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八郎潟の内側を抜けて

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/5/28 📚 シリーズ: 終末世界90式の旅 📝 4,531文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

文明崩壊後の世界を90式戦車に乗って見に行こう

本文

翌朝も、秋田の空は崩れなかった。

雪は残っている。

けれど降ってはいない。風も弱く、雲の切れ間から薄い光が差していた。

秋田駐屯地の整備区画では、出発前の90式が静かに待っていた。前日までの雪は落とされている。外部ラック、濡れ物箱、砲口カバー、ハッチ周り。秋田の整備隊員たちが、神町で施された冬道仕様を確認し、必要な締め直しと簡単な点検をしてくれていた。

そして燃料も入った。

シオナは給油作業を見守りながら、整備隊員の言葉を思い出していた。

号種だけで信じない。

濁りを見る。

匂いを見る。

水の分離を見る。

底まで欲張らない。

今回は駐屯地の管理燃料だった。状態は良く、補給後の記録も残された。

「満タンです」

整備隊員が言った。

「ありがとうございます」

シオナは深く頭を下げた。

「北へ行くなら、燃料は余裕があるうちに入れてください。能代までは行けるでしょうが、その先は分かりません」

ミズホはノートに補給量と燃料状態を書き込んだ。

サヤは90式の車体を見上げて言った。

「満タンって聞くと、ちょっと強くなった気がするね」

「強くなったわけじゃない」

ミズホが返す。

「でも、安心は増えた」

シオナはうなずいた。

「安心は増えた。でも油断はしない」

秋田側でも、この日は男鹿方面への巡回予定があった。

男鹿半島にある秋田石油備蓄基地の状況を確認するため、駐屯地と行政、港湾、電力関係者の混成車両が出るという。シオナたちが北へ向かう経路と途中まで重なるため、道路状況を見ながら先行してくれることになった。

秋田側の隊員が地図を指した。

「こちらは男鹿方面へ向かいます。あなたたちは国道7号線を北上。男鹿半島IC付近までは、こちらの車両が先に道路状況を見ます。そこから先は八郎潟の内側を通る形になります」

ミズホが地図を見ながらうなずく。

「海沿いを直接行くより、風の影響は少なそうですね」

「ええ。昨日までのような海風は避けられます。ただし、橋や開けた場所、凍結には注意してください」

シオナは短く答えた。

「30km以上は出しません」

秋田側の隊員は少しだけ笑った。

「それでいいです。むしろ、それを守れる人の方が信用できます」

出発前、食堂で簡単な朝食をとった。

米飯、味噌汁、漬物、少しの煮物。昨夜より静かな食卓だったが、三人には十分だった。

サヤは茶碗を置いて言った。

「秋田のご飯、覚えておく」

市職員の女性が笑った。

「次に来る時は、もう少し落ち着いているといいですね」

「その時は、普通におかわりしたいです」

ミズホが横から言う。

「今もしてたでしょ」

「今のは必要補給」

「便利な言葉」

シオナはそのやり取りを聞きながら、少しだけ笑った。

そして三人は、秋田駐屯地を出発した。

90式は駐屯地をゆっくり離れた。

秋田側の先行車両は、一定の距離を保って前を進む。無理に連なりすぎない。互いに止まれる距離を置く。途中、路面状況や放置車両の位置を無線で伝えてくれる。

シオナは慎重に操縦した。

国道へ戻り、北へ向かう。

昨日までの日本海側の吹雪とは違い、この日の道は落ち着いていた。雪は路肩に残っているが、視界はある。車道の中央はところどころ黒く見え、凍っていそうな場所では速度をさらに落とした。

サヤは車長ハッチ側で外を確認していた。

「前方、道は見えてる。路肩に雪。右側、放置車両一台、でも通れる」

ミズホは地図と秋田側からもらったメモを照らし合わせる。

「このまま北上。男鹿半島ICまでは秋田側の巡回と同じ方向」

秋田駐屯地の隊員から無線が入った。

「この先、右側に車が寄っています。大型ではありません。速度を落とせば通れます」

ミズホが返す。

「ありがとうございます。こちらも確認しました」

シオナは速度を落とした。

「通過する」

90式は雪の残る道を重く進んだ。

秋田市の中心部へ深入りすることなく、北へ抜ける。昨日の判断は正しかった。都市の中に入れば、まだいくつもの確認すべきものがある。けれど、それは秋田の人たちと駐屯地側が進める仕事だ。

