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毛布の中の作戦会議

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/5/29 📚 シリーズ: 終末世界90式の旅 📝 2,932文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

文明崩壊後の世界を90式戦車に乗って見に行こう

本文

シオナは、毛布に包まれたまま畳の上に座っていた。

大浴場から戻ってきた直後は、まだ少し頬に赤みが残っていた。温泉の湯が体の奥まで入って、雪で冷えた指先もようやく戻ってきている。

それでもミズホは油断しなかった。

「もう少しそのまま」

「もう温まったよ」

「だめ。さっき外で雪まみれになってた人の発言は信用しない」

サヤが押し入れからもう一枚毛布を出しながら笑った。

「信用失ってるねえ、シオナ」

「ちょっと払っただけだったんだけど」

「ちょっとであれだけ白くなれるの才能だよ」

シオナは言い返そうとしたが、湯上がりの体に毛布の重みが心地よすぎて、言葉が途中で消えた。

畳の上には、布団が一組だけ先に敷かれている。

ミズホがそれを指さした。

「横になって」

「まだ昼過ぎだよ」

「昼過ぎでも横になる。明日は峠越え」

その言葉に、シオナは少しだけ黙った。

矢立峠。

碇ヶ関。

大鰐。

その先の弘前。

地図の線は頭に残っている。

けれど今は、湯気の余韻と暖房の効いた和室の空気が、思考をゆっくりほどいていった。

シオナは素直に布団へ入った。

サヤが毛布を肩までかける。

「はい、シオナ包み完成」

「だから包まなくていいって」

「完成したからもう遅い」

ミズホは毛布の端を整えながら言った。

「寒気がしたらすぐ言って。あと、もう今日は雪に触れない」

「触れない」

「雪の温冷浴も」

「しない」

「約束」

「約束」

シオナは目を閉じずに答えたつもりだった。

だが、次の瞬間には、まぶたが重くなっていた。

畳の匂い。

暖房の低い音。

外の雪が窓に当たるかすかな気配。

サヤとミズホが小声で何かを話している声。

その全部が、遠くなっていく。

サヤが覗き込んだ。

「寝た?」

ミズホはシオナの顔を見て、少しだけ声を落とした。

「寝たね」

「早っ」

「冷えたあとに温泉入って、暖房の部屋で毛布に包まれたらこうなるよ」

サヤは笑いをこらえながら、座卓へ戻った。

「じゃあ、起こさない方がいいね」

「うん。夕飯まで寝かせよう」

ミズホはランタンの位置を少しずらし、座卓の上に地図を広げた。

矢立ハイツの和室は、昼間なのに夕方のように静かだった。

窓の外では雪が降り続いている。けれど部屋の中は暖かい。

シオナは毛布に包まれたまま、深く眠っていた。

サヤはその寝顔をちらっと見た。

「シオナって、寝てると普通に女の子だね」

ミズホが地図から顔を上げずに言う。

「起きてても普通に女の子だけど」

「いや、そうなんだけどさ。普段が90式の操縦席にいすぎるから」

「戦車成分が強い」

「そうそう」

ミズホは少しだけ笑って、地図の上に指を置いた。

「で、その戦車成分の人が寝てる間に、明日の道を考える」

サヤは座卓に肘をつき、地図を覗き込んだ。

「明日は矢立峠を越えて碇ヶ関。そこから大鰐だよね」

「そこまでは、巡回班の人たちも細くつながってるって言ってた。問題はその先」

ミズホの指が、国道7号線をなぞる。

「大鰐からこのまま7号線沿いに進むと、弘前市街の方へ近づく」

サヤの表情が少し曇った。

「弘前は連絡取れてないんだよね」

「うん。終末前後にパニックがあって、警察と自衛隊も出た。そこで感染が広がったらしいって話だった」

「助けようとした人たちから、広がっちゃったんだ」

「そういうこともある」

ミズホの声は静かだった。

病院にいた頃のことが、少しだけ混じっている声だった。

サヤはそれに気づいたが、何も言わず地図へ視線を戻した。

「じゃあ、弘前市街は避けたいよね」

「避けたい」

ミズホは大鰐のあたりを指さした。

「ここに大鰐インターがある。ここから東北自動車道に入れば、弘前市街を避けるルートに見える」

サヤは少し身を乗り出した。

「高速に乗るってこと?」

「候補としては」

「高速って、普通なら走りやすいんじゃない?」

「普通ならね。でも今は違う」

ミズホは地図から顔を上げた。

「高速道路は、逃げ場が少ない。入口が塞がっていたら入れない。本線で事故車が詰まっていたら、90式でも簡単には避けられない。高架や橋の上で止まったら、周りに逃げる場所も少ない。除雪されている保証もない」

