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進むために止まる

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/5/28 📚 シリーズ: 終末世界90式の旅 📝 4,598文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

文明崩壊後の世界を90式戦車に乗って見に行こう

本文

翌朝、雪は止んでいた。

ただ、空は暗かった。

雲は低く、海側から重く垂れこめている。青空ではない。晴れたわけでもない。ただ、雪が一度手を休めているだけに見えた。

シオナは和室の窓から外を見ていた。

「止んでる」

サヤは布団の中から顔を出した。

「でも、空が信用できない」

ミズホはすでに地図を開いていた。

「出られなくはない。でも、今日も長く走る前提にはしない方がいいね」

シオナはうなずいた。

「進めるところまで。危なくなったら止まる」

「一昨日と同じ」

「うん。一昨日と同じ」

それはもう、逃げ腰の言葉ではなかった。

朝食を済ませると、三人は防寒具を着込んで外へ出た。

駐車場の90式は、また白くなっていた。昨日のうちに一度落としたはずの雪が、夜のあいだに積もり直している。

サヤは外に出た瞬間、白い息を吐いた。

「今日は風は弱いね」

ミズホは手袋をはめ直す。

「でも足元は凍ってる。滑らないで」

「はいはい」

「はいは一回」

「はい」

シオナは車体の周りを見て回った。

砲口カバー。

ハッチ周り。

外部ラック。

濡れ物箱。

履帯。

視界装置。

排気周り。

昨日読みふけった整備教本の内容が、まだ頭の中に残っていた。何となく見るのではなく、何を見ればいいのかを少しずつ考えながら確認する。

「ハッチ周りから落とす」

シオナが言うと、サヤがブラシを持って頷いた。

「了解であります。じゃなくて、分かった」

ミズホが少し笑った。

「普通でいいよ」

三人は黙々と雪を落とした。

市の職員と、巡回班の一人が様子を見に来た。

彼は空を見上げてから言った。

「今日は午前中なら動けるかもしれません。ただ、海沿いは変わりやすいです。西目方面へ進むなら、途中で止まれる場所を意識してください」

シオナは頭を下げた。

「分かりました。無理はしません」

「道の駅にしめ、その近くの湯っ娘ランドは、退避先として使えると思います。雪が強くなったら、そこへ入ってください」

ミズホはすぐに地図へ印をつけた。

「道の駅にしめ、にしめ湯っ娘ランド」

サヤが言う。

「また温泉系?」

「温泉というより、避難先候補」

「同じくらい大事」

「まあ、そうかも」

点検を終え、三人は90式に乗り込んだ。

シオナは操縦席。

サヤは車長ハッチ側。

ミズホは地図と記録袋を抱えて砲手ハッチ側。

外は暗い。

けれど視界はある。

シオナは低く息を吸った。

「出発する」

90式はゆっくりと動き出した。

はまなすの建物が後ろへ下がる。

昨日一日、三人を守ってくれた灯りの場所。

その先には、また国道7号線が続いている。

にかほから北へ進む道は、最初は静かだった。

雪は路肩に残り、田畑も家々の屋根も白い。

空は重く、太陽は見えない。

それでも道路そのものは通れた。

サヤが短く外を確認する。

「道は開けてる。雪はあるけど、視界は大丈夫。前方、車は少ない」

ミズホが地図を見る。

「このまま北上。西目方面へ」

シオナは速度を上げなかった。

昨日、整備教本を読んだせいか、車体の音がいつもより気になる。

エンジンの響き。履帯の鳴り。雪を踏む感触。何か変わった音がしないか、耳が自然に探っている。

サヤが言った。

「シオナ、今日ちょっと慎重だね」

「昨日、教本読んだから」

「読んだら慎重になるの?」

「読んだら、怖いところが増える」

ミズホがうなずいた。

「いいことだと思う。知らない怖さより、知ってる怖さの方が扱える」

