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配信20回目 呪物屋の借りは高い ――五万円の領収書

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/5/1 📚 シリーズ: 影森ゆらは今日も死ぬ ――死後も無理やり働かされます 📝 6,976文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

影森ゆらは今日も死ぬ ――死後も無理やり働かされます - 配信20回目 呪物屋の借りは高い ――五万円の領収書

本文

放課後の教室は、いつもの平和な空気だった。

 窓の外は曇り。校庭のラインが白く光って、運動部の掛け声が遠くから聞こえる。私の席に、いつもの二人がたまっている。

 夜宵やよいるなは、購買で買ったシュークリームを二個並べて、どちらから食べるかを真剣に悩んでいた。142センチの小さな体。大きなたれ目。ふわふわした空気。この子がシュークリームの順番に悩んでいる時間が、世界でいちばん平和な時間だと思う。

「ゆらちゃん、カスタードとチョコ、どっちが先がいいと思うぅ?」

「好きなほう先に食べなよ」

「どっちも好きなんだよぉ」

「じゃあ同時に食べれば」

「天才」

 るなは本当に両手にひとつずつ持って、交互にかじり始めた。天才ではなく暴挙ぼうきょだ。

 白澤しらさわ幽々ゆゆは、窓際に座って静かにスマホを見ていた。色素の薄い髪。灰色寄りの目。制服をきちんと着ているが、どこか生活感が薄い。この子は三人でいる時だけ、空気が少しだけ柔らかくなる。

「ゆらちゃん、今日バイトぉ?」

 るながシュークリームの合間に聞く。

「たぶん。呼び出しがなければ自由」

「最近忙しそうだね」

 幽々が静かに言う。

「まあ、色々あって」

「ゆらちゃんのバイト先、ブラックすぎるよぉ。転職したらぁ?」

「借金があるから辞められない」

「えぇ〜、借金ぅ? ゆらちゃん何したのぉ」

「上司の備品壊した」

「高かったのぉ?」

「四千九百八十万円」

「よんせん!?」

 幽々が無言で私の肩をぽんと叩いた。労ねぎらいなのか同情なのか。たぶん両方。

 スマホが鳴った。朔夜さくやではなく、知らない番号。出ると、聞き覚えのある陽気な声がした。

「お嬢ちゃん、今日暇か~?」

 銭原ぜにはら呪助じゅすけ。呪物道具屋。闇市ブローカー。関西弁と九州弁のちゃんぽんで喋る、陽気なのに目が笑っていない男。

「どうして私の番号知ってるの」

「商売人は顧客情報くらい管理するばい」

「私は顧客じゃないんだけど」

「朔夜に言うとくけど、今日お嬢ちゃん借りるけんな」

「勝手に予定を組むな!」

 電話が切れた。有無を言わさない。数秒後に朔夜からレイン。

「銭原に付き合え。仕入れ先が揉めてる」

 絵文字なし。説明もなし。いつもの温度。

 るなが「またぁ?」と心配する。幽々が「気をつけて」と言う。ゆらは「今回は死なないと思う……たぶん」と答えて教室を出る。

 シュークリームのかけらがるなの口元についていた。拭いてあげる余裕すらなかった。

 ――――――

 事務所に着くと、銭原が待っていた。朔夜もいる。

 銭原はいつもより身なりを整えていた。といっても柄シャツは柄シャツだが、ジャケットが少しだけましなものに変わっている。サングラスは磨いてある。金歯がひとつ、蛍光灯の光を拾って光る。片耳のピアス。細いヒゲ。

