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市民病院の薬

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/5/30 📚 シリーズ: 終末世界90式の旅 📝 3,100文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

文明崩壊後の世界を90式戦車に乗って見に行こう

本文

青森市民病院へ近づくにつれて、三人の会話は減っていった。

道路は通れる。

だが、人の気配は薄い。

青森市中心部の完全な奥ではない。けれど、ここも市街の一部だった。雪をかぶった道路脇には、放置された乗用車がいくつか残っている。店のシャッターは下り、信号は消え、風で飛ばされた紙が歩道の隅に凍りついていた。

サヤはハッチから短く外を確認し、すぐに閉じた。

「前方、病院の案内。放置車両はあるけど、通れる」

ミズホはマスク越しに答えた。

「病院の正面玄関には寄りすぎないで。救急搬入口か薬剤関係の動線を見たい」

シオナはうなずいた。

「分かった。広い場所に停める」

青森市民病院の周辺には、終末初期の混乱の名残が残っていた。

救急車両が斜めに停まっている。

入口付近には、古い誘導表示と、倒れたカラーコーン。

人が殺到したような痕跡はあるが、弘前のように焼け落ちた街ではなかった。

ただ、静かだった。

静かすぎた。

シオナは病院の建物から少し離れた位置に90式を停めた。すぐに出られる向きにし、周囲を確認する。

ミズホは三人の装備をもう一度見た。

「マスク、隙間確認。ゴーグル。手袋。袖口のテープ。長靴まわり。中では顔を触らない。声は小さくしすぎない。何かあったらすぐ戻る」

サヤは深く息を吸った。

「了解」

シオナも短く答えた。

「ミズホの指示で動く」

病院内へ入る時、ミズホが先頭に立った。

かつての職場ではない。

けれど、病院の空気は病院の空気だった。

受付は無人。

電気はない。

案内板だけが残っている。

床には、終末初期に人が動いた跡があった。紙、手袋、倒れた椅子、置き去りの車椅子。だが、三人が想像していたほどの惨状ではなかった。

ミズホは足を止めずに言った。

「病棟には行かない。救急外来も深く入らない。薬剤部と保管庫を探す」

サヤは声を落とした。

「本当に人、いないね」

「いると思って動く」

ミズホは即座に返した。

「見えていないだけかもしれない」

三人は案内表示を頼りに、薬剤部周辺へ向かった。

途中、閉まった扉がいくつもあった。

一部は施錠されている。

一部は開いている。

ミズホは無理にこじ開けず、開いている範囲だけを確認していった。

薬剤部の一角は、荒らされてはいたが、完全には空ではなかった。

棚には残された箱がある。

点滴関連の資材。

消毒薬。

ガーゼ。

包帯。

手袋。

一部の一般薬。

そして、用途が分かる範囲の薬剤。

ミズホは一つずつ見ていった。

「分からないものは持たない。保管条件が怪しいものも避ける。冷蔵が必要な薬は基本的に駄目」

サヤはオリコンを持っていた。

「これは?」

「消毒用。入れて」

「これは?」

「解熱鎮痛。期限を見る。濡れてなければ入れて」

シオナは重い箱を運びながら、周囲を見ていた。

「ミズホ、これ点滴の袋?」

ミズホは近づいて確認した。

「輸液。状態を見る。破損なし、濁りなし……使える可能性はあるけど、船側で扱える人がいるか分からない。数を絞る」

彼女の判断は速かったが、雑ではなかった。

持っていけるから持つのではない。

使えるものを、使える人へ渡す。

それが基準だった。

三人は薬剤部周辺で、とりあえず必要な医薬品と衛生資材を確保した。

消毒薬。

手袋。

マスク。

ガーゼ。

包帯。

解熱鎮痛薬。

咳や喉に使える薬。

経口補水に使えるもの。

体温計。

一部の常備薬。

そして、船側へ渡す際に分類できるよう、紙とペン、ラベル類も持った。

病院を出る前、ミズホは足を止めた。

「ここで終わりにする」

サヤが聞く。

「もっと探さなくていい?」

「深く入るほど危ない。今の分で、とりあえずの支援はできる」

シオナはうなずいた。

「戻ろう」

三人は来た道を戻った。

病院の外へ出た瞬間、サヤは大きく息を吐きそうになり、ミズホに止められた。

「まだマスク外さない。90式の外で脱ぐ手順を守る」

「はい」