サヤは少し考えてから言った。

「名言っぽい」

「ぽいだけ?」

「かなり名言」

車内に小さな笑いが生まれた。

だが、その穏やかさは長く続かなかった。

西目へ近づく頃、空が急に暗くなった。

海側から灰色の壁のようなものが迫ってくる。

最初は遠くの雪雲に見えた。けれど、数分もしないうちに前方の景色が白くかすみ始めた。

サヤがハッチを少し開け、すぐに閉じた。

「来た。雪、強くなる」

ミズホは地図を押さえた。

「道の駅にしめが近い。そこで止まろう」

シオナはすぐに速度を落とした。

「場所は?」

「この先。国道沿い。にしめ湯っ娘ランドも隣接してる」

サヤが外を短く確認する。

「前方、白くなってきた。道路はまだ見えるけど、長くは無理」

「道の駅に入る」

シオナの声は落ち着いていた。

見えなくなってから探すのではない。

見えているうちに止まる。

神町で教わり、はまなすで体に叩き込まれた判断だった。

やがて道の駅にしめの案内が見えた。

雪はさらに強くなる。

風が横から吹き、視界が白く揺れる。

サヤが言った。

「入口、左。駐車場広い。車は少し。人影なし」

シオナは90式をゆっくり進め、駐車場の端に停めた。

「停止。ここで雪が止むのを待つ」

ミズホはすぐに頷いた。

「賛成。今は進まない」

道の駅にしめは静かだった。

建物は閉まっていたが、完全に荒れている様子はない。

入口付近には雪が吹き込んでいた。駐車場には数台の車が残っているが、人の気配は薄い。

三人は防寒具を整えて外へ出た。

雪が強い。

ほんの短い距離でも、帽子や肩に白く積もる。

サヤは首をすくめた。

「また雪だるまになる」

ミズホが言う。

「長居しない。確認だけ」

道の駅の建物内には、少しの物資が残っていた。

水。

古い保存食。

手袋や簡易カイロ。

紙の地図。

誰かが使った記録ノート。

ミズホはノートを開き、最新に近そうなページを探した。

「にかほ方面、はまなす利用可」

「本荘方面、天候により通行注意」

「西目、雪で視界不良時は湯っ娘ランドへ退避」

「国道7号線、海側からの急変あり」

サヤはそれを見て言った。

「ちゃんと書いてある。つまり、みんなここで止まってるんだ」

シオナは窓の外を見た。

雪は止むどころか強くなっていた。

90式の輪郭がもう白くぼやけ始めている。

「隣の湯っ娘ランドへ移ろう」

ミズホが頷く。

「このまま道の駅で待つより、宿泊できる場所を確認した方がいい」

三人は道の駅で必要最小限のものだけを確認し、メモを残した。

にかほ方面より到着。

雪のため停車。

神町、舟形、庄内、にかほ方面の生存確認あり。

隣接施設で天候回復待ち。

サヤが最後にペンを置いた。

「こういうメモ、だんだん旅の足跡みたいになってきたね」

ミズホは少しだけ考えてから言った。

「誰かが後で読むなら、足跡以上の意味がある」

「そっか」

三人は再び雪の中へ出た。

にしめ湯っ娘ランドは、道の駅から近かった。

近いのに、その距離が長く感じるほど雪が強い。

建物の入口へたどり着く頃には、三人の肩も帽子も白くなっていた。

にしめ湯っ娘ランドの中は、冷えていたが、風はなかった。

それだけでありがたかった。

ロビーには、かつての案内表示が残っている。

宿泊施設として使われていたらしく、客室もある。施設内は完全な通電状態ではないが、窓も壁も無事で、外の吹雪から逃れるには十分だった。

サヤは入口の内側で肩の雪を払った。

「助かった……」

ミズホも手袋を外す。

「まだ泊まるかは決めてない。まず天候待ち」

シオナは外を見た。

駐車場の向こうは白い。

さっき走ってきた国道7号線も、ほとんど見えない。

「夕方まで待って、止まなければここで泊まる」

「うん」

三人は施設内を確認した。

受付には誰もいない。

だが、完全に放棄された感じではなく、避難用に使えるよう最低限整えられている。布団の入った押し入れ。畳の休憩室。使えそうな食堂の一角。水は出るが弱い。電気は場所によってついたり消えたりする。

