第1章「風が呼ぶ日」
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
たまたま拾った一本の指輪。 それが、世界を救う “始まり”だった。 人と不思議な生物〈ユニオン〉が共に生きる世界。 指輪〈ユニオンリング〉に選ばれた少年・明道ヤマトは、 未来から来た少女アスカ、そして孤独な青年リョウガと出会う。 炎、風、時―― 相棒と心を重ね、戦い、別れ、そして再び巡る運命。 これは、 「相棒との絆」が、神さえも超える物語。 ――たまたま拾った指輪で、世界を救う物語。
本文
――風が止まっていた。
ユニオンシティの外れ、風力塔の丘。
風車は音を立てず、
ただ青空の下で眠っている。
そのふもとに、ひとりの少女が
座っていた。
アスカ・ブレイズリー。
まだ十五歳。
金色の髪を後ろで束ねた細身の少女。
頬には泥の跡、手には古びた布包み。
包みの中には、銀色の指輪。
風の紋章――
ウインドイーグル。
それは、母の形見だった。
「……どうして、置いていったの……?」
アスカの声はかすれていた。
誰もいない丘に、
その言葉は虚しく消える。
⸻
母は風の研究者だった。
“風のユニオン”
を解析し、世界を動かす
新エネルギーに変える夢を持っていた。
だが、ある日突然の研究所爆発事故。
その日から、アスカの世界は静止した。
父・ユウゴは娘を励まそうとした。
しかし、アスカは笑えなかった。
「風なんて嫌い……」
そう言い残して、
母の研究室の鍵を閉ざした。
⸻
――だが、その日。
丘に立つ風車が、微かに動いた。
アスカは顔を上げた。
無風のはずの空気が、ふっと頬を撫でる。
「……風?」
包みの中のリングが、淡く光った。
白い羽の幻影が、空に舞い上がる。
そして、どこからか声がした。
『――泣いているの?』
「……誰?」
『ボクは風。
君が
“もう一度空を見たい”
って言ったから、来たんだ。』
「そんなこと、言ってない……!
もう……誰もいないのに……!」
アスカは立ち上がり、風に向かって叫ぶ。
「どうして……どうして、私だけ……!」
風が強く吹いた。
リングが指に吸い込まれるように嵌まり、光を放つ。
『ボクの名はウインドイーグル。
君が
“動かした”
んだよ、この風を。』
アスカは息を呑んだ。
手が震え、涙が零れる。
「……私が……?」
『うん。
君の中には、まだ
“空を信じる心”がある。
風は、それに応えるんだ。』
その言葉に、胸が締めつけられた。
「……お母さんも……そう言ってた。」
『なら、信じて。
風は悲しみも運ぶけど、希望も運ぶ。
君が歩けば、ボクが吹く。』
光が弾けた。
風車が一斉に回り出す。
丘の上、アスカの髪が宙に舞う。
⸻
その瞬間、彼女の視界に
“影”
が走った。
黒い風の渦――
歪んだユニオンの形。
人間の欲望から生まれた
“ダークウインド”
が空を裂いた。
『危ない、アスカ!』
風が盾のように広がり、衝撃を防ぐ。
しかし、アスカの身体は
地面に叩きつけられた。
「う……ぁ……!」
痛みと共に、彼女の意識が暗くなる。
遠くで、誰かの声がした。
「……ブレイズリー博士の娘を……
確保しろ。」
黒い外套の集団が風車の影から現れる。
胸には、赤い蛇の刻印。
――デビルダークの紋章。
⸻
彼らがアスカを囲む。
しかしそのとき、風が一瞬止まった。
『まだ終わってない。
ボクたちは……飛べる。』
ウインドイーグルの声が微かに響く。
アスカは握った拳を見つめた。
恐怖よりも、心の奥に
何かが燃え始めていた。
「……お母さんの……風を、止めないで。」
リングが再び光る。
小さな旋風が彼女の周囲を包み、
黒衣の者たちが吹き飛ばされた。
『やったね、アスカ。』
「……でも、怖いよ。」
『それでいい。
怖くても立つ、それが風の強さだよ。』
涙を拭いながら、アスカは立ち上がる。
風車の羽根が月光を受け、
彼女の影を長く映し出した。
⸻
その夜、父の研究室に戻ったアスカは、
母の遺したメモを見つけた。
“風は導く。
未来を越えた先で、時の蛇と交わる。”
アスカは呟いた。
「……時の蛇……?」
外の風が静かに吹き抜ける。
その音はまるで、
“運命の呼吸”
のようだった。
作品統計
📚 本を探すなら「よみどき」(あいぺんが運営する本の発見サイト)
130万冊を超えるコミック・小説・書籍の順位と値段を毎日みて、いま読むものを決められます。