カレーなる歴史談義・ハイテク戦争篇
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
帰ってきた山本五十六 2023年4月18日夜~
本文
カレーなる歴史談義・ハイテク戦争篇
スライドが切り替わった。湾岸戦争の映像――砂漠を進む戦車群、夜空を裂く巡航ミサイル。
モニターに流れる赤外線映像を見て、五十六は息を呑んだ。
「……夜を昼のごとく撃つとは……これが、二十一世紀の戦か」
幕僚が解説する。
「はい、これは湾岸戦争です。1991年、米軍を中心とした多国籍軍がイラク軍をわずか一か月半で駆逐しました。精密誘導兵器と衛星による情報戦……“ハイテク戦争”と呼ばれました」
五十六はアイスのスプーンを置き、深く頷いた。
「……我らの時代、爆弾は雨のごとく落としても、命中するは天の采配に近かった。だが今は……一点を選び、必ず撃ち抜く。これでは艦隊決戦の意味も失われるな」
場に静かな緊張が漂った。
スライドはさらに進む。ニューヨークの摩天楼、そして2001年9月11日。旅客機がビルに突入する瞬間の映像。
幕僚の声が震えた。
「これが、いわゆる“9.11テロ”です。イスラム過激派による自爆攻撃でした」
五十六は凍りついたように画面を見つめた。
やがて、震える声で呟いた。
「……ジハード……か。己が命を投げ打ち、敵に肉薄する……。特攻と、何が違う……」
彼は額に手を当て、深くうなだれた。
「……あれほど否定したはずの、死を以ての突撃が……八十年を経ても、また姿を変えて続いているのか……」
幕僚も大臣も、言葉を失っていた。
やがて浜田大臣が静かに口を開いた。
「提督……人は悲しいことに、時に同じ過ちを繰り返します。しかし、だからこそ平和を守る力が必要なのです」
五十六はしばし黙し、やがて重く頷いた。
「……そうだな。兵は民を護るためにある。己を捨てる戦は、亡国の道だ。……それを、再び証明せねばならぬのだな」
アイスの残りを口に運び、深く息を吐いた。
「……甘味ひとつは時を超える。だが、人の戦はまだ学べぬか」
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