浴場はある。

湯がすぐ使えるかどうかは分からないが、温泉施設というだけでサヤの表情が少し明るくなった。

「今日も湯の気配」

ミズホが釘を刺す。

「まず天候確認と90式の状態」

「分かってる」

「昨日も聞いた気がする」

「今日はちゃんと分かってる」

シオナは窓から外を見ながら言った。

「90式を一度見に戻る。雪が積もりすぎる前にハッチ周りだけ確認しておきたい」

ミズホはすぐ立ち上がった。

「三人で行こう。短時間で」

サヤも頷いた。

「行って戻る。雪合戦はしない」

「誰も言ってない」

外へ戻ると、雪はさらに強くなっていた。

90式の上には、すでに白い層ができ始めている。

三人は手早くハッチ周り、砲口カバー、外部ラック、濡れ物箱の蓋だけを確認した。全部をきれいにするのではない。必要な場所が凍りつかないよう見るだけ。

シオナは教本で読んだ言葉を思い出しながら作業した。

全部やろうとしない。

今必要なところを優先する。

十分も経たないうちに、ミズホが言った。

「戻る。これ以上は冷える」

シオナは頷いた。

「戻ろう」

三人はまた施設へ逃げ込んだ。

サヤはロビーに入るなり、白くなった袖を払った。

「また雪だるま寸前」

ミズホは濡れた手袋を分ける。

「濡れ物袋」

「はい」

シオナは窓の外を見た。

夕方までに止むだろうか。

そう思ったが、空は暗かった。

午後は、ほとんど待つ時間になった。

三人は客室に入り、荷物を広げすぎないようにまとめた。

すぐに動ける形は保つ。だが、今日泊まる可能性も考えて、寝具と食料は取り出しやすくする。

ミズホは道の駅で見つけた記録と、これまでの経路を照合していた。

「にかほ、道の駅象潟、にしめ。本荘方面までは、細いけど人の手が入ってるみたい」

サヤは畳の上で足を伸ばしながら言った。

「でも天気が全部止める」

「そう。人がいても、道があっても、雪が来たら止まる」

シオナは整備教本をまた開いていた。

「昨日読んでおいてよかった。雪の日の車体確認、少し分かるようになってきた」

サヤが覗き込む。

「また文字だらけ」

「今日は少し読みやすい」

「慣れてきた?」

「必要だから」

その言葉は短かったが、サヤもミズホも何も言わなかった。

夕方になっても、雪は止まなかった。

むしろ、空はさらに暗くなり、風が強くなっている。

道の駅の駐車場も、国道も、白く見えなくなっていた。

ミズホは時計を見た。

「今日はここまでだね」

シオナは窓の外を見て、ゆっくりうなずいた。

「うん。泊まろう」

サヤは軽く息を吐いた。

「また進むために止まる、だね」

「そう」

シオナは答えた。

「進むために止まる」

三人は施設内の使える客室を一つ選び、正式にそこをその夜の宿にした。

布団を出し、濡れたものを分け、外へ出る装備と室内で休む装備を分ける。

夕食は持参した食料と、道の駅に残っていた保存の効く食料を少しだけ使った。使った分は、受付にメモを残す。

雪のため一泊します。

食料を一部使用しました。

90式で北上中。神町、舟形、庄内、にかほ方面の生存確認あり。

サヤはメモを見て言った。

「このメモ、誰かが読むかな」

ミズホは答えた。

「読むかもしれない。読まなくても、残しておく」

シオナは外を見た。

雪の向こうに90式がある。

白く埋もれかけても、そこにある。

明日の朝も、きっと除雪から始まる。

でも今日は、もう進まない。

にしめ湯っ娘ランドの客室で、三人は夕食を取り、濡れた装備を広げて乾かし、布団を敷いた。

外では、また日本海側の雪が吹き荒れていた。

サヤが布団の上に座り、ぽつりと言った。

「温泉施設を渡り歩いてるみたいになってきたね」

ミズホが答える。

「実際、温泉施設は避難先として強いんだと思う」

「湯がある。畳がある。屋根がある」

「あと、無理しない理由ができる」

シオナは小さく笑った。

「それ、大事だね」

動けるかもしれない。

でも、動かない。

その判断をするために、屋根と畳と湯の気配は、十分すぎる理由だった。

三人はその夜、にしめ湯っ娘ランドで足止めを受け入れた。

明日、雪が止めばまた北へ。

止まなければ、また待つ。

旅は進むだけではない。

待つことも、もう旅の一部になっていた。

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財団法人はるな会

人とAIによる共著作品発表のため団体という形のペンネームにしました。複数の世界を、ゆっくり旅する物語を書いていきます。ChatGPTことチャティを相棒としてストーリーの概要や場面についてを対話する形で...

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