 いつ見ても胡散臭い。でも今日は、胡散臭さの下に「商談の緊張感」みたいなものがある。

「朔夜、なんで私が銭原さんに付き合わないといけないの」

「銭原の仕入れ先が、うちが前に潰した案件の影響で取引を停止した」

 前に。あの闇バイトの子が開けた保管庫のことだ。あの箱の中に入って、組織的な保管庫を見つけて、銭原が「まだ残っとったんか」と顔を変えた、あの案件。

 ※配信16回目「闇バイトの報酬は届かない」参照

 あれを潰つぶしたことで、銭原の仕入れルートの一部に影響が出ているらしい。

「それ銭原さんの問題でしょ」

「銭原の仕入れが止まると、うちの呪具の調達にも影響が出る。つまり俺の問題でもある」

「じゃあ朔夜が行けばいいじゃん」

「俺が行くと相手が構える。銭原の仕入れ先は"怪異を封印する側"を嫌ってる」

「封印する側って……」

 銭原が口を挟む。

「うちの仕入れ先はな、怪異を潰す側やなくて、活かす側の人間が多いんよ。朔夜みたいなのが来ると、"商品を壊すやつが来た"ちゅう空気になる」

「活かす側」

「怪異を封じるんやなくて、保存して売る。育てて価値を上げる。そういう商売をしとる連中ばい」

 あの保管庫と同じだ。怪異を棚に並べて番号を振って、温度管理までして保存していた、あの場所と。

「で、なんで私が」

「お嬢ちゃんがおると場が和むけん」

「和まないって前も言ったよね」

「和むんよ。女子高生がおると、殺伐さつばつとした商談でもみんなちょっと丸くなるとよ」

「私を緩衝材にするな」

 朔夜が低く言った。

「影森。ついでに相手の様子を見てこい。最近"上が動いてる"という話がある。そのあたりの空気を拾え」

「上?」

「いいから行け」

 説明が雑。いつものこと。

 ――――――

 銭原に連れられて、街の中心部からやや外れた区画に入った。

 再開発から取り残されたエリア。大通りから一本裏へ入ると、急に時間が古くなる。この街はいつもそうだ。高架の影。古い雑居ビル。シャッターが半分降りた商店。路地の奥に、蛍光灯の切れかけた看板がいくつか並んでいる。

 銭原は迷いなく歩く。この辺りの道を全部知っている足取り。

 古いビルの裏手に回る。駐車場の入口。「月極」の看板が錆さびている。使われていない。でも奥へ進むと、鉄の扉があった。

 銭原がノックする。三回、二回、一回。

 扉が開いた。

 中に入る。

 広い。もとは地下駐車場だったスペースに、仮設の棚やテーブルが並んでいる。照明は最低限。裸電球はだかでんきゅうがいくつかぶら下がっていて、オレンジ色の弱い光が棚の上の品物を照らしている。天井が低い。地下の空気。コンクリートの匂いに、何か甘いような、焦げたような、名前のない匂いが混じっている。

 棚に並んでいるもの。

 呪符じゅふ。護符ごふ。小瓶に入った液体。乾燥させた何か。巻物。古い箱。ラベルのない缶。名前のない薬品。見たことのない道具。木製の札束。銀色の針。紙で包まれた石。

 そして、ガラスケースの中で微かすかに動いている——何か。

「……ここ、何」

「呪物の卸売市場おろしうりいちばみたいなもんやな。小売はうちみたいな店がやるけど、仕入れはここで回っとる」

「こんなのが、この街にあったの」

「あるとよ。お嬢ちゃんが知らんだけで」

 人がいる。十人ほど。銭原のような派手な格好の人間ばかりではない。スーツ姿の人もいれば、作業着の人もいる。白衣っぽいのを着た人もいた。年齢もばらばら。

 共通しているのは、全員が私を見て「部外者」だと一瞬で判断したこと。視線が刺さる。品定めではなく、警戒。知らない人間がここに入ってきたことへの反応。

 銭原が軽く声を上げた。

「うちの嬢ちゃんや。手ぇ出すなよ」

 視線が少し和やわらいだ。銭原の顔が利いている。この場所で嫌われてもいるが、同時に一目置かれてもいる。出入り禁止にはなっていない。つまり商売として必要とされている。

