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大鰐で決める道

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/5/29 📚 シリーズ: 終末世界90式の旅 📝 3,455文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

文明崩壊後の世界を90式戦車に乗って見に行こう

本文

シオナが目を覚ました時、部屋の中は夕方の色になっていた。

障子越しの光は薄く、窓の外ではまだ雪が舞っている。けれど昼過ぎに比べれば降り方は弱くなっていた。畳の上には暖房のぬくもりが残り、乾かしていた上着や手袋からは少しずつ湿気が抜けている。

シオナは毛布の中でまばたきをした。

「……今、何時」

座卓で地図を見ていたサヤが顔を上げた。

「おはよう、シオナ包み」

「まだ包まれてたんだ」

ミズホがノートを閉じる。

「夕飯前。よく寝てたよ」

シオナは少し起き上がろうとして、毛布に絡まった。

「ごめん。寝すぎた」

「寝すぎじゃない」

ミズホがすぐに言った。

「雪で冷えたあとだったし、明日は峠越え。寝られる時に寝るのは正しい」

サヤがうなずく。

「そうそう。こっちは地図見てたから大丈夫」

シオナは毛布を肩から外し、座卓に広げられた地図を見た。矢立峠、碇ヶ関、大鰐、弘前。線が引かれ、ミズホの小さな字でメモが書き込まれている。

「もうそこまで考えてくれてたんだ」

「だいたいね。でも最終決定は三人で」

サヤがそう言うと、シオナは軽くうなずいた。

「その前に、夕飯作らなきゃ」

「まだ寝起きだよ?」

「寝たから動ける」

ミズホが少しだけ目を細める。

「無理はしない」

「しない。座ってるだけだと、逆にぼんやりするから」

そう言って、シオナはゆっくり立ち上がった。足元はまだ少しふわつくが、体は温まっている。冷えは抜けていた。

三人は部屋の端にまとめていた食料を出した。

能代で補給した乾麺。

秋田駐屯地でもらった少量の味噌。

大館で見つけた缶詰。

道中で大事にしていた乾燥野菜。

シオナは小さな鍋を出し、カセットコンロで湯を沸かした。矢立ハイツの部屋は暖房が効いているが、それでも山の宿の夜は冷える。鍋から湯気が立つだけで、部屋の空気が少しやわらかくなった。

