも反応してしまいます。
まるで弱火でじりじりと炙られるように。
まるで何らかの罰だとでも言うかのように。
焦らされて、焦らされて、もどかしい熱が身体の中に溜まっていきます。
「う、あぁ……っ! おねが、です…小春様ぁ……!」
「なぁに? 美子ちゃん」
「もう、もう……っ」
「ふふ、そうね。もう限界よね。だったら、ちゃんとにおねだりないと、ね?
おねだりの言葉は覚えているでしょう?」
「ぅ、あぁ……っ! わ、私は……、小春様を愛しておりますっ、お慕いしておりますっ!
私の身体は小春様に捧げます! 私の心も小春様に捧げますっ!
ですから、ですからどうか……っ! お慈悲を……お情けをください……っ!」
「えぇ、良く言えたわね。私の可愛い美子ちゃん」
小春様の唇が私の唇に触れます。
それはまるで誓いの接吻けのようでした。
小春様に強く強く愛されて、私の意識はあっという間に上り詰めてしまいます。
……実のところ、このおねだりに難しい事など無いのです。
小春様への愛も、想いも、全て嘘偽り無い本心なのですから。
ですが……麗鬼様への想いが心の中に在るのも、また事実なのです。
小春様もそれは分かっていて。
だからこそ、こうして私の抵抗力を削ぎ、追い詰めて、わざわざ口に出させるのでしょう。
そして、きっとそれは私が悪いのです。
小春様のような美しく、優しい御方に愛されておきながら麗鬼様も想ってしまう淫売な私が悪いのです。
あぁ、あぁ、罪深い私をお許しください。
死後はどのような地獄に落ちても構いません。
ですが、ですが、せめて生きている内は、今この時だけは……小春様と麗鬼様を想い続ける事をお許しください。
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