建物から離れた場所で、ミズホは簡易的に汚染側と清潔側を分けた。

外側の手袋を外す。

レインウェア表面を消毒できる範囲で拭く。

オリコンの外側も拭く。

薬品箱は種類ごとに分け、車内へ入れるものと外部ラックへ固定するものを分ける。

サヤは緊張が解けたように肩を落とした。

「病院、怖かった」

ミズホは頷いた。

「うん。私も」

「ミズホでも?」

「病院だから怖いんだよ」

その言葉に、サヤは何も返さなかった。

病院で確保できたものを積み込んだあと、三人は周辺の調剤薬局とドラッグストアも確認した。

病院近くの薬局は一部が施錠されていたが、入れる店舗もあった。

そこでは、病院よりも整理された形で薬が残っていた。

調剤棚の薬は、ミズホが分かるものだけを選んだ。

無闇に処方薬を持ち出さない。船側に医療担当者がいるか確認してから使うべきものは、別に分ける。

一方で、一般向けの棚からは追加で市販薬を確保できた。

解熱剤。

咳止め。

のど飴。

トローチ。

胃腸薬。

整腸剤。

湿布。

消毒液。

マスク。

簡易検査キットらしいものも少数見つかったが、保存状態が不明なものは慎重に扱うことにした。

ミズホは薬局のカウンターで、分類ラベルを書いた。

船内すぐ使用可。

医療担当者確認後。

高齢者・基礎疾患注意。

子ども用。

消毒・衛生資材。

補水・栄養補助。

サヤはそれを見て言った。

「ただ渡すより、ずっといいね」

ミズホは答えた。

「船内が混乱しているなら、分けておかないと危ない。薬は助けにもなるけど、間違えると危険だから」

シオナはオリコンを90式へ運びながら言った。

「これで、フェリーに持っていける?」

ミズホは積み上がったコンテナを見た。

「とりあえずの医薬品としては十分。重症者を治療する装備じゃないけど、風邪やインフルエンザ様症状への初期対応、感染拡大防止、船内の衛生維持には役に立つ」

サヤがほっとしたように言った。

「よかった」

「まだ届けてない」

ミズホはそう言ったが、声は少し柔らかかった。

シオナは90式の無線を入れた。

「こちら、青森市民病院周辺。病院および周辺薬局で医薬品と衛生資材を確保。これより分類後、青森港国際クルーズターミナルのフェリーへ搬送予定。青森駐屯地、受信できますか」

少しの雑音のあと、青森駐屯地から応答があった。

『受信しました。無事で何よりです。中心部へ入りすぎないよう注意してください。港方面の経路について、こちらから分かる範囲を送ります』

続いてフェリー側へも連絡を入れる。

「こちら、医薬品を確保しました。現在、解熱薬、咳止め、消毒薬、マスク、手袋、補水用品、衛生資材を分類中です。受け渡し方法を確認したいです。船内から多数が降りることは避けてください」

フェリー側の声は、先ほどより少しだけ明るかった。

『ありがとうございます……受け渡し場所をターミナル側に設定します。船側からは最小人数で対応します』

ミズホは無線に口を近づけた。

「発熱者は出さないでください。受け渡し担当者もマスクと手袋を。可能なら、発熱していない人でお願いします。受け取った後、こちらから分類表を読み上げます」

『了解しました』

通信が終わると、三人はしばらく黙った。

病院と薬局で、必要なものは確保できた。

だが、まだ終わっていない。

次は港。

青森市街の縁を通り、国際クルーズターミナルへ。

自主隔離を続けるフェリーへ、薬を届ける。

シオナは操縦席へ向かいながら言った。

「行こう。届けて、青森駐屯地へ報告する」

サヤはオリコンの固定をもう一度確認した。

「薬、固定よし」

ミズホは分類表とペンを胸元の袋に入れた。

「船には入らない。渡して、説明して、離れる」

「うん」

90式はゆっくり動き出した。

病院の静けさから離れ、港へ向かう。

車内には、薬と消毒液の匂いがわずかに漂っていた。

それは、終末の旅の中では珍しく、誰かを助けるための匂いだった。

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財団法人はるな会

人とAIによる共著作品発表のため団体という形のペンネームにしました。複数の世界を、ゆっくり旅する物語を書いていきます。ChatGPTことチャティを相棒としてストーリーの概要や場面についてを対話する形で...

👥 フォロワー: 6人

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