人類だけが消えた東京 ― ウイルス後の楽園
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
文明崩壊後の世界を90式戦車に乗って見に行こう
本文
◆ 1. 滅亡は静かに訪れた
そのウイルスは人類にだけ感染し、他の動物には一切作用しなかった。
治療薬が開発される前にパンデミックがピークを迎え、都市機能は数週間で崩壊した。
交通網は止まり
病院があふれ
人々は家に閉じこもったまま亡くなり
その後、衛生的に処理されず消えていった
動物は感染しないため、街の変化をただ不思議そうに眺めていた。
人類は跡形もなく滅んだが、街は破壊されなかった。
“戦争も暴動もなかった滅亡”だった。
だからこそ、街はそのまま生命の器になれた。
■ 東京は「人類のいない自然保護区」へ変わる
◆ 2. 自然が都市を飲み込み始める
電気が止まり、ネオンはすべて消灯
アスファルトの隙間から一斉に草木が成長
ビルの壁面に苔とツタが広がり
交通音が消え、鳥の声だけが響く
上野・新宿御苑・明治神宮などの大緑地帯を中心に植物の波が街を覆い始める。
◆ 3. 上野動物園からの“解放された生命”
飼育員がいなくなって一週間ほどで、賢い動物たちは自力で檻を破り始める。
ゴリラが壊した檻から草食動物も解放
象が正門を押し開け
鳥たちは自由に空へ
小動物はあちこちに散っていく
飼育されていた個体は驚くほど生命力が高く、本来の野生を短期間で取り戻す。
◆ 4. 葛西臨海公園のペンギンは「東京湾コロニー」を築く
人類のいない海は汚染が劇的に改善され、魚類が爆発的に増えた。
もし寒冷化が少し進んでいれば――
東京湾の浅瀬は亜南極ほどではないが十分冷たく
回遊魚が大量に戻り
ペンギンにとっては理想的な餌場
結果、彼らは繁殖を始め、レインボーブリッジ周辺でコロニーを形成する。
コンクリートの橋脚は外敵から守られ、巣を作るには絶好の環境となった。
◆ 5. 東京23区は完全に生態系に再編される
各区ごとに“王者”が誕生する。
渋谷 → サルとイノシシの縄張り
秋葉原 → 小動物のねぐら
皇居 → 小型シカの大群が定住
お台場 → アザラシと海鳥の楽園
新宿 → ゴリラが廃ビル屋上に巣
池袋 → フクロウと野良猫が勢力争い
鉄道路線は移動の大動脈となり、線路に沿って森が深く繁茂する。
山手線は“緑に飲まれた巨大な輪”となり、中央線の高架下は動物たちの影の通路になった。
■ 世界観の核
この終末には共通の特徴がある
● 人類は一瞬で消えた
破壊も争いもなく、ただ姿を消した。
● 街はゆっくりと自然に変わる
建物は崩れず、文明の痕跡はそのまま“動物の巣”になった。
● 動物にはユートピア
捕食者が少ない
食糧は豊富
住処は無数
汚染は改善される
気候は安定する
人類にとって終末、動物にとって楽園
◆ 海水温が下がり、東京湾は半・極地帯へ変質
人間の活動が完全に止まり
工場排水・船舶・人工熱源が消えたことで
東京湾は本来の姿を取り戻すどころか、微細な気候変化によりひんやりとした海域へ
冷水性の魚が戻り
浅瀬に海藻が揺れ
海は澄みわたって深い青に変わる
葛西臨海公園は、まるでリトル南極のようだ
◆ ペンギンの大コロニー(数百羽規模)
レインボーブリッジ、橋脚、ガード下の空洞――
これらは自然界には存在しない“巨大な巣場”になる
風を避けられる
天敵が少ない
足場が広い
海へすぐ潜れる
そんな環境で、ペンギンたちは都市型コロニーを形成
砂浜には
ひなたぼっこするペンギンの列が波のリズムに揺れ、
夜になると
橋脚下に青白い月光が反射し、ペンギンの影が揺れている。
◆ アザラシの群れはお台場を拠点に
デックス東京ビーチのデッキや
りんかい線の旧駅跡にアザラシが寝そべり海へ転がるように入っていく
安全
食料豊富
敷地広大
この島状の人工地形はアザラシにとって“理想の繁殖地”に
昼下がりにはアザラシがガラス張りの旧ショッピングモールの屋根で寝ていて、
中には魚の群れが迷い込んで泳いでいる
◆ 海鳥が都市を「新たな空の王国」に
人類が去ったことでゴミが激減し海鳥たちは本来の生態に戻っていく
ウミウ
カモメ
トウゾクカモメ
アビ類
そして時折漂着する流氷が運ぶ渡り鳥
これらが都市の空を支配し、“旧東京”の上空に新たな空路を描く
■ この世界には「争いの音」がない
エンジン音も
サイレンも
クラクションも
怒鳴り声も
すべて消えた
あるのは
波の音
ペンギンの鳴き声
アザラシの寝息
風が草を撫でる音
だけ
人類にとっては終末でも、動物たちにとっては最高のユートピアが完成している
作品統計
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