 ぬいが制服の内側で震えていた。

「ここ、やばいぞ」

 小声。灰白色の体が、布越しに縮んでいる。

「怪異の匂いがあちこちからする。全部封印されとるが、いつ起きてもおかしくないのもおる」

「起きないでほしいんだけど」

「祈っとけ」

「祈りで解決した案件ある?」

「ない」

「だよね」

 銭原が棚の間を抜けて、奥のテーブルに向かった。そこに男が座っている。四十代くらい。地味な服装。髪を短く刈っている。顔に傷はないが、目つきだけが鋭い。銭原とは違う種類の胡散臭さ。こっちは陽気さがない分、かえって怖い。

 銭原が私を紹介する。

「うちのバイトや」

「バイト? 呪物屋がバイトを連れてくるのか」

「緩衝材かんしょうざいやな」

「やめろ」と私は小声で言ったが、無視された。

 卸元おろしもとの男と銭原が交渉を始めた。

「あんたの客が、うちの倉庫を潰した」

「俺の客やない。朔夜はうちの取引相手や」

「取引相手の仕事で、うちの保管庫がひとつ消えた。損害は出とる」

「そら申し訳なかったばってん、あの保管庫は放棄品ほうきひんやろ。誰も管理しとらんかったから闇バイトの小僧が入れたんやないか」

「放棄品でも帳簿上は生きとった。上がうるさい」

 「上」。その言葉が出た。朔夜が言っていた「上が動いている」という話。ここでも聞こえる。

 銭原は顔色を変えずに続ける。

「うちも困っとるんよ。仕入れが止まると店が回らん。あんたとこだって、うちが買わんくなったら在庫が腐るやろ」

「……まあ、そうやな」

「今回のことは水に流す。ただし条件つきや。うちの保管庫ほかんこにはもう手を出さん。それと、今後朔夜が動いた案件の情報は、先にうちに流してくれ。こっちで仕入れに影響が出るかどうか判断する」

「情報を先に流せ、か。高くつくぞ」

「高い安いは後から決めればええ。まず、取引を再開してくれ」

 交渉は噛み合ったり外れたりしながら進む。銭原の口調は陽気だが、内容はシビアだ。笑いながら相手の弱いところを突き、押されそうになると話題を変え、最終的に自分の条件を通す。この人が呪物の売買で生き残ってきた理由がわかる。口だけで戦える。

 交渉の間、私は闇市の中を見て回った。銭原に「触るな、買うな、名前を聞くな」と言われている。三つとも守れる自信がある。触りたくないし、買えないし、名前を知りたくない。

 棚の間を歩く。品物には値札がついているものとついていないものがある。値札がないほうが高いらしい。「値段を聞かないと買えないものは、聞ける人間にしか売らない」という仕組み。

 古い木箱の前を通りかかった時、ぬいが「止まれ」と小さく言った。

「何」

「あの箱、匂いが似とる」

「何に」

「おぬしが前に入った保管庫の箱に」

 前に入った保管庫。あの闇バイトの子が開けた、封帯箱ふうたいばこ。

 ※配信16回目「闘バイトの報酬は届かない」参照

「……同じ出所でどころ?」

「同じかは分からん。でも、同じ系統の匂いや。作った場所か、管理していた場所が近い」

 つまり、あの保管庫と繋がっている品物が、ここにも流れてきている。個人の持ち物ではなく、組織的に管理されていた呪物の一部。

 棚の反対側に、スーツ姿の男女が立っていた。

 さっきから気づいていた。この二人だけ、闇市の客ではなく「視察」に来ているような空気がある。品物を見ているふりをしながら、私のほうをちらちらと見ている。

 品定めされている。

 商品を見る目。私を「何かの候補」として測っている目。あの保管庫の管理システムが私を「管理者」にしようとした時と、同じ種類の視線。

 ぬいが囁ささやく。

「あの連中、おぬしのことを見とる。商品を見る目じゃ。近づくな」

 近づかない。でも、見られていることは分かる。体の芯が少しだけ冷える。

 ――――――

 交渉がまとまった。銭原が条件を飲む形で取引再開。ただし「保管庫に手を出すな」という条件が加わった。

 卸元の男が立ち上がる。帰る間際、銭原に近づいて、低い声で言った。

 聞かせるつもりはなかっただろう。でも、私の耳に入った。

「銭原。あんたも知っとるやろうが、最近上が動いとる。蒐集のほうや。あんたが昔おった頃とは規模が違う。あの嬢ちゃん、あんまり連れ回すな。目ぇつけられるぞ」

 蒐集しゅうしゅう。

 初めて聞く言葉。でも銭原の顔が一瞬だけ固まった。口元の笑みはそのままなのに、目の奥だけが止まった。この人のこういう反応を見るのは、あの保管庫の台帳を見た時以来、二度目だ。