三人の役割は、北へ線を伸ばすことだった。

男鹿半島IC付近まで来ると、秋田側の先行車両が一度停車した。ここから先、彼らは男鹿方面へ向かう。

四輪駆動車から降りた隊員が、シオナたちの90式のそばへ来た。

「ここまでは問題なし。能代方面へは、この先しばらく道は比較的開けています。ただ、八郎潟の内側は風が弱い分、雪が吹き溜まっている場所もあるかもしれません」

シオナはうなずいた。

「注意して進みます」

「能代市内に入ったら、まず大型店やホテルのある場所を探すのがいいでしょう。市役所や中心部に入るより、国道沿いの施設の方が退避しやすい」

ミズホが記録する。

「大型店、ホテルを優先」

サヤが隊員に言った。

「そちらも男鹿、気をつけてください」

隊員は軽くうなずいた。

「ええ。石油備蓄基地がどうなっているかで、秋田側の今後もかなり変わります」

シオナはその言葉を重く受け止めた。

燃料。

それはもう、単なる補給品ではなかった。人が動き、電気を守り、暖を取り、道路を開くための血液だった。

秋田側の車両は男鹿方面へ向かっていった。

三人の90式は、能代へ向けて北上を続けた。

八郎潟の内側を通る道は、海沿いとは違っていた。

風が弱い。

視界が急に白く消えるような感じは少ない。

空は暗めだが、雪は降っていない。

広い田畑、雪をかぶった平地、遠くの低い建物。

日本海の荒れた空気から少し離れたことで、三人の緊張もわずかに緩んだ。

サヤが外を見ながら言った。

「昨日までと全然違う。風がないだけで、こんなに楽なんだ」

ミズホが答える。

「海風を避けられるルートって大事なんだね」

シオナは前を見たまま言った。

「でも、楽だと思った時ほど慎重に行く」

「はい、シオナ教官」

「教官じゃない」

サヤは少し笑った。

シオナの運転は変わらなかった。

直線でも30km/hを超えない。橋や交差点ではさらに落とす。道が開けていても、雪の下に何があるか分からないからだ。

途中、何度か停車して確認した。

履帯周り。

外部ラック。

濡れ物箱。

燃料漏れ。

異音。

ハッチ周り。

教本を読んでから、シオナの点検は少しだけ変わった。以前は「大丈夫そうか」を見ていた。今は「どこが大丈夫なら進めるか」を見ている。

ミズホはそれを見て言った。

「点検、手順が決まってきたね」

「まだ見落としはあると思う」

「でも、前よりずっといい」

サヤも濡れ物箱の蓋を確認しながら言った。

「私もラックの緩みなら前より分かる」

ミズホがうなずく。

「私は燃料と記録。三人で分担できてきた」

シオナは短く笑った。

「三人で一両分」

それはもう冗談ではなくなっていた。

昼を過ぎる頃に、能代市へ近づいた。

建物が増え、道路沿いに大型店舗の看板が見え始める。

雪に埋もれた駐車場。

閉まったスーパー。

ドラッグストア。

ホテル。

飲食店。

ロードサイドの広い敷地。

ミズホが地図を見て言った。

「ここ、補給と宿泊に良さそう。大型スーパー、ドラッグストア、ホテルが近い」

サヤは外を確認した。

「駐車場も広い。放置車両はあるけど、90式を停める余裕はある。人影は見えない」

シオナは速度を落とし、広い駐車場の端へ90式を入れた。

「今日はここを確認しよう」

午前中のうちに秋田から能代まで来られた。

だが、さらに先へ進むには情報が足りない。

三人は車両を停め、周囲を確認した。

まずホテル。

建物は無事。窓も大きく壊れていない。電気は不安定だが、一部の照明は点く。水も細く出る。宿泊はできそうだった。

次にドラッグストア。

店内は荒れている場所もあったが、奥の棚にはまだ使えるものが残っていた。

包帯。

消毒液。

使い捨てカイロ。

マスク。

衛生用品。

乾電池。

少量の栄養補助食品。

ミズホは慎重に状態を見ながら、必要分だけを選んだ。

「全部は持たない。必要なものだけ」

サヤはカイロを見つけて目を輝かせた。