サヤは缶詰を開けながら言った。

「シオナの料理って、なんか戦車運転と似てるよね」

「どういう意味?」

「ゆっくり、確実、余計なことしない」

ミズホが乾燥野菜を戻しながら言う。

「褒めてるようにも聞こえる」

「褒めてるよ。たぶん」

シオナは少し笑って、鍋に乾麺を入れた。

「たぶんなんだ」

「だって、料理で30km以上出さないって言ってるみたいな感じだから」

「鍋で30km出したら事故だよ」

その返しに、サヤが吹き出した。

ミズホも小さく笑った。

こういう会話があるだけで、部屋の中は少し明るくなる。

外は雪。明日は県境。弘前は不明。青森市は厳しいかもしれない。大湊まではまだ遠い。

それでも今は、三人で夕飯を作っている。

鍋には味噌の香りが広がった。乾麺と野菜、缶詰の具を入れた簡単なものだったが、湯気と塩気と温かさがあれば十分だった。

食事は座卓を囲んで取った。

サヤは椀を両手で持ち、深く息を吐いた。

「あったまる」

ミズホもうなずく。

「昼の温泉、夕方の鍋。今日は体を戻す日だったね」

シオナは少し申し訳なさそうに言った。

「昼、寝ちゃったけど」

「寝るのも仕事」

ミズホが言った。

「特に明日みたいな日は」

食後、三人は改めて地図を広げた。

今度はシオナも座卓に加わった。

サヤとミズホが昼の間に考えていたことを説明する。

ミズホはまず矢立峠を指した。

「明日の第一目標は、道の駅いかりがせき。巡回班の話では、碇ヶ関には人が残っている。大館側とも細く交流がある」

シオナは頷く。

「まず峠を越えて、道の駅いかりがせき。そこで止まる」

サヤが続けた。

「その後、大鰐まではつながってるらしい。だから天気と道路がよければ、大鰐まで進んでいいと思う」

「大鰐で止まって、弘前のことを調べる」

シオナは地図上の大鰐に目を落とした。

「大鰐インターから東北自動車道に入れば、弘前市街を避ける道に見える。でも、高速は逃げ場が少ない」

ミズホがうなずく。

「そう。だから大鰐で役場を訪ねる。役場機能が残っているなら、弘前方面の情報を持っている可能性がある。道路、避難所、感染状況、高速の状態」

サヤは地図に肘をつかないよう気をつけながら言った。

「役場が駄目でも、温泉施設とか道の駅とか、残ってる人の連絡所があるかもしれない」

「うん」

ミズホはノートを開いた。

「大鰐で聞くことは、三つ」

そして紙に書いた。

弘前市街へ入らず北へ抜ける道があるか。

東北自動車道の大鰐弘前インター周辺と本線の状況。

弘前外縁、青森市方面、大湊方面への情報。

サヤがそれを見て言った。

「弘前そのものを見に行くんじゃなくて、弘前をどう避けるかを聞く感じだね」

シオナは少し考えた。

「避けるというより、入っていい場所かどうかを決めるために聞く。危ないなら避ける。人がいて案内があるなら外縁だけ見る」

ミズホは頷いた。

「勢いで市街には入らない。これは絶対」

サヤが小さく手を上げた。

「異議なし」

シオナも言った。

「異議なし」

少しだけ、三人は笑った。

だが地図の上の弘前市街は、やはり重かった。

終末前後に軽いパニック。

警察と自衛隊が出動。

その結果、感染が広がった可能性。

その後、碇ヶ関や大鰐から確実な連絡が取れていない。

それは、東京や水戸で見たものと同じ匂いがした。人が集まり、助けようとした場所ほど危なくなる。悪意ではない。混乱と善意と恐怖が、同じ場所に集まってしまう。

シオナは静かに言った。

「弘前に人が残っているなら、助けたい。でも、私たちだけで中に入っても、何もできないかもしれない」

サヤはうつむき気味に頷いた。

「助けに行って、こっちが動けなくなったら終わりだもんね」

ミズホは地図を見たまま答える。

「そう。私たちは医療班でも救助隊でもない。90式で道をつなぐことはできるけど、街全体をどうにかすることはできない」

シオナはその言葉を受け止めた。

以前なら、少し胸が痛んだかもしれない。

今も痛まないわけではない。

けれど、旅を続けるうちに分かってきた。

行ける場所に全部行くことはできない。

見えるもの全部を助けることもできない。

だからこそ、次につなげる道を選ばないといけない。

「明日は、まず碇ヶ関」

シオナはそう言った。

「道の駅いかりがせきで状況確認。青森側の人と会えたら、情報交換。天気と道路がよければ大鰐まで。そこで役場か、役場機能を移した場所を探す」

ミズホがノートに書き込む。

「大鰐で弘前方面の情報を得てから、国道7号線か東北自動車道かを判断」

サヤが付け加えた。

「あと、無理なら大鰐で泊まる」

シオナは頷いた。

「うん。大鰐まで行けても、その先に無理して進まない」

ミズホが顔を上げる。

「明日の条件。風が強ければ峠越えしない。視界が悪ければ待つ。碇ヶ関で天気が崩れたらそこまで。大鰐へ進むのは、昼前後までに判断」

サヤは指折り数える。

「雪、風、視界、時間、道路、人の情報」

「あと90式の状態」

シオナが言った。

「朝に除雪と点検。峠を越えたらまた確認。ブレーキ、履帯、ハッチ周り、外部ラック、濡れ物箱」

サヤが笑った。

「濡れ物箱、もう完全に旅の仲間だね」

「役に立ってる」

ミズホが真面目に言った。

「濡れた手袋や長靴を車内に入れなくて済むのは大きい」

シオナは部屋の端で乾いている手袋と長靴を見た。

「神町で付けてもらってよかった」

神町。

秋田。

能代。

大館。

矢立。

ここまで、いろいろな場所で少しずつ90式は旅の車両になっていった。戦うためではなく、走るため。つなぐため。止まるため。

サヤは最後に、地図の大湊の方を見た。

「まだ遠いなあ」

ミズホが言う。

「でも、昨日より近い」

シオナも地図を見た。

「明日、県境を越える。そこから先は青森」

外の雪は、少し弱まっていた。

矢立ハイツの和室には、食後の湯気の余韻と、乾きかけの服の匂いと、地図の紙の匂いが混ざっている。

旅館の部屋というより、三人だけの小さな司令部のようだった。

サヤが地図を丁寧に畳みながら言った。

「じゃあ決まり。明日は道の駅いかりがせき」

ミズホが続ける。

「その後、大鰐で役場を訪ねる」

シオナは布団の方を見た。

「そして今日は、もう雪に触らない」

サヤがすかさず言った。

「お、えらい」

ミズホも頷く。

「その約束は守って」

「守る」

シオナは少し笑った。

昼に眠ったせいで、夜すぐ眠れるかは分からない。

けれど体はもう冷えていない。腹も満ちている。明日の道も、少しだけ形になった。

三人はそれぞれ寝支度を始めた。

外では県境の雪が、夜の中へ静かに降っている。

その向こうには碇ヶ関がある。大鰐がある。そして、まだ連絡の取れない弘前がある。

明日、三人は青森へ入る。

ただし、勢いではなく、聞きながら。

止まりながら。

選びながら。

いつものように、30km/h以下で。

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人とAIによる共著作品発表のため団体という形のペンネームにしました。複数の世界を、ゆっくり旅する物語を書いていきます。ChatGPTことチャティを相棒としてストーリーの概要や場面についてを対話する形で...

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