「……知っとるよ」

「知っとるなら、なおさらや。あの嬢ちゃん、境界きょうかいに入れるんやろ。そういう人間は、あっち側では"商品"以上の価値がつく」

 商品以上。

 銭原は黙って頷うなずいた。それだけ。

 卸元が去った後、銭原はしばらく動かなかった。テーブルの上に残ったコーヒーカップを眺めている。中身はもう冷めている。

「銭原さん」

「ん」

「聞こえてた。さっきの」

「……耳がいいのう、お嬢ちゃん」

「蒐集って何」

 銭原は私を見た。それから闇市の出口を見て、立ち上がった。

「ここでは話さん。出るぞ」

 ――――――

 闇市を出た。夜の街。古いビルの影が長い。高架の下を歩く。車の音が遠い。

 銭原はしばらく黙って歩いていた。この人が黙っているのは珍しい。いつもは黙る隙がないくらい喋る人だ。

「銭原さん。"蒐集"って何。さっき"昔おった"って言われてたけど」

「…………」

「銭原さんが昔いた場所って、あの保管庫を作った人たちと同じ?」

 銭原が立ち止まった。高架の下。街灯が一本だけ点いていて、足元だけが明るい。

「昔な」

 声のテンポがいつもと違う。陽気さが抜けている。

「怪異を封じるんやなくて、集める側におったことがある。呪物を仕入れるんやなくて、作る側や。怪異を見つけて、保存して、育てて、値段をつけて流す。本物を見分ける目は、そこで覚えた」