「これは宝」

「本当に宝」

シオナも同意した。

大型スーパーでは、保存性のあるものを探した。

米や生鮮品は状態の悪いものも多い。だが缶詰、乾麺、調味料、未開封の飲料、袋入りの食品は一部使えた。

サヤは棚を見ながら言った。

「こういう場所、昔ならただの買い物だったのにね」

ミズホは賞味期限と包装状態を確認しながら答えた。

「今は調査と補給」

シオナはカートに載せる量を見て言った。

「積みすぎない。外部ラックの重量も見て」

「分かってる」

サヤは少しだけ名残惜しそうに棚を見た。

「でも、このチョコは士気袋行きでしょ」

ミズホは包装を確認した。

「未開封、状態よし。少量なら」

「やった」

「少量」

「分かってる」

補給の後、三人はホテルへ入った。

低い階の部屋を選び、90式が見える側を確保する。

荷物を広げすぎず、すぐ動けるようにまとめる。濡れたもの、乾いたもの、医療品、食料、記録袋、士気袋。手順はもう決まっていた。

夕方、三人は部屋のテーブルに地図を広げた。

能代から先。

ここで、大きな分かれ道になる。

サヤが地図を指した。

「米代川を渡って、このまま沿岸に出る道?」

ミズホがうなずく。

「能代から北へ、沿岸側を進めば日本海側をたどって青森方面へ近づける。ただ、海沿いは天候が変わりやすい。にかほで痛いほど分かった」

シオナは別の線を見た。

「大館へ出て、そこから弘前方面へ向かうルートもある」

「内陸寄り?」

「うん。海風は避けやすいかもしれない。ただし山や峠、積雪、道路状況が問題になる」

サヤは腕を組んだ。

「海沿いは吹雪が怖い。内陸は山が怖い。どっちも怖い」

ミズホは冷静に言った。

「どっちも正しい」

シオナは地図から目を離さなかった。

「沿岸に行けば、港や海沿いの共同体に会えるかもしれない。能代港や八森、深浦方面。ただ、天気が荒れたら止まる場所を探し続けることになる」

ミズホが続ける。

「大館へ向かえば、内陸の市街地とつながる可能性がある。弘前方面へ出られれば、青森内陸との接点になる。でも山越えがある」

サヤは少し黙ってから言った。

「大湊に向かうなら、最終的には青森のどこかへ出ないといけないんだよね」

「うん」

シオナは答えた。

「大湊に向かうなら、弘前から北へ抜けて青森市側に出るか、日本海沿岸を回るか。どっちかを決める必要がある」

ミズホはノートを開いた。

「明日はまず、能代で情報を探そう。市役所や港方面にすぐ入るかは別として、道の駅や公共施設、道路の掲示、誰かの記録が残っているかもしれない」

シオナはうなずいた。

「今日決め切らない。秋田でもそうした。ここでも、能代の情報を見てから」

サヤはベッドに腰かけ、少しだけ笑った。

「前なら、行けそうな方へ行ってたかもね」

「今は行けそうだけじゃ行かない」

シオナは地図を見たまま言った。

「行ったあとに止まれるか。戻れるか。誰かにつながるか。それを見て決める」

ミズホは小さくうなずいた。

「それがいい」

外は静かだった。

にかほの吹雪とは違う。

西目の足止めとも違う。

能代の夜は、雪の気配を残しながらも、どこか広く静かだった。

ホテルの部屋で、三人は地図を囲んだ。

米代川を渡って沿岸へ出るか。

大館へ向かい、弘前を目指すか。

北へ行く道は一本ではない。

けれど、どの道を選んでも、もう勢いだけでは進まない。

三人と90式は、止まることも、待つことも、聞くことも覚えていた。

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人とAIによる共著作品発表のため団体という形のペンネームにしました。複数の世界を、ゆっくり旅する物語を書いていきます。ChatGPTことチャティを相棒としてストーリーの概要や場面についてを対話する形で...

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