サヤは地図を見つめた。

「広い道なのに、逃げ場が少ないんだよね」

「そう。広いから安全とは限らない」

「普通の道なら、コンビニとか道の駅とか、集落とか、止まれる場所がある」

「うん。国道は危ない場所もあるけど、途中で人に会える可能性もある。高速は、そこが弱い」

サヤは唇を結んだ。

「じゃあ、7号線で弘前を外から見る?」

「それも危ない。弘前市街の外縁に近づくことになるから、放置車両や感染跡、避難所跡が多いかもしれない。市街に吸い込まれたら厄介」

二人は黙った。

座卓の上で、地図だけが妙に現実味を持っていた。

紙の上では、道はただの線だ。

けれどその線の上には、雪があり、車があり、橋があり、トンネルがあり、人のいた跡がある。

サヤは小さく言った。

「どっちも怖いね」

「うん」

「シオナならどう言うかな」

ミズホは寝ているシオナを見た。

毛布に包まれたシオナは、まったく起きる気配がない。

普段ならすぐに地図を覗き込んできそうなのに、今は呼吸がゆっくりしている。

「たぶん、ここでは決めないって言う」

サヤは少し笑った。

「言いそう」

ミズホは大鰐のところに指を置いた。

「明日はまず碇ヶ関。状況がよければ大鰐まで。そこで地元の人に聞く。高速が使えるか。国道7号線はどこまで安全か。弘前市街を避ける道があるか」

「大鰐で決める」

「うん。矢立で全部決めるには、情報が足りない」

サヤは大きく息を吐いた。

「昔なら、高速が早そうだから高速ってなってたかも」

「今は早い道より、止まれる道」

「シオナ語録だ」

「もう三人の語録でいいと思う」

サヤは地図の余白に指で小さく線を描くようにして言った。

「大鰐まで行って、聞いて、それから決める。弘前には勢いで入らない」

「そう」

「大湊って、まだ遠いね」

ミズホはうなずいた。

「でも、青森側に人がいることは分かった。碇ヶ関と大鰐まではつながってる。それは大きい」

「うん」

サヤはふと、眠っているシオナを見た。

「シオナ、起きたらまた地図見るかな」

「見ると思う」

「寝かせておいた方がいいのに」

「見ると思う」

「だよね」

二人は小さく笑った。

外の雪は、少し弱くなっていた。

昼過ぎの時間が、ゆっくり流れていく。

サヤは地図を畳まずに、座卓の上へ広げたままにした。

ミズホはノートに今日の結論を書いた。

明日、矢立峠を越える。

第一目標、碇ヶ関。

可能なら大鰐まで。

弘前市街へは即時進入しない。

大鰐で、高速道路と国道7号線の状況を確認してから判断。

書き終えると、ミズホはペンを置いた。

「これでいいと思う」

サヤはうなずいた。

「シオナが起きたら、これ見せよう」

「うん」

シオナは、まだ眠っていた。

毛布に包まれ、布団の中で小さく息をしている。

雪を払いに行った時の冷えも、温泉で温まった反動も、ここまでの疲れも、全部が眠りに変わっているようだった。

サヤはそっと声を落とした。

「起こさないでおこう」

ミズホもうなずく。

「夕飯まで」

窓の外では、矢立峠へ続く国道が白く霞んでいた。

明日、その道を越える。

でも今は、まだ昼過ぎ。

進む前に、眠れる人は眠る。

考えられる人が考える。

温まれる時に、温まる。

三人の旅は、そうやって少しずつ北へ近づいていた。

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人とAIによる共著作品発表のため団体という形のペンネームにしました。複数の世界を、ゆっくり旅する物語を書いていきます。ChatGPTことチャティを相棒としてストーリーの概要や場面についてを対話する形で...

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