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※ 第15話 人の業

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/1/13 📚 シリーズ: 売りに出されて三年目、神様のお世話係に任命されました 📝 2,923文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

売りに出されて三年目、神様のお世話係に任命されました - ※ 第15話 人の業

本文

「麗鬼様っ!」

「美子? もう朝餉の時間か?」

「お役人様が軍人さんを大勢連れてやってきました。

今頃は……お屋敷の探索が行われていると思います。

きっと麗鬼様を討伐しに来たに違いありません……!」

「されど我に出来る事などない。我はこの檻からは出られぬのだ。此処が見つかるのも時間の問題であろう」

「ですがまだ暫しの猶予はある筈です。それまでにどうにかして檻を開ける事が出来れば……!」

私はノミを檻の格子に充てがい、そのお尻を金槌で叩きます。

金属同士がぶつかる音が地下部屋に大きく鳴り響きました。

にも関わらず、格子には僅かに傷が付いただけでした。

「何をしている。こんな物ではこの檻は壊せはしない」

「ですがっ、それでも何もしないよりは可能性がある筈です!」

「無駄だ。我はもう己の運命を受け入れている。

それよりも……美子は一刻も早くこの場から立ち去るのだ。こんな所を見られては美子も只では済むまい」

「嫌です! 私は麗鬼様の眷属なのです。おいそれと見捨てる事など出来よう筈もありません!」

「眷属と言っても口約束の仮契約のような物だ。

今の美子に身命を賭して尽くす義務はないのだ」

「だとしても……私は諦めません! 最後の時まで麗鬼様と共に居りますっ!」

「我の眷属を自称するなら我の命に従えっ! 今すぐこの場から立ち去るのだ!!」

「嫌です! 私は……」

「その化け物の言う通りよ、美子ちゃん」

突然、背後から声をかけられました。

私はその声を知っています。

まるで鈴を転がすような、透き通っていて優しげな声色。

私はその言葉を知っています。

麗鬼様を化け物と称し、私を美子ちゃんと呼ぶのは広いお屋敷にあっても一人しか居ません。

「小春、様……」

「こんな所に居たら危ないわ。こっちに来なさい?」

「出来ません。私は麗鬼様の眷属なのです!」

「そう、その化け物の名は麗鬼と言うのね。

可哀想な美子ちゃん……きっとその化け物に惑わされてしまっているのよ。

でも安心して? すぐに助けてあげるから」

小春様は普段と変わらない笑みを浮かべます。

その瞬間、地下部屋に複数の足音が響き、やがて数刻もしない内に藤原さんと軍人さん達が部屋に入ってきました。

「おぉ、あれが件の鬼ですか。報告を聞いた時は半信半疑でしたが……」

「嘘仰い。九割方疑っていたでしょうに」

そう言って憤る表情を見せる小春様。

ですがそれは……それではまるで……

「小春様が……告発したのですか?」

「えぇ、そうよ」

あっさりと肯定してみせました。

その声色には罪悪感も、優越感も、果てには一大決心をしたという重みすら感じられません。

「何故そんな事を……! 筑摩家の繁栄と麗鬼様は切っても切れない関係です。

麗鬼様を失ってしまっては筑摩家も……いえ、今回の騒動で既に筑摩家に被害が……っ!」

「どうでも良いわ。寧ろ化け物なんて死んだ方が良いのよ。

化け物が居なくなれば美子ちゃんがこの家に縛られる理由も無くなるでしょう?」

「小春様……っ」

「筑摩家が没落すれば私の政略結婚の話も無くなる。

うふふ、ここから離れた地で二人で静かに暮らしましょう?」

小春様の表情は普段私に向けてくれる優しい物でした。

ですが、その目の奥には確かな狂気も感じます。

「私も小春様を愛しています。ですが、だからと言って麗鬼様を見捨てるなど……私には出来ません。

お願いします、どうか麗鬼様を見逃してください!