「……なんで辞めたの」

 長い沈黙。高架の上を電車が通る。音が頭の上を流れていく。

「売ったらあかんもんを、売れと言われたことがある」

「売ったらあかんもの」

「ああ」

「何を」

「……それは、まだ言えん」

 銭原は歩き出した。自販機の前で足を止めて、缶コーヒーを二本買った。一本を私に渡す。

「おごりや。今日はよう付き合うてくれた」

 温かい缶。手のひらに熱が伝わる。

「銭原さんは、私のことも"商品"だと思ってる?」

「思っとらん」

「ほんとに?」

「商品にしては文句が多かばい。値段つけようがなか」

 笑っている。でも目は笑っていない。今日ずっとそうだ。この人の本気は、口調がいつも通りの時に出る。

「お嬢ちゃん。今日見たことは朔夜に報告してええ。ただし、"蒐集"の名前は、もうちょっと後にしてくれ」

「なんで」

「朔夜が先に動くと、俺のほうが立場がなくなる。順番があるんよ」

「順番って……」

「商売人にはな、情報を出すタイミングちゅうもんがあるとよ。今はまだ、早か」

 缶コーヒーの温かさが、少しずつ手のひらに馴染なじんでいく。

 銭原は相変わらず笑っている。金歯がひとつ、街灯の光を拾う。

「もうひとつだけ」

「なに」

「あのスーツの連中。闇市でお嬢ちゃんを見とった二人組」

「気づいてたの」

「当然じゃ。あの手の連中は、うちが昔おった側の人間や。今は別の形で動いとる。あれに声かけられても、絶対ついて行くなよ」

「……怖いこと言うね」

「怖いんやなくて、本当のことを言うとるだけばい」

 銭原は缶を一気に飲み干して、空き缶をゴミ箱に投げた。入った。

「ほな、帰るか。朔夜が待っとるやろ」

 ――――――

 事務所に戻る。朔夜は机に向かっていた。

「どうだった」

「闇市、行ってきた」

「見えたものを報告しろ」

「……すごかった。怪異が商品として棚に並んでた。封印されてるけど、中には生きてるのもあった。あの保管庫の箱と同じ匂いのする品物もあった」

 朔夜の目が動く。

「同じ系統か」

「ぬいがそう言ってた。作った場所か、管理してた場所が近いって」

「他には」

「スーツの男女が私を見てた。品定めする目で。あと、卸元が"上が動いてる"って言ってた」

「上の名前は出たか」

「…………」

 銭原に「まだ言うな」と言われている。でも朔夜にも嘘はつきたくない。

「銭原さんに、もう少し待ってくれって言われた」

 朔夜の眉まゆが微かすかに動いた。

「銭原が隠しているということは、銭原にとってもまずい名前だということだ」

「朔夜は知ってるの?」

「推測はできる。だが確定は銭原から引き出す」

「引き出すって、また値段交渉するの?」

「情報にも相場がある」

「この事務所の人間、全員金の話しかしないの?」

「金は共通言語だ。怪異より通じる」

「通じ方が間違ってるんだよ」

 ぬいがソファの上で欠伸あくびをした。

「おぬし、今日は死んどらんな。珍しい」

「珍しくない。今日は戦闘案件じゃないし」

「それでも銭原がらみで死なんかったのは奇跡じゃ」

「銭原さんそこまで危険じゃないでしょ」

「あの男の周りは、あの男自身より周囲のほうが危険なんじゃ」

 否定できない。闇市で感じた視線を思い出す。

 朔夜が言った。

「今日の分、銭原に日当を請求しろ」

「え、もらえるの?」

「お前が同行したのは銭原の依頼だ。銭原に請求しろ」

「いくら」

「五万」

「五万!? いつもの時給と桁けたが違うんだけど!」

「闇市の同行は相場が高い。命の危険があるからな」

「今さら命の値段が上がるの腹立つ」

 銭原にレインを送る。

「今日の日当五万円ください」

 返信。

「三万」

「三万って言ってる」

 朔夜が私のスマホを取り上げて打つ。

「五万。払わないなら次の仕入れに協力しない」

 返信。

「四万」

 朔夜が打つ。

「五万」

 返信。

「四万五千」

 朔夜が打つ。

「五万」

 返信が来るまで三十秒。いつもの銭原なら即答する。三十秒黙ったということは、本気で悩んだということだ。

「……五万。払うばってん、領収書りょうしゅうしょくれ」

「領収書!? この事務所に領収書なんてあるの?」

「ある。経費処理に使う」

「経費処理がちゃんとしてるの逆に怖い」

「脱税だつぜいはしない。怪異案件で脱税して税務署ぜいむしょに入られたら、そっちのほうが面倒だ」

「怪異より税務署が怖いんだ」

「税務署は怪異より容赦がない」

 五万円。

 私のバイト代としては破格だ。時給三百円の世界で生きている人間にとって、五万円は百六十時間分以上の労働に相当する。百六十時間。ほぼ一ヶ月分だ。

 ただし借金は四千九百八十万円(蘇生そせい費の加算でもう少し増えている)。焼け石に水。でもないよりまし。

「……今日は死ななかったし、五万円もらえたし、るなのシュークリームもおいしかったし」

「おぬし、人生のハードルが低くなっとるのう」

「低くしないとやってられないんだよ」

 五万円の領収書を朔夜が書いた。宛名は「銭原呪助殿」。但し書きは「同行費」。

 この事務所は、怪異を封印して、心霊配信をして、死んだバイトを蘇生そせいして、闇市の領収書を発行する。

 何でも屋にもほどがある。

 でもまあ、今日は五万円もらえた。

 それだけは、良い一日だった。

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作者について

勇者ヨシ君

勇者ヨシ君

愛知県安城市で「ギルド酒場るすと」というゲームバーをやりながら、小説を書いています。 レトロゲーム、ボードゲーム、シーシャ、酒場の空気感が好きです。 異世界×ゲーム×酒場の作品や、 ホラー×...

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