麗鬼様は今や囚われの身……人に危害を加える事など出来よう筈もありません……!」

「残念ですがそうは行かないのですよ、お嬢さん」

「藤原さん……」

「確かに小春嬢の告発も私達は疑っていました。

ですが、それでも政府は軍を派遣した……それが答えです。

この先の人の世に、怪異など不要なのですよ。

些細な事であれその芽を摘むに越した事は無いのです」

藤原さんが右手を上げると、背後の軍人さん達が一斉に鉄砲を構えました。

その冷たい銃身が例外なく私達を捉えます。

「……何をしているの?」

そんな彼等に対して冷たい声を上げたのは、他ならぬ小春様でした。

「その鉄砲を下しなさい。それでは美子ちゃんに当たってしまうわ」

「お言葉ですが、それは出来ません。

あの鬼は我々の討伐対象ですが……それと同時に鬼を従え操る鬼操士の少女もまた討伐せねばならない存在なのですよ」

「そんな……! 話が違うわ! 美子ちゃんには手を出さないという約束だから私は……!!」

「それに対しては後で如何様にも謝らせて頂きます。……構えろ」

「っ、美子ちゃん!」

軍人さん達が引き金に指をかけて、小春様は私に駆け寄る形で私と軍人さんの間に入り込みました。

「撃ぇっ!!」

耳が痛くなる程の轟音と遅れて香る硝煙の匂い。

どしゃっ、と何かが地面に落ちる音。

思わず閉じた目を開くと、目の前には地に伏した小春様。

身体の中心から地面に赤色が広がります。

助けを求めて横を見るも、麗鬼様もまた脇腹を押さえる手の隙間から赤黒い血液が零れ出ていました。

「小春様……麗鬼様……っ!」

「に、逃げて…美子ちゃん……!」

「この先は行き止まりです。私としても無駄に苦しませたくはありません。

お三方、どうか大人しくしてくださるようお願い致します……構えろ」

藤原さんの指示に軍人さん達が再び鉄砲を構えます。

「……っ」

その冷たい銃口に身体が震えてしまいます。

足が竦んで、怖くて……ただ死を待つだけ。そう思っていました。

「美子、美子……!」

「麗鬼、様……?」

「我と契約しろ! 美子が……いや、我等が助かるにはそれしかない!」

「……!」

何をするのか、何が起きるのか……私には分かりません。

ですが、麗鬼様の仰る事です。麗鬼様が私を助ける為にと……ならば、迷いはありません。

「はい、仰せの通りに……っ!!」

震える足腰に鞭打って麗鬼様に近付きます。

麗鬼様は左手に付いた血液を、ご自身の唇にさしました。

「妙な真似をさせるな! 総員、撃ぇっ!!」

軍人さんが引き金を引くのと、私と麗鬼様が格子を隔てて接吻けをしたのはほぼ同時。

その瞬間、再び轟音が鳴り響きました。

一つは鉄砲から放たれる銃声。

一つは今日まで麗鬼様を封じ込めていた檻がひしゃげ、破壊される音。

「な……!?」

放たれた弾丸は、横転した檻の天板に防がれました。

「美子よ、怪我は無いか?」

「は、はい……!」

麗鬼様のお姿は先程までと変わりません。

ですがその身に宿る気力が、気迫が、見る者を圧倒しています。

「貴様等、よくも美子に武器を向けたな……!」

「っ、麗鬼様!」

麗鬼様から洩れ出た殺気に、思わずその手を取りました。

「美子……?」

「あの方達はただご自身の仕事を全うしているだけです!

どうか抑えてください、それよりも早く此処から脱出を! 一刻も早く小春様の治療をしなければ……!」

「……ちっ!」

麗鬼様は不服そうに舌打ちをして、けれども私と小春様を抱えて軍人さんを蹴散らして地下道を駆けます。

軍人さんには気の毒ですが、死ぬ程の怪我ではない筈なので許してください。

「ひゃぁぁ……っ」

速い。

私と小春様を抱えた麗鬼様は地上に出ると更に加速しました。

景色があっという間に通り過ぎて、おまけに時折ぴょーんと高く飛びもします。

私は怖くて情けない悲鳴を上げながら、ぎゅっと目を閉じる事しか出来ません。

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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